あ・ら・か・る・と(未来山脈 タイ294号より)

錆びた線路が草むらに消える駅の片隅青い郵便車が待っている

三好春冥

 

徴兵の板門店警備二年間 夜間の緊張

語る韓国の友

山崎輝男

 

手の平を合わす形にひっそりとおがみ蟷螂上がりかまちに

押谷盛利

 

劇薬は赤い血の色涙色 効くか効かぬか吾だけは効いておくれ

川上博

 

真っすぐに入れた菜切り包丁 心のうごきが大根のゆがみとなって

近山鉱

 

薄暗い木の下にひざ突いて蚊を追いながら銀杏を拾う

廣常秀雄

 

宇宙は薄皮をはがすようにあかされる

おのれのことは未知のまま

木下忠彦

 

JR福知山線の大惨事トップは無罪許せない庶民感情は

與島利彦

 

風の吹くまま枯れ葉がころがる細い道

こんな人生もあるか

木村安夜子

 

命がけで作った米が売れない福島の農民の痛みをとつとつと話す夫

東山えい子

 

諦めの境地で長湯に浸かるとほぐれてゆく積み上げた来歴の嵩

毛利さち子

 

風を切り紫陽花咲く道 学生らの銀輪が行く一列になり

大内美智子

 

コスモス咲き乱れる古里はデコボコ道を歩いてきた兄の心の安らぎ

吉田桂子