太陽はいま(未来山脈第316号より抜粋)

現代口語短歌誌「未来山脈」2015年10月号より会員の作品を紹介します。

 

姉妹で背丈競って刻んだ印が実家の柱にいくつもの模様
諏訪 藤森あゆ美

赤いステッキが杖にならぬよう加齢(華麗)にステップを
米子 大塚典子

飲めないお酒を無理矢理のんで茶色っぽい目の中に吸い込まれてゆく
藤井寺 近山紘

私宛てサルでもわかるパソコン操作 にくい息子の手引書作り
札幌 石井としえ

記憶の少女期を現在形で生きる義母 わたしも戦前を旅する
茨城 坂口廉

四六時中よりそう自意識 生を閉じるまでの長い付き合い
奈良 木下忠彦

太陽の引力によってか朝は東 夕は西に向く向日葵の花が咲くと東向き
岡谷 宮澤己代子

裏口で朝日に照るか蝉一匹 朝の挨拶は玄関で鳴け
小浜 川嶋和雄

夏は快適 冷房の部屋で何もしないでゆっくり寝ていたい
岡谷 武井美紀子

戦争が終わって七十年数々の思い出はまだ生きている
東京 保坂妙子

諏訪湖畔のジョギングロード マイナスイオンが足裏で弾む
下諏訪 青木利子

買ってきてくれたアイスクリーム もっとしっかり謝らなくちゃ
東京 堀江美菜子

中国語飛び交う大阪の繁華街 暴買いツアーで街元気
大阪 山﨑輝男

スニーカー全部洗って玄関にサンダルを出す 夏の未来形
愛知 川瀬すみ子

竹筒をふるりと滑り出す水羊羹 父は晒し餡の品が好き
諏訪 河西巳恵子

手をかけて愛情をそそいで畑は実る 出勤二時間前の夫の努力
岡谷 佐藤静枝

被爆日にもどる九つ 広島の衝動、参事つぶさに語る
諏訪 伊藤泰夫

母を我が家で看るようになって一年 緊張していた糸が緩みだした
米子 安田和子

朝から35度を越える日本列島 行きあうあいさつは今日も暑いねー
坂城 宮原志津子

梅雨明けに白いサンダルを履き 来たる夏の覚悟をする
岡谷 片倉嘉子

桜の樹の葉隠れに小さな目 手の届く高さに山鳩が卵を抱く
岡谷 柴宮みさ子

貰ってくれると嬉しい初物きゅうり そのことばが頬緩ませる
岡谷 金森綾子

はにかみの笑みを見せて遺影の義妹 子息のスマホに能登の一枚
岡谷 三澤隆子