素足(未来山脈2025年11月号より抜粋)
- 2025年11月1日
- 会員の作品
一関 貝沼正子
- 日本の地下のマグマも吹き出すか猛暑日予報の赤い天気図
- アスファルトの熱気に負けずオニノゲシ猛暑の歩道へギザギザ伸ばす
箕輪 市川光男
- 太陽さんやっとお目覚めかい私はもう草刈りを終えたよと手を合わす
- 七月の太陽は朝からギラギラ畑の仕事は草々に終えてさあビールだ
岡谷 花岡カヲル
- 背高のっぽの赤いバラ湖風にふかれて坪庭を賑わす
- 血圧の薬を飲んでいる私 奈良漬を漬けると娘は嘆く
青森 木村美映
- 二十代は脱色・染色を繰り返し気づいたら髪がなくなっていた
- 還暦間近・未婚独身いまさらにウイッグなんてかぶる気もな
愛知 稲垣嘉子
- 義父さんあなたの息子も車椅子ですハンサムだった遺影に告える
- もっと力出してよ夫よベッドより車椅子の移動大変だあ
近江八幡 芦田文代
- 塗り重なった文字の看板が話しかける その商のむかし昔
- ホーローの看板は錆びてる ぼんやりした灯は残る八百屋
東京 桃谷具久夫
- 蝉一匹平和の森で歌ってる心に響く初のテノール
- 油蝉夜明け前から気張り鳴く帰る行く人ともかくファック
札幌 西沢賢造
- 鼻の酸素チューブはずれ覚めて知らずに逝ってしまうのか「ハレルヤ」
- 「悟ったようなことなど言わないで」と五十インチのテレビが届いた
飯田 中田多勢子
- 大宮諏訪神社秋季祭典を二十三日神社や大宮通り桜並木一帯で繰り広げ
- 同神社は東野全域橋北・橋南一部三十ヵ町一五〇〇世帯を氏子とする
千曲 中村征子
- 降りる沸く 天から地から 雨の一滴と入れかわる虫の演奏家たち
- 胡瓜から涙がポタポタ 大事にしすぎたせっかくのいただき物
仙台 狩野和紀
- 手の届きそうにない事を適えようとする願いが若さの秘訣
- 人の物ほど良く見えても鏡と睨めっこして諦めるのが一番
さいたま 清水哲
- 医大の教授は「血圧は?」測定リストを見せ「薬は出しません」
- 心臓に二つのポンプあり 一日に一〇八〇〇〇回打つ働きにただ深く感謝
横浜 上平正一
- どこかで夜汽車がくしゃみしながら走ってるね ウンウン
- 夜汽車が何か食べ物を探してるみたいだね ウン ウン
東京 木下海龍
- なんとかあと二年は生きて居ようと思って励んでおります
- 九十一歳になるといろいろと身体の限界も感じている日々
群馬 剣持政幸
- 昔梓志乃が歌ったカラオケが脳裏を掠めるラブホの空間
- 既婚男性は年上の部下ハーレムな寝言の前に聞いておけ
松本 金井宏素
- 山稜を赤く染めて日が昇る 視界から生物の気配が消えた神無月
- 物心ついたころから時計はこの柱に掛かっていた 思えば長い道程だった
流山 佐倉玲奈
- 十月にもなるのに今日も暑い それでも朝晩は涼風
- 昨年は出られなかった体育祭に今年は百mを全力で駆け抜ける
山梨 岩下善啓
- 増穂登り窯で零時から六時 ひとり窯焚き当番
- 久しぶりの徹夜 六時間ひとりで登り窯に薪を焚べる
下諏訪 光本恵子
- 木の実がいっぱい落ちている公園 人と熊の共存はありえないというが
- 熊のやさしい目が気にかかる熊と人間の共存など 雲が笑っている