素足(未来山脈2026年9月号より抜粋)
- 2026年9月1日
- 会員の作品
札幌 石井としえ
- とんぼ飛ぶ私の見た秋病室で熱の下がった息子と共に
- 虫の題思い出してるとんぼ達息子の肺炎とうげを越して
亀岡 毛利さち子
- 鬱陶しい雲が垂れ籠める曇天 幟が頼りにはためいて
- がらんと広い部屋に独りっきり 薄ら寒いよ首のあたりが
埼玉 木村浩
- 朝おにぎりを買いに行くと残りわずか働かざる者食うべからずか
- 通勤で買って行くのかおにぎり物価高騰のあおりだな
米子 大塚典子
- 澄んだ空・青い風 落花生五株を植えて畑は夏にころもがえ
- 一体何匹いるのか 耕す畝・畝モグラのトンネル地下鉄
横浜 上平正一
- 夕やけいろにそまるきみの楓がだんだんあつくなって来た
- ねむれば早起きする公園には朝から黄いろい花がいっぱい咲いてる
大阪 花菜菜菜
- 「あなたは私らと違う」は難問だ 放たれた言葉抱えている
- 私はわたしでいい もっともだ納得しよう私はわたしだ
近江八幡 芦田文代
- 和筆筒の三十二枚をスマホで写し六枚を小荷物に南天そえて
- しつけ糸引張る袂にゴミはなく嫁入筆筒に見られてる
東京 下沢統馬
- 躊躇なく切符を買う 学割で半額の電車賃 学生で良かった
- ポーランドの地方都市 ポズナン 住んでいる町から電車で三時間
境港 永井悦子
- 痛い足を引きずっても体操に出かけてゆく 待っている仲間
- 八十代ともなると外へ出かけるが億劫な日もあるけれど
東京 木下海龍
- 車椅子の妻の顔拭くその夫の毅い背中に齢の刻みあり
- 呆けた父に食を供する娘あり 放置した日の贖罪の如く
千葉 夜流耕舟
- 母の名は 誰が名付けたかルーシーさん 三三〇万年前の たぶんとってもいいオンナ
- 子供たちが東に向かい 七万年の歩みを始めるとは知らなかっただろうねルーシーさん
東京 大野みのり
- 目の前には果てしなく広がる大草原 ここから一歩を踏み出す
- 同じ空とは思えない 地球の大きさを感じるどこまでも広がる空
伊那 金丸恵美子
- 悩み迷い戸惑い十代が過ぎ二十歳になった君たち 未来を信じて祝の日
- 一度きりの人生やりたい事に全力で当たれ 月見草咲く朝一筋の道
伊那 まさこ
- 音信不通だった友からの電話の声はいつも通り がんばれリハビリ
- 「パパが取ったんだよ」虫かごの中にクワガタ 樹液の甘い匂いがする
鳥取 小田みく
- ドクターの許可が下りて退院する 待っていたのは孫の手編みのカーデガン
- 花模様の白いカーデガン 手も時間もかかったろうに 気持ちがうれしい
松本 金井宏素
- 久しぶりに篠ノ井線に乗る 姨捨駅スイッチバック小学校修学旅行
- 蒸気機関車の荒い息遣 拳で肘掛を打つ四拍子なんだ坂
下諏訪 光本恵子
- ピンポン玉にあたってはじき返す ラケットも舞い上がる
- 娘とはじきかえす卓球 決まるスマッシュ まだまだ右腕は動いてくれる