太陽はいま(未来山脈2025年10月号より抜粋)
- 2025年10月1日
- 会員の作品
下諏訪 笠原真由美
- 心地よき水の温度に染付の器十客すすげば至福
- 白いスニーカーで歩くモール キャンディのような夏菊の束を買う
米子 角田次代
- 朝からうきうき今日は友の家で四人のお茶会 お久しぶり
- お手本のような友のおもてなしはいつもながらに学びの時
藤井寺 近山紘
- 激しい雨溢れる水滝の様に流れる大川の橋桁の危うさ
- 東の空の雲が切れて真っ青な空が顔を出す初めての蝉の声届く
岡谷 三枝弓子
- 辞書でというとスマホが早いと云う人時代にとり残されている
- 亡夫が遺した物は消えて百合も絶えたことし私が咲かせる
京都 岸本和子
- 夏至の日の「天声人語」高校語資料集大人の間で異例の売れ行きと
- 高校で芳しくなければ視点を変える知恵と勇気が必要だったのだ
岡谷 片倉嘉子
- 一本のねじ花の茎が伸びてもうすぐ咲くのを心待ちにする
- 五センチの茎が三倍も伸びピンクの小花をらせん状につける
岡谷 横内静子
- 朝日を浴びてクオーキング 電柱の上が定位置の鳶に今日も“おはよう”
- 気持ちよりずっと歳をとっている身体に 次々とメスが入って
岡谷 三澤隆子
- 合宿の力士の朝稽古を見る湖畔 光る汗に満面もキラキラ
- 互いにゆずらぬ力士のぶつかりあい 紅さした姫りんご傍らに
下諏訪 長田惠子
- キムチにマヨネーズは邪道ですか おいしいから許してください
- 誇るものがない人は口を閉ざし静かに生きよとあなたは思っている
大阪 花菜菜菜
- 息吸うための理由は きょう今を生きるため 雨よ降って来い
- 小一時間歩く+ラジオ体操 朝のルーティンおはようから
平塚 今井和裕
- 丘白く見上げたものよ下界から今度は逆に眼を下し眠る
- この街に情けをかけて叙情なり街を助けて風呂敷広げ
諏訪 宮坂夏枝
- 娘一家とUSJ万博行きの強行軍ただただ後についていこう
- 小学生ふたり園児ふたりの孫 万博には大人四人の手が要るね
愛知 川瀬すみ子
- イチローのスピーチを中卒と言うならトランプの中卒英語は何ぞや
- キトラ古墳ツアーに出かけた朝に咲いた君 キトラのバラと名付け
諏訪 河西巳恵子
- 南側窓に古びた大きな製材所 モネのサン・ラザール駅に似る
- 郭公 杜鵑の声とうに聞かない 川畑も山際も家 家 家
坂城 宮原志津子
- 傷口ふさがらず外来受診続く夫退院してから三ヶ月もの日々
- シャワーで傷口洗い手当する私 夫から「ありがとう」のシャワー浴びる
横浜 上平正一
- 朝大ゲンカしなが知らぬふりしてパンを齧っている おかしな夫婦
- コンクリートの坂道の角にいちりん咲いているど根性すみれ
伊那 金丸恵美子
- 子供達が一斉に下校 元気な声が一際響き渡る 今日は一学期終業式
- 子供の心にふる里をと始めた読み聞かせ活動 未来を信じて続ける
大阪 山崎輝男
- 歴代最高四十一・八度を記録 酷暑日続出日本は熱帯化
- 四十度超えのスペイン 酷暑による死者千三百地球沸騰
神奈川 別府直之
- 朝霧高原を埋め尽くすボーイスカウトのテント自然と向き合う
- 薪を拾い火を熾すボーイのお兄ちゃんたちがたまらなくたくましい
下諏訪 藤森あゆ美
- 近づくほど涙あふれる 泣き腫らした目のまま家には帰れず
- 初めて家を通過する あふれ出る涙を止めるまでの時間
静岡 鈴木那智
- 厚みあるそら豆の大きな莢が天に向かって育つ直立をし
- 大粒の強い甘味のそら豆だが青臭さが苦手な人も
埼玉 須藤ゆかり
- 愛していれば 性善説のきらめきはガラスのこころに乱反射する
- 煮え切らないわたしはせんを飼っているセミロング セミダブル うつせみ
岡谷 花岡カヲル
- 築五十五年私の部屋 蛍光灯ピカピカLEDライトに変わる
- 電気屋さん八畳間だが天井が高いから十二要間用のLEDだと言う
下諏訪 中西まさこ
- 群青の海峡の底に沈めたいYへの恋慕とTへの憎悪
- 波しぶき上げ揺れる船の甲板の手摺りにもたれ血の色の酒
北海道 吉田匡希
- 歯並びの正しさだけが真実で皮膚果てしなく偽証のすべて
- たましい と言葉にするとき唇と唇触れるのはただ一度