急行列車(未来山脈第349号より抜粋)
- 2018年7月4日
- 会員の作品
横入りした女性 一列と皆の心を乱して去ってゆく
諏訪 藤森あゆ美
国鉄長野原線の証終点太子駅の復元 廃止の時数え年三歳
群馬 剣持政幸
暗闇に目を開くと混じり気なしの過去ととりとめない未来が浮かぶ
京都 毛利さち子
財務官僚的に申し上げれば私まだ生きてございます
諏訪 河西巳恵子
荒畑のすっくと立てる水仙の花五、六本青い空
岡山 廣常ひでを
ねえ、どうしてさくら色って無いの? サクラクレパスの中
愛知 川瀬すみ子
飛行機雲が尾を引き消えない 天気崩れるかゴールデンウィーク
諏訪 宮坂きみゑ
今や人生百年時代 まだまだ二十余年もあり 嬉しさと戸惑い漂う
境港 永井悦子
谷川に揺られゆられた笹船が水溜りに一息ついている
横浜 上平正一
古希を迎える夫 商品を売る人から買う人に 手土産探すもまた楽しい
伊那 金丸恵美子
ジャーマンアイリスが咲き出した畑の周りが明るく華やかになる
飯田 中田多勢子
根本から袂を分かつ植物だ愛されるつくし憎まれるスギナ
諏訪 伊藤泰夫
四月は高額の請求書次々と そんなこと知らず咲くハナミズキ
諏訪 大野良惠
気楽に言い合い笑った入院生活看護師さんは白衣の天使
箕輪 市川光男
ほっほっほっ林の中に辛夷の花 白い灯りを灯す
原村 泉ののか
元旦から険しい岩山と強風に挑んだ二人 あの頃は若かった
原村 桜井貴美代
ほおに風ピッとささる冬の風 ずっとさわられたい春の風
原村 太田則子
大山桜のほのぼのとしたピンクを深呼吸しながら歩く諏訪湖畔
原村 村樹ひかる
さわやかなみどりゆたかなみどりと唄う 五月はみどりにあふれて
岡谷 武井美紀子
昨年からのコーラスに加え今年からゴスペルも始める 六十七歳のチャレンジ
大阪 加藤邦昭
「ゆうか」という響きに反応する私 なかなか会えない初孫の名前
諏訪 宮坂夏枝
夫と山友と三人で六甲山縦走の為早朝の高速バスで出発する
米子 安田和子
今年も頑張るよと亡き夫に語りかける気のせいか力が出た
諏訪 百瀬町子
ふわっとした藤の香り その下で子や孫たちと集合写真おさまる
坂城 宮原志津子
五色放水と百人のブラスバンドで歓迎 港華やぎ客船万歳
大阪 山崎輝男
何年生きているか大けやき 千の手で空を支える
岡谷 唯々野とみよ
なんとなく自らをなぐさめ切りかえして自分をつくる 砂出を作る
東京 上村茗
狭庭に次々と花が咲くまるで心に寄り添うように
北九州 大内美智子
初夏のはじまり 姿は見せずホーホケキョホケキョと裏庭から鳴いている
諏訪 上条富子
神社役の四年が明けた夜が明けた 神に怒られるかなぁ
木曽 古田鏡三
今さら聞けないあなたの名 知った振りしたばかりに記憶が騒ぐ
米子 角田次代
午前〇時 軍用機が飛び去っていつの間にか深き闇広がる
青森 工藤ちよ
薄闇を押し開き来る人のありあの世この世の隔ての有るは無し
東京 木下海龍
目黒でも恵比須でも四谷でも atreで食べたり買ったり
下諏訪 中西まさこ