山や野や川(未来山脈 第313号より抜粋)
- 2015年7月6日
- 会員の作品
現代口語短歌誌「未来山脈」2015年7月号より会員の作品を紹介します。
きっとこれは夢 早朝五時の吉野の桜と世界遺産観光に揺られている
諏訪 関アツ子
小さな座布団じゃ空は飛べない 春の雨にこもる私は眠い
松山 三好春冥
朝早くタラの芽を目指すが遅かった一つも残っていない 空に雲なし
米子 角田次代
雲の切れ間あるいは端から光漏れ地に降り注ぐ天使のはしご
東京 金澤和剛
三人の中で一番好きなのは金太郎動物愛護でスポーツマン
東京 保坂妙子
捨てられた桜の枝も花瓶で命を蘇らせ花を咲かせた生命力
岡谷 林朝子
ライトアップされた熊本城と街の明かりが一枚の絵のように夕餉を楽しむ
岡谷 堀内昭子
庭も色づく春 寒の戻りは強烈桜もびっくり花散らしの雨に
岡谷 伊藤久恵
青空 あわいピンクの花が風にゆれて笑顔で見上げたロトウザクラ
岡谷 山本きよ子
小机の上を漫然と飾るストラップはディサービスで作った小物たち
大阪 鈴木養子
咲き始めた桜の誘惑に負けて一万八千歩の上目づかい
岡谷 唯々野とみよ
美可よ 今の鹿南校では おおくのなやみ おもいでのひとつに
鹿沼 田村右品
地震の日 光本先生からのお電話 夢中のあの日我に返りてはじめての涙
水戸 及川かずえ
五月の森を歩けばむせるような緑に押しつぶされる
横浜 上平正一
お宮の裏庭一面にいぬふぐり 引き寄せられしばし見惚れる
岡谷 花岡カヲル
代かきをした田が光ると蛙が鳴きまもなく早苗植わる五月晴れ
諏訪 宮坂きみゑ
堅牢蒼古の顔貌さらす校倉造経庫こそ日本建築の原型という美しさ
各務原 加藤昇
何処からきたのか弥山山頂に多くの巨岩 地球ができたときからあったか
米子 安田和子
弱弱しき恋人の目に微笑みで別れを告げて終わる映画は
高崎 清水篤
桜の花の思い出は一緒に眺めた車椅子の母偲ぶ
長野 平林たけ子
辛抱も精進するも己がため 納得のゆく生き方するため
東京 綱尾守
野を分けへだてなく風が走る 犬も鳴き春を過ごせる
成田 荒巻あつこ
試歩七百公園は十ヶ月目梅花咲く爺とみどり児ういういしい
長野 増田隆
青空に映えて隣の家の土手には八重桜に小鳥が飛び交って
諏訪 上条富子
田植を終えつばめが飛び交う畔道で泳ぐこいのぼりを見る
米子 永井悦子
友から山吹の花の絵葉書が届く 胸いっぱい郷愁を誘う
岡谷 山田治子
「今日の辛抱未来への一歩」いいこと言うねぇ兎の飛び出し早く5匹になれ
東京 鷹倉健
母の日に幼い次女から草花のブーケもらうその気持ちが嬉しい
諏訪 浅野紀子
みどりの日 孫娘”梨乃”の誕生日 古希の妻は喜びの長電話
大阪 與島利彦
色とりどりの緑が重なり山がもりもりと膨む ここは信濃路
金丸恵美子
せっかくイニシャルがMなのだからもっとやさしくなりたい
東京 堀江美菜子
今が一番いい歳なのに 自由な時間を浪費しているもったいない
天理 坂井康子
葉桜の頃からあっという間に田植が過ぎて夏雲が湧く
群馬 剣持政幸
カーテンの隙間をそっと開けてみる 物干し竿をすずめが歩く
茅野 こまつ極宙
いつの間にか風景は変転し 秋の日差しの中の憂愁
札幌 西沢賢造
白青と交互に染められ花びらは人工的な美を愛でられる
諏訪 藤森あゆ美
教え子が花を持って見舞いに来てくれた 昔の教室の様子が甦える
岡谷 立野行雄