太陽はいま(未来山脈第317号より抜粋)
- 2015年11月16日
- 会員の作品
レジ袋の底に鮭の切り身ふたつ 怪しげな影法師がついてくる
松山 三好春冥
お手上げの格好に眠る熱帯夜夢の林でみんみん蝉鳴く
一関 貝沼正子
悲しみから目をそらさないように生きていきたい八月の午後
東京 堀江美菜子
六年生から受験の女学校おかっぱ時代の友故郷に今は二人だけ
水戸 及川かずえ
昨日採らなかったオクラ大きく生り過ぎ筋ばかり早い成長
岡山 廣常ひでを
子ども神輿を囲んで玉箱がタンタン太鼓がドンドン懐かしい音
飯田 中田多勢子
春夏秋冬さくら花火もみじ銀と雪はかなく跡形もなく消えゆく美しさ
米子 笹鹿啓子
ハクチョウソウのかすかな揺れに風を感じる盆の朝ぼらけ
岡谷 柴宮みさ子
庭先の暗やみに広がる花火の歓声 三年ぶりに戻った盆の賑い
岡谷 三澤隆子
西空から発光を放って進むすすむ宇宙ステーション月光に照らされて
岡谷 横内静子
「ずく無しの節句働き」と姑は言った 盆のかたづけ大掃除
岡谷 武田幸子
稲田に咲き出す白い花は草の花 好きよとは言えなくて
岡谷 金森綾子
やっと解けたと思ったらまた降り積もる雪空には重たそうな黒い雲
箕輪 市川光男
小柄な選手のプロフィールには一八一センチ 小さく見えただけ
茅野 こまつ極宙
そろってお盆の墓参り 夏雲を追いのけるように頭上にうろこ雲
茅野 伊東里美子
ためらいの卵をそっとあたためる夢を見ていた歌会の帰り
青森 木村美映
今夜はペルセウス座 流れ星と共に迷わずにと迎え火焚く八月十三日
岡谷 堀内昭子
短かった盆に送り火を焚く 残り火に秋風が通りすぎ一抹の思い
岡谷 伊藤久恵
神社の大欅は蝉ひきつれて空を割り涼をおろす
岡谷 唯々野とみよ