交差路(未来山脈 第296号より抜粋) 

孫は鼻水たらしながら元気に遊ぶ 置き土産は風邪
長野 春日 歩

一夜にして枯れ木に雪の花 晩秋の雪景色に見とれ車中は和やか
下諏訪 藤森 静代

野良仕事を早々に切り上げて諏訪湖の足湯 きらめく波に時間を忘れる
伊那 市川 光男

朝霧に野山も里もすっぽり包まれて自動車のライトの光も灰色に
茅野 平澤 元子

隙を見て襲いかかる藪蚊なり やせっぽちよりでぶが旨いぞ
岡山 川上 博

しみこんだパセリと土の匂いするトラックに君と朝霧の中
茅野 伊藤 里美子

湖畔の桜 満天星 日ごとに美しく紅を重ねて秋は深まりゆく
岡谷 花岡カヲル

耕せば矢尻の出る畑 遠いとおい昔から暮らしよい土地だった
飯田 中田多勢子

寝待月が上がる秋の夜半 コウロギの鳴く声に星が瞬く
金丸恵美子

遠く見る北アルプスは尚さらに白さを増して美しくなる
茅野 こまつ極宙

澄んだ風あおい空の霧ヶ峰 薄紫の松虫草が清らに咲いて
岡谷 山本きよ子

音もなく散るひとひら こんな日は季節と共に歩こう何も考えず
岡谷 堀内昭子

「人のため 暑くなれぬはクソなり」と思い出す程 己戒める
仙台 網尾 守

一つ所にとどまってはいない男だった今も自由に飛びまわっているか
鳥取 小田 みく

沈む太陽を両手で支える心かな這いづり田畑を耕す爺婆
福知山 東山えい子