会員の作品
「未来山脈」の会員の作品です。
太陽はいま(未来山脈 2021年7月号より抜粋)
- 2021年7月1日
- 会員の作品
花冷えの街路を突風が疾る花吹雪が後を追ってゆく
京都 毛利さち子
潔癖が日常となるコロナ禍に人間不信の川が渦巻く
一関 貝沼正子
憑かれたように戦争に向かうドラマ ふと終戦後を思いだす
奈良 木下忠彦
ちょっと疲れたって言っていいかな 仲間は高齢 ひとり直販
福知山 東山えい子
コロナで延び延びにして来た入院・手術 日が決まれば緊急事態宣言
大阪 加藤邦昭
また逢えた歓びに街の灯がうるむ 待ちわびるパンデミック終りの宣言
富田林 木村安夜子
どちらと言えば「不要不急」の手術 後押ししたのは個室です
愛知 川瀬すみ子
むかし 私には「いい人」がいた 私が「いいコ」だったのかな 彼の
下諏訪 中西まさこ
町内も世代交代新築増えて古い家には古い人住む
北九州 大内美智子
畔を塗り田植えの準備 里山は春から夏の模様替え
群馬 剣持政幸
今日も来たアゲハのつがい羽ばたいて撒き水の植木に渡り飛ぶ
大阪 山崎輝男
隣の奥さんも朝からはりついているのにダメだとラインの着信
米子 安田和子
やまゆり園で採火式ってなんの事弔うための場所だったでしょ
横浜 福長英司
山の土運んだ我が家の庭山は 山ゆり芽生え蕗の葉揺れる
小浜 川嶋和雄
妹が短歌を始めた 日々のラインで送られてくるたくさんのうた
諏訪 宮坂夏枝
一時間ごとに伸びるほど成長の早い藤の花をかけはしの窓から見る
飯田 中田多勢子
呼んでも呼んでも 待っても待っても何処にも居ない ハウルは旅に出た
長野 岩下善啓
節句と重なる夫の月命日 花のご馳走と仏壇のお供で和室は凛と
米子 大塚典子
上京してまだ一週間の息子にもう張り切って仕送りする私
諏訪 大野良恵
さぁできた 印刷実行するもガタガタと空回りの音やまず
米子 笹鹿啓子
白鳥が黒鳥と華麗に舞うロイヤルバレー「尼寺にお行きやれ」
大田原 鈴木和雄
いのち(未来山脈 2021年6月号より抜粋)
- 2021年6月1日
- 会員の作品
露見してもいいしどうでも構わない 鱈ときのこ二種のチーズ焼き
東京 金澤和剛
古い同窓会名簿を開くと校歌が聞こえる モノクロの時空を超えて
松山 三好春冥
大震災忘れぬように来る余震夜半の震度5身構える耳
一関 貝沼正子
震災十年経たドキュメント多くの死と生のままならぬ風景
札幌 西沢賢造
沈む月に火星が寄り添い大接近 この朝地球から使者が火星におりた
岡谷 三枝弓子
言った人忘れ言われし我覚えている 花はひとりで咲いて散る
木曽 古田鏡三
中村光夫のパリからエアメール モスクワからの絵葉書 今ここに
下諏訪 中西まさこ
カーテンの閉ざされた家にも背伸びの水仙が咲く 眺めるはわたし
下諏訪 藤森静代
忘れることが下手だから春の景色を引っ繰り返して見ただけさ
横浜 上平正一
諏訪の殿様は水城高島城を築き敵からの守りを固めた
岡谷 花岡カヲル
青空が見つめている 僕も青空を見つめている
つくば 辻倶歓
十年前の震災の日 電車は止まり娘は徒歩で深夜に帰る(東京)
原 泉ののか
ウグイスの啼く声を聞き目が覚める高原にもかけ足の春
原 桜井貴美代
雨後の霜柱逞しく成長 背伸びをしたり腕太になったり
原 太田則子
春が口の中にふんわりと入ったよ 今年も一番のりはふきのとう
原 森樹ひかる
気が付けば我も我もと一斉に場所取りをする雑草たち
原 北中ひとみ
マンネリの歌を戒しめ背もたれの椅子ゆすぶって見る八ヶ岳の峰々
岡谷 土橋妙子
飲むか呑まないか文字も決まらない 自分の背にせつかれ服す薬
千曲 中村征子
香り満ちて沈丁花 星のつぼみが私を見つめる雨の中
鳥取 小田みく
生きたいのか死にたいのかどっちかはっきりして長生きでいい
東京 久保田万作
颯爽と走る若人金の汗髪なびかせてハラリと飛ばす
仙台 狩野和紀
大きな蕗の薹摘み二人で旬を味わう幸せ
諏訪 宮坂きみゑ
ママは仕事を始めたのかと問う息子 僕は預かり保育は行きたくない
流山 佐倉玲奈
今日から「初めて」の連続が始まる 東京へ引っ越す息子の出発点
諏訪 大野良恵
土手のすみれにたんぽぽからすのえんどう 風に吹かれて居眠りしてる
京都 岸本和子
山陰随一の名城と称された米子城 切込接の石垣が歴史を語る
米子 角田次代
ひ孫の息子が二十歳の成人式を迎えた 目の前に現れたすらりとした身長
東京 保坂妙子
赤ムラサキ黄色と春の花の道を歩む 歌いながらルンルンと
米子 笹鹿啓子
眠る三男の手を握りしめるぷっくりと包み込めないほどの大きさ
諏訪 藤森あゆ美
素足(未来山脈 2021年5月号より抜粋)
- 2021年5月6日
- 会員の作品
きみが最後のひとりだった星の光が今宵わたしの街にとどく
下諏訪 笠原真由美
来し方を悔い行く末を憂い鬱々 日はいつもどおりに暮れていく
京都 岸本和子
ウイルスも生物なんだ生きる先人に求めてコロナ感染
諏訪 伊藤泰夫
青空を見ながら駆け巡る妄想 絡まりあった糸は解けてゆく
原 泉ののか
二月の雨ザーザーボトボト地を叩く枯れ葉の中から春の扉
原 桜井貴美代
けさはくもり空 向かい側のカラマツの先が白く見える 霧氷だ
原 森樹ひかる
根付きの大きな切り株 育ての土と別れゴツゴツした姿を表す
原 太田則子
信州に移住して登山が好きは本当だったのか 山はいつもそこにあるのに
原 北中一美
一九九五年一月十七日阪神淡路大震災 二か月後私は上海駐在員
大阪 加藤邦昭
孫からの一言だけのメールくるステップするようにさあ散歩
岡谷 白鳥真砂子
二十一世紀の黒いハムレット 美しい苦悩の表情は演技か若さか
熱海 石川とみ
退院から3カ月経ったから肺のCTを撮ってみようと誘われる
仙台 狩野和紀
ユンボでなぎ倒される農林研究団地の並木 何の樹に対する愛情も無く
つくば 辻倶歓
腰痛で通院長き我なれど老人の持病いくつまで続くや
下諏訪 小島啓一
湖面を渡り来る群青の波が立春の風を運んでくる
諏訪 増田ときえ
春先の雪はうれしい直ぐ消える 短歌詠めます梅咲く便りも
小浜 川嶋和雄
挨拶をして互いに小首をかしげる 誰だったけ
福岡 吉田桂子
世間さま承知之介の非常識奇想天外わが放れ技
京都 石田天祐
ハンガーに我の服を吊り今日免業の三畳の部屋
熊本 星満天
コロナからのがれる知恵は三密か外出自粛の世界は孤愁か
明石 池たけし
人生あっと言うまに晩年期 あと何年が生きられる道か
東京 上村茗
賛美して心の重荷振り落としポツポツピアノでも主に聞かれてる
牛久 南村かおり
孫三人玄関に立つ新学期 三様三色生かして学べ
東京 木下海龍
チェロの音色 たまにはいいね癒されて眠りにつく
下諏訪 光本恵子
太陽は今(未来山脈第382号より抜粋)
- 2021年4月1日
- 会員の作品
まだ見ぬ人を思い少しの緊張と少しの期待と小さな落胆もあったか
藤井寺 近山紘
ダイエットは食べる順序という息子まず山盛りのコールスロー食む
一関 貝沼正子
寒冷地に冬は近づき鉢植えの三十数個を屋内に運ぶ
下諏訪 笠原真由美
あの人の賀状届かず寒の入り何があったと安否気遣う
横浜 福長英司
まるッとちぢんで安堵する イメージの中の私今日はダンゴ虫
京都 毛利さち子
集まればどうしても一緒に食べるからキャンセルしてね今度の法事
下諏訪 中西まさこ
台風で倒れたブナの老木 日が差しこみいま若芽をスクッと伸ばす
岡谷 横内静子
白鳥V字乱れぬ隊列飛行 北アルプスの大空に主となり
岡谷 三澤隆子
願い事三回唱える時間ある人工流れ星 二年後の打ち上げ待ち遠しい
岡谷 柴宮みさ子
感染者が減ったと油断できぬ 変異とやらで攻めてくる敵は手ごわいぞ
大阪 高木邑子
年始めのサプライズ“鬼滅の刃”二十三冊贈られる
岡谷 金森綾子
湯上りに皮をむく孫の指先からみかんの香りが部屋に広がる
岡谷 片倉嘉子
ゆっくりと朝食 新聞見てもてあます時間 コロナ禍の生活
鳥取 小田みく
鳥インフルエンザ ざくざくっと養鶏場の殺処分続くこのころ
愛知 川瀬すみ子
腰曲がりのおぼつかなくなった母八十五歳の今を生ききる
群馬 剣持政幸
にきびのあるおでこを真剣に洗う 息子の無防備な幼顔
諏訪 大野良恵
拾い集めた柿の葉をキレイきれいと笑い合う姉の晩年私の晩年
岡谷 土橋妙子
大寒の夜 満月のウルフムーン見上げてさまざまな思いを巡らす
下諏訪 藤森静代
元旦に郵便局のアルバイト我が子の経験今に輝く
諏訪 伊藤泰夫
年末で夫が家の風呂に入る 宅老所かけはしで入浴してくるけれど
飯田 中田多勢子
今日一日を健やかにすごすほどの小さな願い 老いの現身
奈良 木下忠彦
温故知新が座右の銘 ギリギリのところで折り合いつける我が家の伝統
米子 大塚典子
年末のスカイブルーの空コロナ禍を忘れさせるほどの新鮮な広がり
岡谷 三枝弓子
正月三日おみくじは吉 大吉と大凶の仲を取り持つ
松山 三好春冥
どしんと焼き鯖が送られて来た北陸の小浜から 新短歌の人って凄い
大田原 鈴木和雄
素足(未来山脈第381号より抜粋)
- 2021年3月1日
- 会員の作品
雷鳴とどろきあられの音して雪の予報の朝に目を覚ます
札幌 西沢賢造
今まで通りでいい オンオフで足りるのにやかましい進化
千曲 中村征子
ゴーッと地が鳴りキノコ雲が立ち上がる「撤退しろ!」と無線の叫び
下諏訪 笠原真由美
寒風を背に千曲川のせせらぎを聞く 年明けの初歩き五千八百歩
坂城 宮原志津子
八十路の我はワープロで作歌 昔の文明の機器は老人の杖だよ
下諏訪 小島啓一
ひみことはやまたいこくか日本の創造主は女帝なのか
神戸 池たけし
空も湖も澄んだ青 八ヶ岳は雪化粧して見下ろしている
岡谷 花岡カヲル
川中美幸や細川たかしは素朴私なんかでも話しかけてくれる
箕輪 市川光男
拭くたびに私を映す鏡は口角上げて老をつくろう女の見栄
岡谷 土橋妙子
二人からプロポーズ受けし走る馬のたてがみのように心が揺れる
埼玉 清水哲
結婚して夫が作ってくれという朝鮮漬け 食べたことがない
岡谷 武井美紀子
Yarukiを持ち合わせてるかそれで決まる尽くせぬYaruki希望します
東京 久保田万作
精一杯生きて潰れた人を非難できない 頑張れとはもう言えない
つくば 辻倶歓
ホカホカの炬燵に屈託なく笑う夫婦 あたしも支えるよ
富田林 木村安夜子
助けを呼ぶこともなく塩をなめ水を飲みつつ餓死する二人あり
神戸 粟島遥
我が君とハウルが同じキンナンバーとは 声が出るほど驚いた
山梨 岩下義啓
時間がたっぷりあった学生時代 貧乏旅行のお供はいつでも青春18きっぷ
流山 佐倉玲奈
壇上で一列に並んで万歳と手を上げる 誓いを新たに真剣な目
熱海 石川とみ
頬がやさしい目が優しい白髪の箒職人確かな手元へのこれは恋か
岡谷 唯々野とみよ
叔母が逝き生家の家系で年長となり自覚と寂しさ
北九州 大内美智子
節分は二月二日 福は内コロナ外 笑いあって二人だけの豆まき
松本 金井宏素
コロナにかかり長い入院 退院したけれど本当に回復するのか
埼玉 赤坂友
日曜日ラジオの音楽聞きながら 仏画に向かうお気に入りの時間
下諏訪 今井恵子
長い階段はS字形に登る 大袈裟だがこれが私の生きる哲学
大阪 加藤邦昭
君とのお話は秘密心の奥に仕舞うよ 柔らかなボールが飛んで来た
伊那 金丸恵美子
去年今年コロナ禍の世に光あれ逝きしも遺るも魂魄(ブシューケー)違わず
東京 木下海龍
「明るい心」そのように過ごそうと孫の書初めを部屋に貼る
米子 笹鹿啓子
なんと優雅な小鳥の舞か ダンシングの指揮者はどなた
下諏訪 光本恵子
いのち(未来山脈第380号より抜粋)
- 2021年2月4日
- 会員の作品
コロナで神経すり減らした一年 体重増加もコロナのせいにして
諏訪 大野良恵
人類の遠い先祖が海を離れてから四億年の長い歳月が経った
青谷 木村草弥
時雨来て重苦しい一日 巴布剤しんしん膝に染み入る
諏訪 河西巳恵子
筋肉痛 どこから来るのかわからぬが運動不足だけはわかったぞ
青森 木村美映
寒さ増し目もさめるような赤いもみじの下に楚々と社鵑草咲く
岡谷 花岡カヲル
近頃後ろを見る自分に気づく まずい まだ早いぞ前を見ろ
箕輪 市川光男
孫の秋華がピアノを習い始めた 先生は最近再会した友のお嬢さん
諏訪 宮坂夏枝
見るだけだった陶芸 思いがけなく一日体験する
岡谷 佐藤静枝
あっと言う間に旅立ち 冷たいほおは眠るように
鳥取 小田みく
糖尿病の定期検査に向かいながら過去二ヶ月の生活を思う私
米子 稲田寿子
姿が見えぬ夜中の動物すばしっこい私は重い足を引きずって捜す
茅野 名取千代子
出来ることなら誰のことも苦しめたくない でも苦しめてしまう人間の性
つくば 辻倶歓
今年はとうとう後期高齢者になってしまいました
米子 安田和子
持久力落ちしと思う 先日の激情さえも朝霧のよう
一関 貝沼正子
クワバラクワバラ 頬ふくらませ愛嬌顔の台風十号TVに登場
米子 大塚典子
帰る息子に ほらよ採りたてキャベツ放りこむ 車の窓から
福知山 東山えい子
桜町通り街路樹は銀杏落ち葉掃きができないと青い内に切り坊主だ
飯田 中田多勢子
作業中は顔を上げる事もなく黙々と検品に精を出し時を忘れる
仙台 狩野和紀
黄と赤花が咲いたか丸い山 もう秋ふるさと池河内は
小浜 川嶋和雄
ひゅうひゅう吹く風にさらわれて赤や黄色の枯れ葉と燥ぐ
岡谷 金森綾子
ふるさとはりんごの産地 赤く色づいて私を迎えてくれる
岡谷 片倉嘉子
真っ青な矢車の花一輪 凛と咲く秋の日に
岡谷 横内静子
色付き多彩に天に映える七色大カエデ 山あいの丘に人々の賑い
岡谷 三澤隆子
八重咲の白い山茶花ぽつねんと人待ち顔で料理屋の入口に
岡谷 柴宮みさ子
参加してたNHKのドラマ OA日もタイトルもホームレス役のぼく
東京 天野ロケ
ピアス口紅シルクのトップ 下半身は普段着のままZoomのクリパ
下諏訪 中西まさこ
あの人に言われたことが今ごろ分かって風の中にいる
下諏訪 笠原真由美
もうよそう いえこれから咲かねば 遅咲きに咲きはじめた私の朗読
下諏訪 須賀まさ子
小学校では日華事変中学は大東亜戦争大学一年で終戦戦争の青春だ
大田原 鈴木和雄
婚礼衣装をスマホで共に品定めしたケアマネも今は二児のママさん
大阪 高木邑子
ピラカンサス 青空映す薄氷 年の瀬の道 ふと立ち止まる
神戸 粟島遥
太陽はいま(未来山脈第379号より抜粋)
- 2020年12月31日
- 会員の作品
文学の師匠の住まいに足繁く通った若かりし二十代
諏訪 藤森あゆ美
銀時計の下でと安夜子さんどこなの うろうろ名古屋駅ホーム
福知山 東山えい子
「ハレ」は「ケ」という言葉と対立的に用いられる
青谷 木村草弥
真夜中のベランダに十五夜の月 人は皆どんな夢を見ているのだろう
岡谷 三枝弓子
縄文の狩人たちが住むという湖底ふかく鎮もる諏訪の湖
大阪 與島利彦
去年のカレンダー未練がましくかかるやり残したことが多過ぎて
宗像 吉田桂子
起床の音楽もゆったりきける貸し切り三畳半のテリトリー
仙台 狩野和紀
黄色のオミナエシお盆にお墓に供える花に一本入れると見栄えがする
飯田 中田多勢子
申告すれば隣県島根に遠出OKの娘と心のよりどころ出雲大社に詣る
米子 大塚典子
「ローマ」とは枠組みでありローマとコンスタンチノープル並び立つ
青森 木村美映
突然に電撃走る右の腰 夫は動けぬ私をを支えてくれる
原 桜井貴美代
草に白い霜満天星の赤映える 休むトンボも赤色
原 太田則子
突然に嵐のごとく入院と言うお供を連れ私は患者となる
原 江崎恵子
ぞくっと背中が応答する マイナスの早朝のデビュー
原 泉ののか
目覚めると今日も青空心が躍る さあ出かけよう大きな空を見に
原 森樹ひかる
誰もいない静まりかえる秋の庭 ”ココニイルヨ”笹の葉ゆれる
富田林 木村安夜子
コロナで帰省もできずにいた そんなときに飛び込んできた訃報
流山 佐倉玲奈
米川のさざ波を見つけて今朝も歩くいつもの道を黙々と
米子 角田次代
現実の話なんか聞きたくないよ辛い痛い悲しいさみしい
北海道 吉田匡希
左肩から手首にかけて激痛が走る 身動きできなくなる
大阪 加藤邦昭
何で捨てられよう赤い服 作ってくれた人が目の前にいる
千曲 中村征子
赤ん坊の全き信頼のまなこ ごくんごくんとミルクを飲む
諏訪 宮坂夏枝
「ちはやふる」本当の意味も知らずして ただ追いかけるだけの恋
姫路 おり姫
視力脚力聴力腕力忍耐力減った 恋の力もっとも
岡谷 唯々野とみよ
弧になって唄ってもらうハッピー・バースデー 泣いてもいいでしょうか
諏訪 河西巳恵子
降りそうで降らない空のようなその顔いっそ激しく泣いてしまえば?
京都 毛利さち子
いのち(未来山脈第376号より抜粋)
- 2020年12月2日
- 会員の作品
諏訪のうみ湖底に眠る縄文の狩人たちの声無き声を聞く
岡谷 三枝弓子
歌を詠もうか辺りを見まわす風も水もすべてが生きてくる
木曽 古田鏡三
あなた自身で窓を開けることもない海はガラスを透き通ってゆく
愛知 早良龍平
薩摩芋おいしいと言えば愛情入れた一本取ったと雅子さん
諏訪 河西巳恵子
小鳥の声に癒される朝心もスキップ空を見上げる
箕輪 市川光男
姉のように慕って四十年 土・日の茶飲み友その人はもう居ない
下諏訪 藤森静代
源氏物語の巻の名がせつない 触れれば落ちるか夕顔の花
千曲 中村征子
夫への気配りなし寂しさふっ切り行こう 未来山脈全国集会
福知山 東山えい子
高速道路が走らぬ吾妻谷を突き抜けて逃げ道を造り続ける
群馬 剣持政幸
今までに経験のない趣のある時間を頂く ファミサポの子供達より
伊那 金丸恵美子
筆力のはみ出し見事な絵手紙のつづきの“夢”を貰って会場を出る
岡谷 土橋妙子
今年も山の栗を拾って届けてくれたMさん 早速栗ご飯を炊く
飯田 中田多勢子
秋雨の滴したたる街路樹 菩薩のように立っている
大阪 木村安夜子
沈みゆく夕陽を追ってほころんで朝日にしぼむ瓢箪の白い花
岡谷 三澤隆子
気づいたら頬に涼風小顔の千日紅いつのまにぽふぽふ数を増やす
岡谷 柴宮みさ子
あっという間に一年が過ぎちらほら紅い桜葉目に染みる
岡谷 金森綾子
晴天の夏日に早朝から皮をひき祖母は瓢箪を仕上げた
岡谷 片倉嘉子
”茄子の花は千に一つの無駄もない”というが秋茄子食べたくてばっさり
岡谷 横内静子
この夏中そこにいたのねマムシグサ シダの葉枯れて頭を出した
下諏訪 中西まさこ
今夜は寒い布団のぬくもりは母のよう今日は彼岸の入り
米子 角田次代
思いがけない圧迫骨折に数センチの移動にも悲鳴がもれる
諏訪 増田ときえ
敬老の日 娘家族が里帰り 老父母の国勢調査をネット処理する
大阪 與島俊彦
コロナ禍にマスクする日々口紅を引かねば緩む口許かくす
一関 貝沼正子
地球を形成する数々の元素を生み出した宇宙の誕生
青谷 木村草弥
東京は怖いところだと聞いていたぬばたまの街に眠らない人々
北海道 古田匡希
屋根を打つ激しい雨音聞きながら佐渡への旅に心はずませる
原 桜井貴美代
そば畑白い花の向こうに北アルプス 雲を脇にかかえる
原 太田則子
小金の谷色を添えるコスモスの花 稲刈りをまつ
原 泉ののか
友人も家族も親戚も来ないいつもと違う夏がぼんやりと過ぎ去った
原 森樹ひかる
白い光を弾いてパラソルハンガーを開く 着古したTシャツばかり
松山 三好春冥
太陽はいま(未来山脈第376号より抜粋)
- 2020年11月3日
- 会員の作品
夢の中にだけ現れる両親の海より深くかぶる帽子
愛知 早良龍平
罌粟粒ほどの種子を蒔く 五つの鉢にあふれる松葉ボタンの花
岡谷 三枝弓子
つきささる視線に顔をあげる 元気お出しと向日葵
原 泉ののか
熊除けにリンリンリンと鈴ならし人に出会えばちと恥ずかし
原 桜井貴美代
原村の気候にまさかの扇風機買い自然の風は勝てなかった
原 太田則子
一心不乱にただただ見つめている愛犬 しっぽがぷるぷる揺れている
原 森樹ひかる
アンパンマン コロナ姫を助けてあげて さみしくて心優しい女の子
山梨 岩下善啓
がんばれと声かけ続けたあの人が逝った 広島忌を迎えぬまま
群馬 剣持政幸
潔くも自信に満ちた名刺をいただいた「山崎正和」四文字のみの
京都 岸本和子
草を刈る音がする草の泣き声がする草の涙のにおいがする
岡谷 唯々野とみよ
夏の診察室は葉陰に昏く「久しぶりですね」とK先生がいう
下諏訪 笠原真由美
検査・指導・診察で半日が終わるこれがなくなったら私もあの世か
箕輪 市川光男
盆棚を作るのに夫は道具が重たくて運べない飾るのを息子に頼む
飯田 中田多勢子
猛暑の中親友の妻が逝ったとメールが届く今年一番の辛いニュース
藤井寺 近山紘
ひと抱えの花束を持って従妹がくる労りが嬉しくて目が潤む
岡谷 佐藤静枝
衣が上の「衣更」衣が下の「更衣」衣を変えるから「ころもがえ」
豊丘 毛涯潤
ピカマチスを知り大熊医院の院長先生は吾の診断の結果を見て青くなり
埼玉 清水哲
「クマ鈴を必ず持っていってね」早朝の独り散歩を心配してくれる
下諏訪 中西まさこ
短い命を燃やしつくした蝉の亡きがら 車が轢き去る夏の暮れ
大阪 山﨑輝夫
タイヤがない車が走ったら面白いだろなと頭の中が 信号待ち
愛知 川瀬すみ子
思いっきり抱きしめた夜の痺れを右の腕がおもい出している
横浜 上平正一
梅雨明けどっと押し寄せる暑さに畑仕事 下着ぐっしょり濡れる
岡谷 花岡カヲル
巣ごもりは6ヶ月目に突入し 今日も一人除草剤を撒く
横浜 福長英司
わが庭で今年の夏も見る花は まだ青いんだ白百合だけど
小浜 川嶋和雄
川の瀬音聞こえる湯の街 歩く人の姿は少なく土産店静か
辰野 里中紗衣
雨が降る土にしみ込む緑が育つ この生命こそ根っ子になろう
木曽 古田鏡三
風は未だに冷たい朝 いいことがありそうな そんな予感 きっと春の始まり
熱海 石川とみ
済んだ事は容認して振り向かず進む私の心改造計画の第一歩
大阪 高木邑子
愛しきれずに生かされる女いつまで経っても恋愛体質
諏訪 藤森あゆ美
※掲載されていた以下の作品は大木瑞香さまの作品でした。お詫びして訂正いたします。
天空に舞て来よ亡き姉よ さ緑の空天女の如く
素足(未来山脈第375号より抜粋)
- 2020年9月4日
- 会員の作品
隣のじいが蒔いた豆むっくり双葉が土をもたげました
福知山 東山えい子
図書館の図書の貸出期間が短すぎる 今回もまた期間園長申請
大阪 加藤邦昭
決算報告終了! ソーダ水を飲みながら武田双雲の動画に爆笑する
下諏訪 笠原真由美
目に見えないコロナ収束なく一年の折り返し月に半夏生が咲く
下諏訪 藤森静代
きっと恋をしているんだ 七月の空を若葉が戦ぐ(そよ)
富田林 木村安夜子
復興に予算もボランティアも足りないと災害来ぬように神頼み
下諏訪 小島啓一
夏至から十日目が半夏生 今年はことさらに待った白い花
京都 岸本和子
わが地球の生誕は四十六億年前 地球への生物出現は 三十八億年前とか
大阪 與島利彦
今年も秋田の高校同級生からさくらんぼが ゆうパックで届いた
飯田 中田多勢子
特別定額給付金の十万円が支給されたと通知が来た
米子 安田和子
朝霧にぬれたトウモロコシかいてきて熱々湯気のつぶつぶぞろい
諏訪 伊藤泰夫
玄関の鉢植えの福寿草春を知らせるように花を開いた
茅野 平澤元子
ピカマチスの葉っぱをなでれば海超えて砂漠の粒が鉢植えについて
埼玉 清水哲
コロナ三満自粛に各行事はほとんど休止になる 空き時間は自由だが
岡谷 武井美紀子
梅雨空の林の中からホーホケキョトッキョキョカキョク二羽の鳥
東京 鷹倉健
卯の花は早くも廃れて凌霄花雨にからめる石堀つづく
大阪 篠原節子
ひとりで見た桜ひとりで登る山しみじみとひとりコロナが来てからは
北九州 大内美智子
梅雨も明けないのにセミが鳴き始める いつから夏と呼ぼうか
流山 佐倉玲奈
また雨が強くなってきて水たまり大声でうたっておどる
岡谷 唯々野とみよ
気付かぬままにかさねていた年齢 予期せぬ病がわが身にも
境港 永井悦子
コロナ姫の物語 やなせたかしだったらどんな世界を描いただろう
山梨 岩下善啓
咳たん息切れ 止まらぬ咳のために夜中に何度も起きていた夫
米子 笹鹿啓子
資格を取ろうと勉強中 土日は特に机から離れない
横浜 大野みのり
ブロードウェイ・ブギウギのマスクにつられ電車を下りると夕焼け
東京 金澤和剛
施設に入りちょうどコロナさわぎにぶつかって誰にも会えない
諏訪 上條富子
明治参拾弐年購入輪島塗御椀 五十個の椀を捨てるという
下諏訪 光本恵子