いのち(未来山脈2026年4月号より抜粋)
- 2026年4月1日
- 会員の作品
愛知 川瀬すみ子
- さあ食べよう肉も野菜も蜜柑色に染まってぽかぽか南瓜のシチュー
- 冷蔵庫の冷蔵室へ野菜はお引越し 野菜室は手作りワインが並ぶ
松山 三好春冥
- 成人の日の強風に老いた家が震える 明るい雨戸が欲しい
- 成人の日の思い出は昔話 父も母も逝った家の広さ
福山 杉原真理子
- 阿伏兎観音傍らに宮城道雄の記念碑 眼前に波穏やかな能登原の海
- 墓参時に阿伏兎を訪れた宮城道雄 随筆鞆の津の一節が記念碑に
千曲 中村征子
- 不平不満別にただの言い草なんだけど 齢のせい不徳の至り
- プンプンわたしにはちっとも匂わない 他人と合わない鼻が鳴る
甲賀 中村宣之
- ハンドルを回して削る鉛筆と感性は右手の加減で鋭くなる
- 丸くなった消しゴムでは納得できないひと言を消せなくて
札幌 西沢賢造
- 「朝の水は血管ひやすよ」レモン浮かべた白湯にかわる
- 日曜の掃除戸を開けると八重桜わずか春の雨降るふる
諏訪 藤森あゆ美
- 入線する先頭車両に凛とした顔を感じる特急あずさ
- 夢を追う人々乗せて今日もまた特急あずさは東へ向かう
福知山 東山えい子
- おってかい 村の爺婆頼って来た 医者行きだとか買物だとか
- お礼は若いもんに言っとくでな 今村は独居と空屋
近江八幡 芦田文代
- 枯れ野に柳一本芽を吹いて春ようと言い出した
- 寄っても来ない春はポケットから手を出してもつかめない
神奈川 別府直之
- 具がいっぱいのペペロンチーノ オーダーにピタリ応えるシェフの腕
- ポテトサラダはやはりじゃがいも里芋はマヨネーズには合わんかも
米子 角田次代
- 元旦の朝米子正月マラソンに孫五人が寒風の中四キロを走る
- 老いも若きも笑顔のゴール私も来年は走ってみようかなどと
静岡 鈴木那智
- 川原の松の枝に引掛っているアンパンマンの絵の凧風にはためき寂しそう
- 新春の青空にアンパンマンの絵の凧風うけてグングン上がる元気よく
平塚 今井和裕
- 華厳の滝百メートルの名瀑だ写真に収め想い出とする
- 新宿は下水処理場そのことも若者達は知る由もない
札幌 石井としえ
- 音のないうオノマトペの雪降り積もる排雪苦労思わせながら
- 大雪にマンション住まいも外に出て雪かきしている声かけ合って
岡谷 三澤隆子
- 川霧消えた天竜に隊列くんで南下の鴨 目ざすはいずこ
- 庭に小さな体ちょこまか遊ぶ四十雀 黒いネクタイちらつかせ
下諏訪 長田惠子
- 赤いトタン屋根に霜がつく朝日を浴びるとダイヤモンドに変わる
- れんげそうを毎日見に行った幼い日 耕され肥料となる運命の日まで
岡谷 片倉喜子
- まばらな実の我が庭の南天を活ける 二本束ねてさまになる
- 小さな羽根の部品を取りつけ餅つき機はなめらかな餅をつく
岡谷 横内静子
- 難なくと今年も南天を飾る 今までもこれからもずうっと
- わら馬・土馬・毛糸馬を飾って今年も突っ走ろう
東京 桃谷具久夫
- 煮干しの骨人差し指に突き刺さる胃袋も食べ怨霊鎮め
- 列島を卑怯の矛盾覆う空凛として国花愛を示して
京都 岸本和子
- 師走半ば芥川賞候補作品発表される 畠山丑雄「叫び」も
- 京大在学中に「地の底の記憶」で文芸賞受賞しデビュー