流域(未来山脈第332号より抜粋)
- 2017年2月2日
- 会員の作品
楽したあとはそらえらいわいな 国はショート減らせと言っている
福知山 東山えい子
写真を撮るたびに輪郭が薄くなる 散髪はデートの後にしよう
松山 三好春冥
的外れの目薬さして指先は起きろと言うか寝ぼけ眼に
一関 貝沼正子
ナナカマドの赤の気迫に立ちどまる 旅行者の去った湖畔の道
下諏訪 笠原真由美
美味しい蕎麦屋をみつけた林の中の古民家風の店だ
箕輪 市川光男
うたを詠めないことを時代のせいにしてわたしを巡る月あかあかとしずか
小平 真篠未成
掛け声はファイトがよいかガンバレにしようか友は颯爽と走り抜ける
天理 坂井康子
空家の庭を彩る鈴なりの柿の木に野鳥が群れて味覚している
諏訪 松澤久子
憎らしい程度上手い人がいる 短日のゲートボール納会 名誉ある最下位
松本 金井広素
十一月の初雪早めに替えたスタッドレスタイヤでちょっと余裕な朝
諏訪 浅野紀子
リズムに乗り踊る楽しさ年を忘れリードに身を任せたい
米子 三好瞳
幼子たちが父母と遊ぶのどかな週末の諏訪湖の公園
原 森樹ひかる
高速バスで東京へ 朝日に照らされた紅葉の八ヶ岳が飛びこんでくる
原 泉ののか
今山に隠れようとする夕日をもどすかのよう 車は上り坂をゆく
原 柏原とし
人はみな生きている限り苦悩する我儘がまんと励ましてくれた母
原 桜井貴美代
泡盛の瓶に挿した白いカーネーション とおく近くあの海思い出す
富田林 木村安夜子
遠足で二百人の中学生が飛鳥の石舞台古墳上に踊る敗戦直後の風景
各務原 加藤昇
もうあかんとわと言えず「はい」孫からの「おめでとう長生きして」
愛知 川瀬すみ子
思いもよらぬ十一月の雪五四年ぶりとの事ですがやはり寒いです
鹿沼 田村ゆかり
今日がいっぱい 明日へ走らなくても昨日へ首を傾げなくたって
千曲 中村征子
ブドウパンを食べていると子供の頃のあの時を思い出した
大阪 笠原マヒト
スマイル号 友と逢えて嬉しい買物するのも助けてもらう 明日の元気は今日から始まり
茅野 名取千代子
庭の黄のバラ 最後の花がぽとりと落ちた 来年も咲いてね
岡山 廣常ひでを
「子どもは抱きしめられるために生まれてきた」とタイガーマスク
大阪 山﨑輝男
この冬は壁の緑の絵のなかで暮らしてゆこう猫になったり虫になったり
諏訪 松沢葉子
毎日つづく時間外労働 当然のようなサービス残業になっている
大阪 加藤邦昭
むすめ五歳の誕生日に念願の自転車を買うその名も『変身バイク』
東京 佐倉玲奈
読んだ後ふふふと笑顔にさせられるそんな歌集である
下諏訪 青木利子
広場のベンチでニギリメシを食う秋の雨が通り過ぎて
札幌 西沢賢造
もみじとどうだんつつじ くれないを競ってこの街を行進
岡谷 唯々野とみよ
山里の秋は淋しかろうと神は木の葉を錦に染めてくださいました
大阪 井口文子