流域(未来山脈第336号より抜粋)
- 2017年5月29日
- 会員の作品
ゆうべの雨が拵えた桜色の花道のらの黒猫が踏む
大阪 井口文子
おーい遊ぼうぜ なんだい いい声がしたからさ若い町の春
諏訪 河西巳恵子
見逃せばよかったのか歳時記の誤植 窓辺で穏やかに燃焼する
松山 三好春冥
いつまでも女児はピンクが好きじゃないランドセルには個性が光る
一関 貝沼正子
闘病を支えているようで支えられてる家族や友人 愛しさ沸き上がる
岡谷 佐藤静枝
ほほえみ始めた山並みになごり雪 車窓から向こうの山じっと眺める
下諏訪 藤森静代
いつ咲くの待たせる桜 気がもめる咲けばはかない命を知るも
諏訪 伊藤泰夫
合格合格と明るい声で孫からの電話 努力の日々を重ねて
原 桜井貴美代
林の中から木の会話が聞こえる 今日はおだやか春の陽ざし射して
原 森樹ひかる
三日月と金星が並び輝く 寒さ忘れてしばし見とれる
原 柏原とし
かるたとり 小さい頃好きでそのまま大人になってくれたらと思う読むのは簡単ではない
諏訪 浅野紀子
女同士のおしゃべりは笑いがいっぱい朗らかさ家に持ち帰る
原 泉ののか
私の周りはみんなマリモ 美しい湖に住み全てを許してくれる
東京 堀江美菜子
山脈に背をまるめたような残雪が夕日に染まってゆく
横浜 上平正一
東京からもなつかしい顔が 六十年の時の流れ感じない程つきない話
坂城 宮原志津子
陽炎のたつ土を押し上げ蕗のとう 私を呼びとめているよう
諏訪 百瀬町子
毎朝四時半起床朝食と昼の弁当を作るこれが毎日の日課
東京 鷹倉健
高齢者のみで暮らす我家 世の中が便利になればなる程不便になる
米子 安田和子
雪崩事故自然現象甘く見た訓練優先事故を招いた
下諏訪 小島啓一
雪どけの水 小鳥は何を探すのか雪の光の中 時をすごす二羽は大寒を実感して
茅野 名取千代子
宮園様 山形県のおおかねもちゆうふくなおうちにごたんじょうを
鹿沼 田村右品
友から電話 お互い前向きなのか違うのか 会話は健康とぐちばかり
東京 上村茗
遠く離れて歳月日が語り継がれるかけがえのなき日々
仙台 狩野和紀
寒いなかでも愚痴など言わず水仙のつぼみどんどん伸びて二つ三つ
岡谷 林朝子
独逸の民は逸速くベルリンの壁を廃棄し南北一体欧州の融和に
藤沢 篠原哲郎
礼状の礼状の礼状が短すぎると駄々をこねる 寂しいひと
下諏訪 中西まさこ
世間の束縛を離れ自由に飛翔したい ついてこないアタマとからだ
奈良 木下忠彦
真鶴と鍋鶴の観察終えて駅猫のぽっちゃりさんと遊ぶ日暮れ
愛知 川瀬すみ子
厳島神社 水面に映る朱の御社殿 娘と世界遺産の上に立つ
大阪 鈴木養子
桜ニュース始まると冬に逆転したり 体がどうも前のめる
奈良 庄司雅昭
二月に剪定した梅は窓辺でぬくぬくと咲き香りふりまく
諏訪 松澤久子
そこここでその面影に似た人に会う街の中明日は初七日
札幌 石井としえ
三岸節子の花の絵は笑っているのか怒っているのか 日本の歴史を
各務原 加藤昇
極楽寺のシダレ桜 幸せのシャワーで笑顔満開ごくらく極楽
米子 笹鹿啓子