太陽はいま(未来山脈2026年8月号より抜粋
- 2026年8月1日
- 会員の作品
一関 貝沼正子
- 頂きし筍五本のゴワゴワよ皮剥き急ぐ可燃ゴミの朝
- このバッグに入れてたはずの鍵がない 玄関先に迫る夕闇
横浜 街川二級
- 自分の生まれた頃の流行歌に覚える奇妙な懐かしさ 生き方を思う
- 地面を這う類の花を撫でつけて青空のもとまだ肌寒く海風は
愛知 川瀬すみ子
- 早く終わって帰りたいだけ 美容院緊張しまくり 葉隠れの老い
- 早く終わってウォーターベッド楽しみたいだけ リハビリ整形外科
亀岡 毛利さち子
- 降り続く雨降り続く雨 あいにくの雨 でも恵みの雨
- 傘をかぶっても心は濡れるから今日は逢いには行きません
藤井寺 近山紘
- ほんのりと夕暮れの匂いまだ話の続きがあるのに手袋をする
- もう行くよはまだ行かないの暗示柔らかい光の向こうの小さな駅舎
福知山 東山えい子
- 花野菜のポリ袋が消えた 数軒目あった! 倍値で
- ナフサなくビル建設が進まぬと二男三男がなげく中東情勢
札幌 石井としえ
- 生垣の緑が踊って動物の形に見えてる発熱外来
- 熱が出て休んでしまったデイサービス皆勤賞を今年はのがす
坂城 宮原志津子
- またひとり面会も手を振ることも出来ず幼き頃の友が召された
- 山の分教場から地元の学校へ小学生の頃机並べて学んだ友だった
松山 三好春冥
- 春と夏の狭間に小雨のにおい 懐に傘はあっても濡れて帰る
- あわただしくストーブと扇風機を置き換える 短い春の雨のにおい
諏訪 大野良恵
- 突然にビシッと背中横切る痛みウッとひと声身動きできず
- 鏡の前に立ったまま背中の緊急事態に山ほどの疑問符
大阪 花菜菜菜
- 「こんにちは」の挨拶より毎朝のおはよう おはようがいい
- 請け負いの途絶えた日々思い出すかに公園の椅子にいる夫
静岡 鈴木那智
- 雨のなか楽しそう蕗の葉は初夏のあめに打たれ戯れている
- 葉のさきが緑の傘のよう蕗の葉は秋田音頭の「唐傘いらぬ」と
米子 大塚典子
- ♪あかりをつけましょ雪洞に ココロ踊る雛祭り一月共にする
- お雛さまに膳を ばら寿司・ゆで卵・分葱の味噌和えでおもてなし
岡谷 佐藤靜枝
- 亡妹の親友から手紙がくる静枝お姉さんいつか会えますか
- 妹が逝って三十六年忘れないでいてくれる人の暖かさ
茨城 南村かおり
- 同級生を尋ねて長野訪問 さらにもう一人参加同級会はじまる
- ランチは小布施花屋にて旬の食材を楽しみながら会話が尽きない
諏訪 河西巳恵子
- 生きていると思わぬ恐い事態が 角間川の花筏紆余曲折かつ早い
- 一学期最初の休日 隣り合せの中学高校 川辺の桜無口に満開
横浜 上平正一
- 体操で良く撓るからだのポッケから梅の実ひとつポロリとおちた
- 体操のポッケからおちた梅の実を小犬が鼻先で転がしている
山梨 岩下善啓
- 日本は負けると思ってたよ 怒られるからそんな事言わなかったけどね
- 甲府空襲を見て「日本は負けるな」と七歳の少女は思った
米子 角田次代
- 友の突然の訃報心臓が高鳴り木の葉の揺れるのをただ見ている
- ものしりで世話好きだった貴女 お礼の言葉が飛び交うお別れ会
京都 岸本和子
- コッペパンが好き 何でも受け入れてくれる幼なじみみたいで
- 「恵方巻を食べてみたい」とかいう鬼の子と遊んでみたら楽しかろう
伊那 金丸恵美子
- 小さな手の平にちっちゃなカラスエンドウの種 実って毀れてまた実る
- 「梅が漬かったパリパリで美味しい」とメールが届く 四季折々の郷土漬け
北海道 吉田匡希
- 今すぐに馬身になって走りたい紙片にかすれた文字のよろめき
- カーテンが夜風に膨れいずれしぼむ部屋の主はもう戻らない
松本 金井宏素
- 沙羅の落花が青苔の上で濡れている 潤う八十九歳の朝
- 無造作に植えた苔桃にいつの間にか珊瑚のような玉が光っている
岡谷 三枝弓子
- 代掻きがいつしか交流の場に 泥田に泳ぐ子 鬼ごっこする子
- 学校田の空に飛ぶ子のはじける声 春の行事となる稲田づくり