急行列車(未来山脈第333号より抜粋)
- 2017年3月2日
- 会員の作品
とわの悔い おそかった 電話をかけたときには還らぬ人に
大阪 井口文子
頭の中で蝉が鳴く先生大丈夫でしょうかと聞いている女がいる
藤井寺 近山紘
しみじみとこの国の一人 雪ふりに東儀秀樹を聴いている
岡谷 唯々野とみよ
どんど焼が三連休に暦を失う しめ飾りが風に半回転
千曲 中村征子
初詣での空がどこまでも青い 二〇一七年の鈴をふる
富田林 木村安夜子
子供たちの運動会は親たちが強くなるフレーフレー
青森 工藤ちよ
悲喜こもごもで織った一年仕上がりは次男の婚約成立
北九州 大内美智子
おい帰るぞ〇〇さん(亡き人)が迎えに来とってやヨロヨロ夜半に
福知山 東山えい子
自動車で行ける距離を自分だと勘違いして急な坂道で喘いでいる
京都 毛利さち子
今宵も湯たんぽのアシストを受けるうれしい事に寒冷地に住む
諏訪 伊藤泰夫
振り向くと雪を被った丘の家は夕闇に静かに沈んで蒼い絵に
下諏訪 中西まさこ
「お帰り」と二人の孫をつぎつぎとハグできた二〇一六年も終る
米子 角田次代
酉年で賑わう石上神宮 神の使いの鶏たちは自由に歩き回る
天理 坂井康子
宝島社「田舎暮らしの本」に和歌入賞賞金を手にした漁師の笑顔
米子 笹鹿啓子
十一月末 何とか動いていたパソコンが全く立ちあがらなくなった
米子 安田和子
恵美子様よ 直美様のそれはとてもやさしいおかあさまなのです
鹿沼 田村右品
さえ渡る冬至の夜空オリオンを追う半分の月やがて西に
諏訪 宮坂きみゑ
年賀状を出した後に喪中ハガキが来たこの間の悪さモヤモヤ感 ああ
大阪 高木邑子
池袋西武デパートの屋上にモネの睡蓮の庭あると云う誘われてバス
水戸 及川かずえ
青森の音楽シーンは「ガラパゴス」 寺山修司の影響ですかね
青森 木村美映
遺されて三年有りし日の夫との会話恋しく脳のパニック始まる
諏訪 百瀬町子
弟 叔母 従弟 叔父 切れ目なく順不同に訃報がつづく
大阪 加藤邦昭
新聞でみた「八ヶ岳ブルー」の空 黒みがかった青は海のようだ
茅野 伊東里美子
ロータリーのベンチに坐る 私は人生に取り残された男
つくば 辻倶歓
新年おだやかな平成二十九年明けた早々に教会の礼拝
諏訪 上條富子
気を引きしめて正月気分抜け出そう 日頃の自分に戻らなくては
京都 輪笠幸来
「このうどん今迄たべた中で一番だ」と饂飩を啜る 心底共感の二人
下諏訪 須賀まさ子
おみくじが日中韓英語で書かれるこの時代これも神社の国際戦略か
大阪 山﨑輝男
心おだやかなお正月雪も雨も降らずに初日の出に手を合わす
鳥取 小田みく
晴天の正月三日 恒例の宝塚・中山観音さまを妻と初参りする
大阪 與島利彦
右手が上がらない隠居はまだ肩腱板断裂の再建を望んだ八十路前
下諏訪 藤森静代
伝承の神渡る氷上の道 凍る朝に古代のロマンを想う
岡谷 百瀬豊子
見渡すかぎり広がる空 連峰を抱き込む透明な八ヶ岳ブルー
岡谷 三枝弓子