急行列車(未来山脈第331号より抜粋)
- 2017年1月4日
- 会員の作品
あんな老体と思えど気づくわたしと一緒の同級生トランプ氏
愛知 川瀬すみ子
血管が浮いた手にハンドクリームいくら塗っても心もカサつく
諏訪 関アツ子
長丁場のドラマが終わり新しい年が明ける駆け足の一年
群馬 剣持政幸
羽根があったら飛んで行きたい十八歳で別れたままの友よ
福知山 東山えい子
電通マンの過労自殺 百時間残業に苦悩した自分を想い出す
大阪 山﨑輝男
御柱一心に曳き忘れたいこともある「好き」と一笑される
諏訪 河西巳恵子
銀杏拾い 去年は腰を屈めて 今年はひざをついて拾う
岡山 廣常ひでを
人に合わないと分からない とうとう歌会へ行くことにした
東京 堀江美菜子
亡き友を追うように妹が逝く 頑張るからねの声がこびりつく
下諏訪 藤森静代
初めてバスに乗る ご近所の方と出会いバスに乗り換えて介護体操へ
水戸 及川かずえ
さて僕も君も貴女様も今日からの歩み奈辺に向かうのでしょうか
藤沢 篠原哲郎
有名人はさわがれ 母はひっそりと百二歳の天寿を全うする
天理 坂井康子
金木犀の香り我家を満たしどこへともなく 例年の半月おくれで
岡谷 三澤隆子
ボッチャで銀メダルの彼女「脳性マヒでよかった」と堂々と言う
岡谷 武田幸子
薄化粧してデイに通いショートにも行き自宅で眠るように逝った母
岡谷 佐藤静枝
ここにはリスも熊も居ない だあれも拾わないどんぐり一杯の公園
岡谷 横内静子
紅玉の皮から真紅の色が出て刻んだ実をピンクに染めるジャム作り
岡谷 片倉嘉子
どうにもならない秋の稲刈り 泥田に機械は立往生
岡谷 金森綾子
町内を下がったり上がったり初めての里曳きつられて「ヨイサッ」
岡谷 柴宮みさ子
医者にも母のように逝きたいといわれて幸せな死にかた老衰
岡谷 武井美紀子
牛乳びんぶつかりあって自転車止まる こわい夢おわる
下諏訪 中西まさこ
うすっらい人生やったと言っていた人の事ぼんやり湯船の中で
藤井寺 近山紘
四方を運河が囲む我町を外とつなぐのは六本の橋と五つの渡船場
大阪 高木邑子
季節外れの朝顔のこぼれ種 窓辺に置いて心かよわす
諏訪 伊藤泰夫
夏から秋 毎日変わる気温にいらいらしたり 気がめいる
東京 上村 茗
初春の耳成山畝傍山天香久山大和三山なに祈るか吾の故郷橋消えて
各務原 加藤昇
山積みの問題多い女性会 部長のこの身いつまでもつか
鳥取 小田みく
生まれは渋谷育ちは大森でも江戸っ子の血は一滴もない私
東京 保坂妙子
世の中に馴染めないまま生き恥を重ねた 眠りたい消え去りたい
青森 木村美映
住職さまの穏やかに響く声がおはなし会の親子の心を温かくつつむ
米子 笹鹿啓子
新米入りの袋が廊下に並んだ我が家の一年の胃袋はひと安心
諏訪 松澤久子
女のくせにアッハッハッと豪快に笑う その笑いの清々しさ
奈良 庄司雅昭
人の役に立つ喜びを教えられた民生委員十六年半の貴重な時間
北九州 大内美智子
腕相撲することもないやわな腕水遣る花にジョウロ持ち上げる
一関 貝沼正子
貸地の契約更新と隣屋敷の買収が同時に成った 人生最後の布石
大田原 鈴木和雄