急行列車(未来山脈第345号より抜粋)
- 2018年2月28日
- 会員の作品
白熱電球に手をかざしては鉛筆を削った 炭のこたつしか無いころ
松山 三好春冥
あなたこなたの差し入れ豊かな年の始め 陽射し穏やか
諏訪 河西巳恵子
一緒にいることが意味 印空寺の歌碑に立ちしろい吐息吐くわたしたち
富田林 木村安夜子
日にあそぶ小雪まとえばたちあまち少女 姫にだって
岡谷 唯々野とみよ
午前零時の時報を聞いて餅つきが始まる 今年は年の暮れ二十八日
伊那 金丸恵美子
元旦は庭に出て川に向かった大階段の上から只一人ご来光を拝む
大田原 鈴木和雄
うつむいて古雑誌を束ねる 残像のようにかすれていく手
下諏訪 笠原真由美
二歳若い六十代の友が施設へ 聞いて驚きともかく会いに
木曽 古田鑑三
ウインウィルの正月演奏をボリューム上げ一人堪能
さいたま 山岸花江
わずかに白くなった初雪 天気予報は人を不安にさせている
諏訪 浅野紀子
いつも人気のない長屋 雀が寄るので気になった
奈良 庄司雅昭
手作りを持ち寄っての集い 煮物揚げ物酢の物味おこわなど
米子 角田次代
満州に派遣され駐屯した関東軍が画策して開戦した満州事変だった
藤沢 篠原哲郎
明けてやっと賀状に取りかかる いつ届くかここは飛脚の宿
千曲 中村征子
癌の友 余命半年の宣告に夫婦で分かれの旅を続けて二年経ち
大阪 山崎輝夫
ピピ! スマホのように答えぬ君の名刺は特別な処にしまったらしい
愛知 川瀬すみ子
注射器で血液を採る看護師は 口元可愛いく紅塗っている
小浜 川嶋和雄
南天の赤い実の乏しさが寒を増す空 行けど行けど青・青
岡谷 土橋妙子
八十路峠の下り坂はあと何年坂麓の燈火ちらちら見えるが
豊丘 毛涯潤
初雪が根雪になって大慌て雪掘り返している雪囲い
札幌 石井としえ
今朝早く湯潅を終えて看護師の運ぶ給食に箸が進まず
岩手 千葉英雄
市庁舎展望室より発展する秋色の北九州にエールを送る
北九州 大内美智子
下伊那農業高校の生徒が作った黒豆と長葱を売りに来た
飯田 中田多勢子
凩が胸ふきぬける夜は重ねぎよりもあなたがほしい
横浜 上平正一
赤土の畑がひろがる風景に癒された人もありこころ旅に映る
天理 坂井康子
誉め言葉を真に受けていた自分の朗読 TV放映に見ると中途半端な表現だ
下諏訪 須賀まさ子
霜にあいながらも陽があたると早生の福寿草ふたつみっつと咲く
茅野 伊東里美子
寺に猫が来ました くるみと名づけてかわいがっています
長野 岩下元啓
正月を一緒にという甥家族 嬉しさと心配が交差する
岡谷 佐藤静枝
バス会社の一泊旅行 車中は酒や話で大盛り上がり地域のつながり
米子 稲田寿子
凍てつく道は宝石を散りばめたような煌めき 除夜の鐘が聞こえる
岡谷 三枝弓子
今年こそ会いたいね! と書く年賀状 縁なき相手と永遠に
諏訪 藤森あゆ美
繰り返すこの感情はもしかして屈辱という名か 上等だ
東京 金澤和剛
しんしんと揺らいでいるこの夢のような爽やかを生とするか
札幌 西沢賢造
絣モンペに籠を背負い寒風のなか伯州ネギを育てた古のひと
鳥取 永井悦子
想いの半分もできず 総決算のような風邪をひき持越す
諏訪 関アツ子