右手左手(未来山脈第325号より抜粋)
- 2016年7月1日
- 会員の作品
烏合の衆のツイッターがあまりに五月蠅くて遂に電源OFFにする
京都 毛利さち子
「家」と一文字書いてみたが何故か淋しい あれもこれも浮かんで消えで
木曾 古田鏡三
退院1ヶ月ひたすら通うリハビリの道 冬枯れの景色もわずか春へ
岡谷 三澤隆子
ホワイトデイに雪が降る喜ぶ人もあるバレンタインのお返し
岡谷 武田幸子
秋一の御柱が大きく迫出しよじれる 華乗りが今かいまかと待つ
岡谷 横内静子
うぐいすの声が谷間にひびき さあ山出しのはじまりだ
岡谷 片倉嘉子
習い事をあれもこれもやめて児は春休み 少しずつ大人びていく
岡谷 金森綾子
くぐもる声にいたわりの言葉 病院の待合で聞こえくる触れ合い
岡谷 柴宮みさ子
人生の旅は道連れ夫婦旅 今があるのは妻子のお陰
下諏訪 小島啓一
せめて私は待ちたい それだけで君らが生きていけるのなら
滋賀 岩下元啓
洋上に使い捨てロケットが妙技を披露する 波立つ船上へ着地
千曲 中村征子
くす玉のような八重桜が塚間川に重く垂れさがり人々の目をひく
岡谷 伊藤久恵
諏訪の衆の心意気が潔い下社のお柱 三十五度の急斜面をかけおりる
岡谷 林朝子
この店には週一度だけ 質素に生活していますと品の良い老婦人
岡谷 堀内昭子
熊本の地震九州全土に 我町湊の土石流で被災した日々が甦る
岡谷 花岡カヲル
久々に礼拝堂に身を置けば場におさまり心くつろぐ
大阪 高木邑子
穏やかな日々を願って寒中見舞いは手書き たどたどしい二男の友
長野 増田隆
長い冬のトンネルを抜けて新緑の五月 気持ちを切り替える季節
岡谷 佐藤静枝
僕俺わたしわたくしといまだに統一できないでいる北風ぴーぷー硝子戸の内
川越 梅澤鳳舞
巻きずしとお稲荷さん茶碗蒸しで始まった九月生まれの誕生会
琴浦 大谷陽子
体の苦しみに耐え続けてほぼ三度目の春 どうなる私の未来は
つくば 辻倶歓
ゴミ箱あさるノラネコにさえもいとおしさおぼえる今朝の空
鳥取 小田みく
思い出話を聞きたいだなんて失恋のこと胸キュンとなったこと
藤井寺 近山紘
糸電話の糸は切れて 昨日捨てた空き瓶の底に投げ出される
小平 真篠未成
壊れた自転車キーキー鳴らしていく何を気にして何を気にせず
東京 中村千
蓬摘み母のつくった草餅の 少し大きくうす緑して
水戸 及川かずえ
健さんの応援歌に励まされ今日も何とか頑張ってます
仙台 田草川利晃
奥山で切り出された巨木は境内に運び込まれ諏訪大社で神となる
茅野 伊東里美子
牡丹は春の庭の女王 大輪の花をつけて人を呼びサロンをよぶ
米子 角田次代
出し損じたひと月後れのB・D(バースデー)歌 水無月は渋谷・草ノ氏の祝い月
仙台 綱尾守
新しい進路が他にも 朝目覚めたとき役職の引退を決めた
岡谷 三枝弓子
生きていた小二の大和君 六日間水だけで生き残った児の強さ
下諏訪 光本恵子