光本恵子の選ぶ歌
- 2026年3月4日
- エッセイ
光本恵子の選ぶ歌
二月号より
・やさしさの裏にある毒針は見えない 刺されたものだけが鋭い痛みを感じる
長田惠子
・溢れそうな新雪に支えられて大天井岳の斜面を満月が転がっている
金井宏素
・年用意の記録も携帯だ君の時代は終わったと言われたようだ
木村浩
・大晦日生まれの息子 毎年たくさんの人に囲まれロウソクを一吹
佐倉玲奈
・参道に立つ影動かず行く先を汚さず歩むすべを探るか
木下海龍
・よき事も悪きこともあったけどなつかしき夫との六十年の歳月
稲垣嘉子
・時を待てそのうち気分晴れるのさ それは何時かは分からないなり
今井和裕
・雨の日の黄色も良いなイチョウ並木この町で生きてく私の明かり
川瀬すみ子
・人も死んだが熊も死んでそれで五分五分という世界かよ
毛利さち子
・K原潜アジアの海にレアアース放射線網霊長捕り込み急ピッチ
桃谷具久夫
・生バンドに若者たちの笑い声サンタンジェロに私も踊る
中西まさこ
・母の死を縁にきっぱりタバコを辞めた ニコチン欠乏苦悩今いずこ
山崎輝男
・箕面の猿も飽きたので鹿を見に久しぶりに奈良の若草山に行く
加藤邦昭
・特急に飛び乗る我を目で追って改札口で手を振る君
藤森あゆ美
・スーパームーンだったと翌朝に知って胸には寂寥の光が弾けるだけ
街川二級
・一日をふり返り空を見上げれば後悔が瞬いている
中村宣之
・引っ越してきて地植えしてみたアブチロン根をめぐらせて赤く笑う
別府直之
・水面に映る赤や黄色 水の子どもがキラキラ輝き踊り出す
森樹ひかる
・我家のプランターに植し白色の綿の花実が熟し弾けおり
鈴木那智