素足(未来山脈2026年3月号より抜粋)

福山 杉原真理子

  • 時の流れに心は置き去りのまま師走を迎える
  • 新日曜名作座は八月より竹下景子段田安則で新たにスタート

横浜 上平正一

  • 闇ふかく風に吹かれて唄っている石女ひとり白い子守唄
  • ガラス戸をあけるとベランダの花々が笑って迎えてくれる朝である

箕輪 市川光男

  • 小島の声で目覚める朝小川のせせらぎこの中で生きる私は幸せ
  • やろうと思っていた事の出来た日の夕焼けは美しい燃え盛る私の心だ

札幌 西沢賢造

  • 二度寝をしようと出窓からの木の枝葉しだいに明るんでいく
  • 酸素器とともにベッドからソファーへレモンを浮かべた白湯がおいしい

米子 大塚典子

  • 今日も頑張りますと鏡の我にグータッチ 笑顔のオーラ
  • 百本の玉葱植える私に黄嫌じゃれあい余興か踊る

諏訪 藤森あゆ美

  • 痛すぎて人の喉だと思い込む コロナの脅威やり過ごす夜
  • 痛いよ痛い頭が痛い 割られてごらんよスイカ割りみたい

札幌 石井としえ

  • 姑の松前漬けを今年また私が作る深夜の手仕事
  • 若い頃一夜で作れた松前漬け今年は五日指も痛めた

松本 金井宏素

  • 溢れそうな新雪に支えられて 大天井岳の斜面を満月が転がっている
  • 紅色の淡い夕焼け 太陽はまもなく因幡の海に落ちるだろうとマップがいう

諏訪 宮坂夏枝

  • 七十歳の娘の私に写真や食べ物を送ってくれる九十四歳の父
  • 今に集中して目前の人にも精一杯対する父の在り方

鳥取 小田みく

  • 年女願い事多しこの年に 大社の神様ほほえみがえし
  • 松林長くつづき深々と 神殿に向かい新しい年を願う

群馬 剣持政幸

  • 長い裾野が広がる麓の街から宇宙へ響かせようこの歌声を
  • 好きでたまらぬ歌うことの喜び蟠り捨てて声を合わせる

流山 佐倉玲奈

  • 週三日の塾通い十九時から学習と友との語らいを終え帰宅は二十二時半
  • テスト前 とにかく自室に籠って机に向かう子ら 結果はいかに

春日井 稲垣嘉子

  • 北上夜曲・山のけむりなど静かに流れて葬儀は始まる
  • 四人の子らの柱だったねお父さん幾たびも言いたい ありがとう

山梨 岩下善啓

  • 古い町の小さな寺 狭い庭に桜が四本
  • 寒風の中 緋寒桜の蕾がふくらんでいる

東京 下沢統馬

  • 潮風に吹かれ海面が穏やかに揺れている何時間でも座っていられそうだ
  • いつまでも坐っていたいクロアチアの海岸 海の青 緑のオリーブがさわやか

東京 木下海龍

  • 初礼拝こころ清きを胸にあつく神をまじかに観るを願いて
  • 今年こそ文語詩編を詠み初めるむせる声音を浄めつつ

下諏訪 光本恵子

  • 群れて飛ぶ白き鳥たちいっせいに湖に降り立ちべちゃべちゃおしゃべり
  • 日本近海に眠るレアアース深すぎてね残念と言って死んだ夫