急行列車(未来山脈第348号より抜粋)
- 2018年6月1日
- 会員の作品
行き先をたどれば過去の一滴が身にしみる春の日のボレロ
札幌 西沢賢造
かすみ桜の咲く頃にきっとあなたに会えるでしょう きっときっと
伊那 金丸恵美子
もろもろを手放し軽くなった きっと大事なものも失っている
諏訪 関アツ子
忘れな草がさわさわゆれる空いろの出窓 それは希望です
富田林 木村安夜子
たまにボーとするのも良い力を抜いて気遣いはやめよう
諏訪 百瀬町子
赤い気を吸い棘を出して咲く ぼけの花のように身がまえて生きてきた
東京 上村茗
蕪村も眺めたか毛馬の櫻の雲海を観音様とともに見るめる淀の縁
大阪 山崎輝男
全部売ってしまいたい靴もバッグもスカーフも 私のじゃなくて貴女のだから
下諏訪 中西まさこ
チノパン・ジーパン・ジャージが通って行く歩み方だって個性だ
京都 毛利さち子
アイコスとグローがあると聞かされてコンビニ店員に説明を受ける
青森 木村美映
「アッちゃ どげすーだ 六時十五分だわぁ~」「十五分ある 急げ」
米子 安田和子
新聞に歌載れば簡単に元気と 辛い冬どうにか越えた
諏訪 河西巳恵子
総会は誰が参加か我家では ジャンケンポンと負けが出ていく
小浜 川嶋和雄
春は集いが多い楽しんだ余韻つつみ込み帰宅身が軽くなる
諏訪 宮坂きみゑ
七年が終わり八年が始まる 3・11まだまだ東北
諏訪 伊藤泰夫
花の芽も出た嬉しさなのに冬将軍も頑張る春分の日の雪降り
原 柏原とし
真っ青な空に向かい立つ白樺の枝 陽の光のシャワーを浴びている
原 森樹ひかる
ある日突然当たり前に過ごしていた日常が非日常となる あの転倒
原 泉ののか
座ったままコート脱いだり着たり カナダの冬の暮らしの名残
愛知 川瀬すみ子
持てる言葉力で写生を試みる 静まれ動くな目のなか
千曲 中村征子
隣家の奥さんに竹の子寿司を頂く 初物に舌鼓
岡山 廣常ひでを
施設に入所の姉を見舞う 握手したその手から喜び伝わる
岡谷 花岡カヲル
桜咲くから桜散るスーパーあずさ上諏訪から新宿までの旅
諏訪 宮坂夏枝
うめ さくら もも つばき ゆきやなぎ 花の途切れない大地
神戸 栗島遥
気の早い慌て者の土筆の坊や氷雨の土手で縮こまっている
北九州 大内美智子
四月は旅立ちの月 桜も咲いて応援してる娘はうれしさを胸に足許軽く
茅野 名取千代子
時刻表とカメラ片手に倉吉から電車を乗り継ぎ十歳の孫が来た
米子 笹鹿啓子
いつだったか夕刊のコラムに「難民かザクレブで女児保護」と
青谷 木村草弥
「秀逸」を多用する評読み終えて少し笑って散歩道を行く
下諏訪 笠原真由美
お菓子屋は行事のたびに攻めてくるバレンタインもホワイトデーも
一関 貝沼正子
朝から小雨満開の桜も薄墨の那須野が原を宇都宮のホテル迄車を駆る
太田原 鈴木和雄