会員の作品
「未来山脈」の会員の作品です。
急行列車(未来山脈第333号より抜粋)
- 2017年3月2日
- 会員の作品
とわの悔い おそかった 電話をかけたときには還らぬ人に
大阪 井口文子
頭の中で蝉が鳴く先生大丈夫でしょうかと聞いている女がいる
藤井寺 近山紘
しみじみとこの国の一人 雪ふりに東儀秀樹を聴いている
岡谷 唯々野とみよ
どんど焼が三連休に暦を失う しめ飾りが風に半回転
千曲 中村征子
初詣での空がどこまでも青い 二〇一七年の鈴をふる
富田林 木村安夜子
子供たちの運動会は親たちが強くなるフレーフレー
青森 工藤ちよ
悲喜こもごもで織った一年仕上がりは次男の婚約成立
北九州 大内美智子
おい帰るぞ〇〇さん(亡き人)が迎えに来とってやヨロヨロ夜半に
福知山 東山えい子
自動車で行ける距離を自分だと勘違いして急な坂道で喘いでいる
京都 毛利さち子
今宵も湯たんぽのアシストを受けるうれしい事に寒冷地に住む
諏訪 伊藤泰夫
振り向くと雪を被った丘の家は夕闇に静かに沈んで蒼い絵に
下諏訪 中西まさこ
「お帰り」と二人の孫をつぎつぎとハグできた二〇一六年も終る
米子 角田次代
酉年で賑わう石上神宮 神の使いの鶏たちは自由に歩き回る
天理 坂井康子
宝島社「田舎暮らしの本」に和歌入賞賞金を手にした漁師の笑顔
米子 笹鹿啓子
十一月末 何とか動いていたパソコンが全く立ちあがらなくなった
米子 安田和子
恵美子様よ 直美様のそれはとてもやさしいおかあさまなのです
鹿沼 田村右品
さえ渡る冬至の夜空オリオンを追う半分の月やがて西に
諏訪 宮坂きみゑ
年賀状を出した後に喪中ハガキが来たこの間の悪さモヤモヤ感 ああ
大阪 高木邑子
池袋西武デパートの屋上にモネの睡蓮の庭あると云う誘われてバス
水戸 及川かずえ
青森の音楽シーンは「ガラパゴス」 寺山修司の影響ですかね
青森 木村美映
遺されて三年有りし日の夫との会話恋しく脳のパニック始まる
諏訪 百瀬町子
弟 叔母 従弟 叔父 切れ目なく順不同に訃報がつづく
大阪 加藤邦昭
新聞でみた「八ヶ岳ブルー」の空 黒みがかった青は海のようだ
茅野 伊東里美子
ロータリーのベンチに坐る 私は人生に取り残された男
つくば 辻倶歓
新年おだやかな平成二十九年明けた早々に教会の礼拝
諏訪 上條富子
気を引きしめて正月気分抜け出そう 日頃の自分に戻らなくては
京都 輪笠幸来
「このうどん今迄たべた中で一番だ」と饂飩を啜る 心底共感の二人
下諏訪 須賀まさ子
おみくじが日中韓英語で書かれるこの時代これも神社の国際戦略か
大阪 山﨑輝男
心おだやかなお正月雪も雨も降らずに初日の出に手を合わす
鳥取 小田みく
晴天の正月三日 恒例の宝塚・中山観音さまを妻と初参りする
大阪 與島利彦
右手が上がらない隠居はまだ肩腱板断裂の再建を望んだ八十路前
下諏訪 藤森静代
伝承の神渡る氷上の道 凍る朝に古代のロマンを想う
岡谷 百瀬豊子
見渡すかぎり広がる空 連峰を抱き込む透明な八ヶ岳ブルー
岡谷 三枝弓子
流域(未来山脈第332号より抜粋)
- 2017年2月2日
- 会員の作品
楽したあとはそらえらいわいな 国はショート減らせと言っている
福知山 東山えい子
写真を撮るたびに輪郭が薄くなる 散髪はデートの後にしよう
松山 三好春冥
的外れの目薬さして指先は起きろと言うか寝ぼけ眼に
一関 貝沼正子
ナナカマドの赤の気迫に立ちどまる 旅行者の去った湖畔の道
下諏訪 笠原真由美
美味しい蕎麦屋をみつけた林の中の古民家風の店だ
箕輪 市川光男
うたを詠めないことを時代のせいにしてわたしを巡る月あかあかとしずか
小平 真篠未成
掛け声はファイトがよいかガンバレにしようか友は颯爽と走り抜ける
天理 坂井康子
空家の庭を彩る鈴なりの柿の木に野鳥が群れて味覚している
諏訪 松澤久子
憎らしい程度上手い人がいる 短日のゲートボール納会 名誉ある最下位
松本 金井広素
十一月の初雪早めに替えたスタッドレスタイヤでちょっと余裕な朝
諏訪 浅野紀子
リズムに乗り踊る楽しさ年を忘れリードに身を任せたい
米子 三好瞳
幼子たちが父母と遊ぶのどかな週末の諏訪湖の公園
原 森樹ひかる
高速バスで東京へ 朝日に照らされた紅葉の八ヶ岳が飛びこんでくる
原 泉ののか
今山に隠れようとする夕日をもどすかのよう 車は上り坂をゆく
原 柏原とし
人はみな生きている限り苦悩する我儘がまんと励ましてくれた母
原 桜井貴美代
泡盛の瓶に挿した白いカーネーション とおく近くあの海思い出す
富田林 木村安夜子
遠足で二百人の中学生が飛鳥の石舞台古墳上に踊る敗戦直後の風景
各務原 加藤昇
もうあかんとわと言えず「はい」孫からの「おめでとう長生きして」
愛知 川瀬すみ子
思いもよらぬ十一月の雪五四年ぶりとの事ですがやはり寒いです
鹿沼 田村ゆかり
今日がいっぱい 明日へ走らなくても昨日へ首を傾げなくたって
千曲 中村征子
ブドウパンを食べていると子供の頃のあの時を思い出した
大阪 笠原マヒト
スマイル号 友と逢えて嬉しい買物するのも助けてもらう 明日の元気は今日から始まり
茅野 名取千代子
庭の黄のバラ 最後の花がぽとりと落ちた 来年も咲いてね
岡山 廣常ひでを
「子どもは抱きしめられるために生まれてきた」とタイガーマスク
大阪 山﨑輝男
この冬は壁の緑の絵のなかで暮らしてゆこう猫になったり虫になったり
諏訪 松沢葉子
毎日つづく時間外労働 当然のようなサービス残業になっている
大阪 加藤邦昭
むすめ五歳の誕生日に念願の自転車を買うその名も『変身バイク』
東京 佐倉玲奈
読んだ後ふふふと笑顔にさせられるそんな歌集である
下諏訪 青木利子
広場のベンチでニギリメシを食う秋の雨が通り過ぎて
札幌 西沢賢造
もみじとどうだんつつじ くれないを競ってこの街を行進
岡谷 唯々野とみよ
山里の秋は淋しかろうと神は木の葉を錦に染めてくださいました
大阪 井口文子
急行列車(未来山脈第331号より抜粋)
- 2017年1月4日
- 会員の作品
あんな老体と思えど気づくわたしと一緒の同級生トランプ氏
愛知 川瀬すみ子
血管が浮いた手にハンドクリームいくら塗っても心もカサつく
諏訪 関アツ子
長丁場のドラマが終わり新しい年が明ける駆け足の一年
群馬 剣持政幸
羽根があったら飛んで行きたい十八歳で別れたままの友よ
福知山 東山えい子
電通マンの過労自殺 百時間残業に苦悩した自分を想い出す
大阪 山﨑輝男
御柱一心に曳き忘れたいこともある「好き」と一笑される
諏訪 河西巳恵子
銀杏拾い 去年は腰を屈めて 今年はひざをついて拾う
岡山 廣常ひでを
人に合わないと分からない とうとう歌会へ行くことにした
東京 堀江美菜子
亡き友を追うように妹が逝く 頑張るからねの声がこびりつく
下諏訪 藤森静代
初めてバスに乗る ご近所の方と出会いバスに乗り換えて介護体操へ
水戸 及川かずえ
さて僕も君も貴女様も今日からの歩み奈辺に向かうのでしょうか
藤沢 篠原哲郎
有名人はさわがれ 母はひっそりと百二歳の天寿を全うする
天理 坂井康子
金木犀の香り我家を満たしどこへともなく 例年の半月おくれで
岡谷 三澤隆子
ボッチャで銀メダルの彼女「脳性マヒでよかった」と堂々と言う
岡谷 武田幸子
薄化粧してデイに通いショートにも行き自宅で眠るように逝った母
岡谷 佐藤静枝
ここにはリスも熊も居ない だあれも拾わないどんぐり一杯の公園
岡谷 横内静子
紅玉の皮から真紅の色が出て刻んだ実をピンクに染めるジャム作り
岡谷 片倉嘉子
どうにもならない秋の稲刈り 泥田に機械は立往生
岡谷 金森綾子
町内を下がったり上がったり初めての里曳きつられて「ヨイサッ」
岡谷 柴宮みさ子
医者にも母のように逝きたいといわれて幸せな死にかた老衰
岡谷 武井美紀子
牛乳びんぶつかりあって自転車止まる こわい夢おわる
下諏訪 中西まさこ
うすっらい人生やったと言っていた人の事ぼんやり湯船の中で
藤井寺 近山紘
四方を運河が囲む我町を外とつなぐのは六本の橋と五つの渡船場
大阪 高木邑子
季節外れの朝顔のこぼれ種 窓辺に置いて心かよわす
諏訪 伊藤泰夫
夏から秋 毎日変わる気温にいらいらしたり 気がめいる
東京 上村 茗
初春の耳成山畝傍山天香久山大和三山なに祈るか吾の故郷橋消えて
各務原 加藤昇
山積みの問題多い女性会 部長のこの身いつまでもつか
鳥取 小田みく
生まれは渋谷育ちは大森でも江戸っ子の血は一滴もない私
東京 保坂妙子
世の中に馴染めないまま生き恥を重ねた 眠りたい消え去りたい
青森 木村美映
住職さまの穏やかに響く声がおはなし会の親子の心を温かくつつむ
米子 笹鹿啓子
新米入りの袋が廊下に並んだ我が家の一年の胃袋はひと安心
諏訪 松澤久子
女のくせにアッハッハッと豪快に笑う その笑いの清々しさ
奈良 庄司雅昭
人の役に立つ喜びを教えられた民生委員十六年半の貴重な時間
北九州 大内美智子
腕相撲することもないやわな腕水遣る花にジョウロ持ち上げる
一関 貝沼正子
貸地の契約更新と隣屋敷の買収が同時に成った 人生最後の布石
大田原 鈴木和雄
右手左手(未来山脈第330号より抜粋)
- 2016年12月4日
- 会員の作品
元旦の狼煙から始まり容赦なく過ぎた山麓に静かなひととき
群馬 剣持政幸
落ちた箱から飛び出す綿棒 何百本もの方向へ散らばる
諏訪 藤森あゆ美
蠟燭は吹き消さずおくはつあきの葡萄棚には海があふれて
青森 木村美映
太平洋戦争なる異国の史観で自国の戦史を曖昧にはしないで
藤沢 篠原哲郎
季節の移ろい 朝夕冷え込み裏山のもみじも赤く色づいて
諏訪 上條富子
東京のあれやこれやにうんざり 首都の傲りが国中を騒がせる
岡谷 唯々野とみよ
朽ち果て倒れたもみじの先に彼岸花咲く 色を添える寺の庭
岡谷 花岡カヲル
我が身より孫や亭主の秋衣料妻の目線は常に家族を
諏訪 伊藤泰夫
テレビがあったならと早死にを嘆く 土俵の向こうに亡父の顔が見える
大阪 鈴木養子
衿元にひっそりと冷気忍び来て水戸の歌友より豊水の梨
水戸 及川かずえ
雄二様 友啓様と博子様のとてもかわいいこどもですしんじつに
鹿沼 田沼右品
「ええェ七十代そんな年齢にみえないよ」の言葉に五十歳の気分の私
米子 安田和子
台風の寄り道で屋根の大修理との便り実家から
東京 狩野和紀
数台の車を止めて頭を低く罪人のように急ぐゼブラゾーン
岡谷 土橋妙子
現実に戻ればいつも沖縄、福島きれいな青空見とれていつも
札幌 石井としえ
慕う先輩を所さんの代わりに守らねばと己が試練あり
仙台 田草川利晃
長雨で伸び放題の元気な芝生 芝見失う玉 苦難のゴルフ
原 桜井貴美代
御巣鷹に今年も登る人 あの日わたしは三歳の娘と浜名湖にいた
原 江崎恵子
激しい雨で目を覚ます 私も祖母が亡くなった歳を迎えた
原 泉ののか
屋根をたたく雨 雨樋からの水音 台風の通り過ぎるを身を縮めてまつ
原 柏原都志
今日もまだ雨が続いている 庭に突如大きなキノコが出現する
原 森樹ひかる
かばんを提げて里へ帰るという妻 痴呆になっても里は忘れず
岡山 廣常ひでを
午前六時に起きると坂本さんが着替えの手伝いをしてくださる
琴浦 大谷陽子
目ぱちぱち思いがけないシチュエーション 自分の型が判る瞬間
東京 中村千
一気にたくさん歯が生えてきた男児0歳九ヶ月 上に四本下に二本
東京 佐倉玲奈
曇り空やはり降るのか雨ぽつり 雲は重たく基地暗くする
諏訪 こまつ極宙
目覚ましの朝を知らせる音が今日も夢からわたしを引き戻す
松本 下沢実乃里
四肢を欠く選手がタオルをかみしめてスタートを待つ競泳種目
神戸 粟島遥
小会社に思惑あまた蠢きてたちまちわたしは透明になる
京都 岸本和子
運動会の席とりに朝四時から並ぶ親バカ 何か変
大阪 山﨑輝男
一番目の箱を開くと次の箱も気になる 好奇心と欲望が渦を巻く
伊那 金丸恵美子
連勤の明け方 まだ白い街に銀の卵を孵すように眠る
小平 真篠未成
色ちがいの同じバッグに立ちすくむ彼女と私の自意識過剰
下諏訪 中西まさこ
遠く離れた星を探すように夫婦松をめざしのぼってゆく
下諏訪 光本恵子
太陽はいま(未来山脈第329号より抜粋)
- 2016年11月4日
- 会員の作品
子のために祈ることしか出来ぬ母は遍路となってススキ路を行く
北九州 大内美智子
忍びがいようが誰かが暗躍しようがこの道はまっすぐに伸びている
群馬 剣持政幸
みなさんで仲良く楽しくやりましょう? いやいや仮にも文学である
下諏訪 中西まさこ
夏のつかれが見える百日紅 季節が動いてトンボが行き交う
茅野 伊東里美子
年毎に払っても払っても脳天に突き刺さってくる八月の直射よ
横浜 上平正一
四百メートルリレーで銀メダル リオオリンピックから朝五時の感動
下諏訪 青木利子
あじさいの藍がきわだち雨をたっぷり含んだ花毬の生命力
諏訪 百瀬町子
台風が四つ 太平洋の島国は良い面も 悪い面も受け止めている
東京 上村茗
無理して買った五〇冊 この本はあの世でゆっくり読もうか
木曾 古田鏡三
大鷲が六斗川土手のねずみをためて小和田上空を旋回する
諏訪 宮坂きみゑ
人の明け暮れは他人様あってのお陰一人ぽっちでは生きてゆけない
藤沢 篠原哲郎
夏が行く最後の叔父が行く 記録が塗り替えられる新しい夏
千曲 中村征子
水撒きをすれば慌てる青蛙 隠れた姿また見せ逃げる
小浜 川嶋和雄
まだまだ赤ちゃんと思っていた孫が来春ピカピカの一年生なのです
鹿沼 田村ゆかり
くつ底の熱気を払って大観衆の整列のない歓声が轟くここはどこ
藤井寺 近山紘
のびあがりのびあがりして大根は山を見ている湖を見ている
岡谷 唯々野とみよ
藤村の「名も知らぬ遠き島……椰子の実」は 不朽の名歌!
大阪 與島利彦
満開の朝顔は大雨に打たれトランペットになりブルー奏でる
諏訪 松澤久子
縁側から眺める前山の木々のみどりが天を支えて沸きたつ
岡山 廣常ひでを
花オクラは畑の女王さま 黄色い花でお日様に当ると開く
飯田 中田多勢子
ずっとむかし 星祭りの日に出会い片思いして別れた人
鳥取 小田みく
七夕に願いをありったけ 最後は宝くじ当りますように
岡谷 武田幸子
「とと姉」の暮らしの手帳版が私にも ぶりてきのページの染みよ
岡谷 金森綾子
三か月ぶりに会った友は子を亡くした哀しみに一回り小さくなった
岡谷 片倉嘉子
風になびく黄金のおんべ 娘たちの木遣りに祭りが盛り上がる
諏訪 浅野紀子
保津峡を黙々歩いて二万五千歩 保津川下りの船を横目に
大阪 山﨑輝男
定期的に行っていた脳ドックで思いがけない腫瘍を発見
米子 稲田寿子
大逆転で内村航平選手の金 採点は「公平」と銀と銅の選手はきっぱり
岡谷 柴宮みさ子
両手にあふれる水で顔を洗うザブザブと 素手の感触六週間ぶり
岡谷 三澤隆子
朝から疲れを引きずって沈黙の二人 家事分担する音が聞こえる
岡谷 横内静子
風にのって遠く近く祭りの音 熱いコーヒーすすりながら聞いている
諏訪 松沢葉子
一枚のブランケットになりきれず時折混じる言葉のナイフ
青森 木村美映
山や野や川(未来山脈第328号より抜粋)
- 2016年10月4日
- 会員の作品
ちぐはぐになってしまった心と体とうとう所有者ではなくなった
諏訪 藤森あゆ美
あったかくなったなえの声が聞ける三月畑の雪も解けだした
箕輪 市川光男
一本の電話で変わらぬ政治でも思いのままにさせたくなくて
札幌 石井としえ
皆で作り上げ精一杯の演奏をする コンドルは大空へ羽ばたいた
岡谷 片倉嘉子
青紫のチェストベリーのっぽの鉄砲百合 日がな一日咲具合を見る
岡谷 柴宮みさ子
お互いに髪染のあと図らずも出会う妹と甘いコーヒー
岡谷 金森綾子
漸く手にしたチケット初めての歌舞伎に浮く心 たとえ三階席でも
岡谷 三澤隆子
頭を押し上げて眼見開き夏の大三角形を探す七夕の日
岡谷 横内静子
女声の透明なハーモニーがホールの隅々まで 背中まで震える
岡谷 武田幸子
各国の正史には何がしかの隠蔽棄却改窮が見られると
藤沢 篠原哲郎
うれしいことは朝採りの夏野菜を使ってつくる朝食づくり
坂城 宮原志津子
単身赴任の父帰り今夜はずっと傍を離れない十歳の孫娘
東京 保坂妙子
漠と海外で一旗を 夢は夢として家業を継ぐ
奈良 木下忠彦
お気に入りの花のワンピースは手でもみ洗い 十年は新品のまま
下諏訪 青木利子
俊行様よ 友啓様と博子様のめにいれてもいたくないほどのこども
鹿沼 田村右品
無意識のまま地震の後タクシーにのせた文箱には一枚の写真
水戸 及川かずえ
本棚に並んだ本のタイトルにその人柄の本質を知る
仙台 田草川利晃
炎天下必至で歩く遍路みち願うは子供の幸せひとつ
北九州 大内美智子
去年十一月二十二日朝春雄から電話「癌になった」あとは聴き取れない
東京 鷹倉健
八月のカレンダーはタイの青い海 手招きされ心はビーチへひとっとび
諏訪 大野良恵
黄鉄鉱 僕らの生きている意味の工業価値の低い輝き
東京 金澤和剛
鳩がポッポ歩いているのは赤い脚 右に左に左に右に
大阪 笠原マヒト
花の色や香りで人をひきつけるカサブランカ 自己主張が強い
米子 稲田寿子
夫婦で世界クルーズ一〇四日 船旅の感動語る友の瞳輝く
大阪 山﨑輝男
待っていた六月からの月一歌舞伎 はてさて今年は何回観れるやら
鳥取 小田みく
雑草というひと括り露草の澄みとおる青ひきぬいてゆく
諏訪 松沢葉子
近づくなスパイにされて逃げられぬ そこは任せよ人工衛星に
下諏訪 小島啓一
家を離れて十年 小さな声でただいまという静かな空間
茅野 こまつ極宙
灼熱の土の中に蝉の声が染み込んで行く 夏の或る一日古川寺にて
伊那 金丸恵美子
恋愛の免許を持たず生きてきてスピード違反の切符を切られる
青森 木村美映
ひと里離れた庵の珈琲は深く くれないの蓮の花に命のばす
諏訪 関アツ子
右手左手(未来山脈第325号より抜粋)
- 2016年7月1日
- 会員の作品
烏合の衆のツイッターがあまりに五月蠅くて遂に電源OFFにする
京都 毛利さち子
「家」と一文字書いてみたが何故か淋しい あれもこれも浮かんで消えで
木曾 古田鏡三
退院1ヶ月ひたすら通うリハビリの道 冬枯れの景色もわずか春へ
岡谷 三澤隆子
ホワイトデイに雪が降る喜ぶ人もあるバレンタインのお返し
岡谷 武田幸子
秋一の御柱が大きく迫出しよじれる 華乗りが今かいまかと待つ
岡谷 横内静子
うぐいすの声が谷間にひびき さあ山出しのはじまりだ
岡谷 片倉嘉子
習い事をあれもこれもやめて児は春休み 少しずつ大人びていく
岡谷 金森綾子
くぐもる声にいたわりの言葉 病院の待合で聞こえくる触れ合い
岡谷 柴宮みさ子
人生の旅は道連れ夫婦旅 今があるのは妻子のお陰
下諏訪 小島啓一
せめて私は待ちたい それだけで君らが生きていけるのなら
滋賀 岩下元啓
洋上に使い捨てロケットが妙技を披露する 波立つ船上へ着地
千曲 中村征子
くす玉のような八重桜が塚間川に重く垂れさがり人々の目をひく
岡谷 伊藤久恵
諏訪の衆の心意気が潔い下社のお柱 三十五度の急斜面をかけおりる
岡谷 林朝子
この店には週一度だけ 質素に生活していますと品の良い老婦人
岡谷 堀内昭子
熊本の地震九州全土に 我町湊の土石流で被災した日々が甦る
岡谷 花岡カヲル
久々に礼拝堂に身を置けば場におさまり心くつろぐ
大阪 高木邑子
穏やかな日々を願って寒中見舞いは手書き たどたどしい二男の友
長野 増田隆
長い冬のトンネルを抜けて新緑の五月 気持ちを切り替える季節
岡谷 佐藤静枝
僕俺わたしわたくしといまだに統一できないでいる北風ぴーぷー硝子戸の内
川越 梅澤鳳舞
巻きずしとお稲荷さん茶碗蒸しで始まった九月生まれの誕生会
琴浦 大谷陽子
体の苦しみに耐え続けてほぼ三度目の春 どうなる私の未来は
つくば 辻倶歓
ゴミ箱あさるノラネコにさえもいとおしさおぼえる今朝の空
鳥取 小田みく
思い出話を聞きたいだなんて失恋のこと胸キュンとなったこと
藤井寺 近山紘
糸電話の糸は切れて 昨日捨てた空き瓶の底に投げ出される
小平 真篠未成
壊れた自転車キーキー鳴らしていく何を気にして何を気にせず
東京 中村千
蓬摘み母のつくった草餅の 少し大きくうす緑して
水戸 及川かずえ
健さんの応援歌に励まされ今日も何とか頑張ってます
仙台 田草川利晃
奥山で切り出された巨木は境内に運び込まれ諏訪大社で神となる
茅野 伊東里美子
牡丹は春の庭の女王 大輪の花をつけて人を呼びサロンをよぶ
米子 角田次代
出し損じたひと月後れのB・D(バースデー)歌 水無月は渋谷・草ノ氏の祝い月
仙台 綱尾守
新しい進路が他にも 朝目覚めたとき役職の引退を決めた
岡谷 三枝弓子
生きていた小二の大和君 六日間水だけで生き残った児の強さ
下諏訪 光本恵子
右手左手 (未来山脈第324号より抜粋)
- 2016年6月7日
- 会員の作品
リハーサルも今日の準備も託した役員の顔が無言で私見守る
岡谷 三枝弓子
大茶園を展望台より俯瞰すれば縦横斜めの畝もよう
北九州 大内美智子
膝を鍛えサポーターでしっかりガード 山登りを続けたい
米子 安田和子
美しい花束が墓に 思い当たる女(ひと)有って不覚にも妻のやきもち
鳥取 小田みく
人の行く裏にこそ有る花の山 耐えてきた者だけが知る理
仙台 綱尾守
東北の桜便りメールにて東京の友に送る雪山の下の桜もまた美しいと
東京 鷹倉健
甥夫婦に長男が授かる じじばばも名前選びに加えてもらう
岡谷 佐藤静枝
思いついたが吉日でその日のうちにやらないと翌日は大雪で部屋から出られない
川越 梅澤鳳舞
久しぶりに抹茶をいただく 紅白の紙ボタンに金屏風の敬老会
琴浦 大谷陽子
夕日の届かない水路では 餌待ちの鯉たちが我々の足音に騒ぐ
奈良 庄司雅昭
価値観が違うかと思う若い人と話してみれば同感の人が多い教会
東京 保坂妙子
雪が消えた落葉や黒土を日毎に持ちあげる草花の生きる力
諏訪 松澤久子
雑巾一枚を優しく絞る心使い自由なき身の上の絆に底は無い
東京 狩野和紀
畑に顔を出した蕗のとうをふき味噌で この苦さが食欲をそそる
岡谷 林朝子
暖冬にすぎたこの春は桜前線北上中に庭の梅いちりん咲いて
原 柏原都志
氷がとけ湖面を泳ぐ鴨の群れをやわらかくつつむ春の陽ざし
原 桜井貴美代
鳥や花に小さく声をかける孫 もう春ですよといくどもいくども
原 江崎恵子
セツブンソウ背筋伸ばして顔上げて皆いっせいに踊り出す
原 森樹ひかる
終の住処にとホーム選んだ友 ここでもう少し生きようと微笑む
岡谷 堀内昭子
春を唄うスノードロップの花 風がほほをなでリズムで踊る
岡谷 伊藤久恵
友達に刺激されジーパンが欲しいという中二の息子はお年頃
諏訪 大野良恵
歌誌とコーヒー持って縁側へさあ歌の勉強眼鏡はどこだ
岡山 廣常ひでを
おにぎりをほおばっている開演前ロビーはほのかな期待に満ちて
札幌 石井としえ
首も座り笑ったり手あそびしてすくすく 生後百日の長男
神戸 佐倉玲子
夜九時に寝て朝六時半に起き白黒つけずに過ごす生活
東京 金澤和剛
子どもきやり隊の娘次女はめきめきと上達して楽しみな御柱祭の本番
諏訪 浅野紀子
左手にリンゴ右手にバナナ 食べたいから一度に頬張る
下諏訪 青木利子
ヒヤヒヤとハラハラしながら御柱の神を守り見つめる御柱祭
茅野 名取千代子
可愛い幼児から少女の顔になった華江 服も鞄もピンクできめて
さいたま 山岸花江
出てみると両杖で歩行している一人の老人 七千歩の友と申年を語り合う
長野 増田隆
一年ぶりに届いた未来山脈には御柱の歌ばかり 六年前とは想像つかない今
滋賀 岩下元啓
桜の樹の下で三線ひいて春を謳歌するカップルに赤い夕陽射す
大阪 山﨑輝男
誰しもが 乗り越えなければならない壁 自分を信じて いざ受験
松本 下沢実乃里
にわかに怒りだす性癖の君に似ている承知川 私はしぶしぶ承知する
下諏訪 光本恵子
山や野や川(未来山脈第323号より抜粋)
- 2016年5月24日
- 会員の作品
家電店に入るのは何年ぶりだろう カードが無くてもお客様です
松山 三好春冥
臥っていてもベル容赦なく鳴る御柱祭寄付集めの大名行列
諏訪 河西巳恵子
単身赴任の夫との旅その春もふらりと乗った紀勢本線
札幌 石井としえ
AKBが歌う朝ドラはまた明日も見たくなる 録画も予約
下諏訪 青木利子
いい季節になりましたね なじみの挨拶がしづらくなった
奈良 木下忠彦
光がまぶしい白が怖い波うつ痛み壊れてゆくこわれてゆく心も身体も
諏訪 松沢葉子
奥さんが診るのは限界です施設を考えなさいと医師
福知山 東山えい子
太い箍のかかった漬物桶 出番もなくドッカリ小屋に居座る
諏訪 百瀬町子
湖遥か遠く姿ととのえた富士は白いベールで春を舞う
岡谷 土橋妙子
ぐつぐつ煮立っている鍋焼きうどん 待った甲斐があった
飯田 中田多勢子
芽が出た出た出た芽がでた何の芽だ大地を割ってチューリップの芽が
諏訪 伊藤泰夫
姉の入院の報実家より届く 風もない深い空は沈黙を守って
さいたま 山岸花江
一歩でも歩かなければといい聞かせて四時三十分の私の散歩
水戸 及川かずえ
友が元気なら昔のように話せるのに春の陽ざしとウォーキング
茅野 伊東里美子
川土手につくしが頭を出した一日と言わず時とともに成長している
米子 稲田寿子
ピカピカの新入生が桜の道を登ってくっる年取った私はゆっくり下る
箕輪 市川光男
君を支える気持ちは皆同じ格好なんか気にすんな甘えればいいんだ
仙台 田草川利晃
とうとう我家にもインフルエンザがでてきて さあ大変なのです
鹿沼 田村ゆかり
青木ヶ原の樹海を過ぎて間もなく朝霧高原 残雪残る二月二十七日昼下がり
東京 鷹倉健
怪我をして自宅療養一月半 虚しくてやりきれなくても季節は巡る
岡谷 佐藤静枝
お久し振り まだ勤めてらっしゃるの P化粧品販売員から電話
下諏訪 須賀まさ子
雪にもめげずちょうどいま親指の先ほどの青い実をしっかり握ったびわの木
東京 保坂妙子
デイサービスの書道の時間 筆を運ぶ顔はみな若返っている
大阪 鈴木養子
あの日あの時は心配してくださったと感謝の手紙が来た震災五年目宮城県の友
岡谷 宮澤巳代子
シニア女性三千人ホールに集まる皆同じ背格好に見える錯覚
天理 坂井康子
サンゴの白砂に埋もれながら歩く幼心いっぱいの素足
岡谷 武田幸子
いまも刺せずにいる桧垣の柄を雪ずり落ちた石垣に見る
岡谷 金森綾子
濃い桃色のふっくらとしたつぼみのままひな祭りの桃はいまだ開かず
岡谷 片倉嘉子
酸素マスクをしている義母はわたしに手文字を書いて伝える
岡谷 横内静子
物言うキャスターコメンテーターが消えて報道番組は縮こまる
岡谷 柴宮みさ子
さくら咲き里山の色彩あざやかに生きものらの目覚めのとき
松本 下沢統馬
四十七都道府県から選ばれた学校が出場の高校野球も百年の歴史
琴浦 大谷陽子
諏訪大社御柱祭は抽籤でふさわしい御柱になったか 地元が震える
諏訪 浅野紀子
北アルプスの真白き峰に寒の満月 明けやらぬ空の青さにくっきりと
岡谷 三澤隆子
たんぽぽの綿毛が港の船にふる豊かな運河の想いに消える
青森 工藤ちよ
二月の鉛色の空は低く垂れ込め気を圧迫する 息がくるしい
岡谷 三枝弓子
太陽はいま(未来山脈第322号より抜粋)
- 2016年4月22日
- 会員の作品
人よりも上着一枚少なくて手をつなぎながら歩く二人
諏訪 藤森あゆ美
一日の区切れとしてノートの紙きれを花びらのように注ぐ
札幌 西沢賢造
この頃は町の灯りを見てほっとする田舎暮らしの反面教師
愛知 川瀬すみ子
雑草のような恋でした 堀の隙間で詠み人知らず
小平 真篠未成
雪のないお正月 過ごし良いが秀峰泰山の雪景色の無いのはさびしい
米子 笹鹿啓子
石叩きが氷をたたいていつものリズムをこわしてしまった
横浜 上平正一
何かしら涙があふれて天井見ていたら 頑張っているね笑顔で母が
福知山 東山えい子
晩酌の量過ぎたればうたた寝の歌よみ浪人老の自画像
豊丘 毛涯潤
過去とは何だろう苦しみなのか自棄なのか心に聞いてみる
木曾 古田鏡三
夜八時 宴会場から五分のわが家に夫が帰らない 道に迷ったのだ
飯田 中田多勢子
あの笑顔は二度と戻ってはこない
東京 狩野和紀
介護予防体操の会場 若大アカデミー四十分かかる
水戸 及川かずえ
このまま歩けなくなったらどうしよう 大丈夫私が居るからと妻
箕輪 市川光男
誘われて友人の家へ 百号の油絵の大作に取り組む友の頑張りに声を失う
さいたま 山岸花江
愛だってどかっと来たら困るよね 重い雪に四苦八苦
岡谷 唯々野とみよ
妹の愛洗結婚式その娘二人の幼児洗礼そして私の夫の葬儀もあった
東京 保坂妙子
雪を被った山におぼろ月が浮かぶ 春は遠くて近くに息吹き惑わす
伊那 金丸恵美子
スマホ片手に自転車に乗る若者とニアミス転んで強かに背中を打つ
岡谷 佐藤静枝
パッチワークのように作るお手玉 縫いながら頭の中は母でいっぱい
茅野 伊東里美子
塩嶺おろしかビル風か 病院の正面に冷たい風が吹きすさぶ
岡谷 片倉嘉子
桃紅色の小鳥が藪にちらちら 遠目でもわくわくするオオマシコ
岡谷 柴宮みさ子
ずっとずっと待っていた金の成る木の天辺に淡いピンクの花ひとつ
岡谷 金森綾子
四年ぶり日本で正月の息子らに伝統おせちを手作りしてやりたい
岡谷 三澤隆子
張りつめた糸がプツンと切れた それを手繰り寄せてそっと結ぶ
岡谷 横内静子
元旦に盆栽の梅二輪咲く暖冬にすなおに誘われて
岡谷 武田幸子
長引く断水ふり続く雪 心身衰え独居の淋しさ知る
米子 永井悦子
初雪に児らの声はなく振り積もる雪 眺めるは寡黙な老ふたり
下諏訪 藤森静代
朝日浴び煌めく霧氷の中をゆくきれい以外の言葉を忘れて
北九州 大内美智子
意地悪なあなたの手口共犯になれずに振れるわがポリグラフ
青森 木村美映
天竜の川べりに集う鴨の群れ 中央に白サギ一羽凛と立つ
岡谷 花岡カヲル
縁側のゼラニュウム咲き次ぐ真っ赤な花寒さに耐えて
岡山 廣常ひでを
インコのピーちゃん 初産は失敗 卵は一個も孵化せずかわいそう
米子 稲田寿子
みんみん蝉のふたつなく屋敷林のある旧家 十年前そして今日
川越 梅澤鳳舞
解禁だ 渓流釣りがまた出来る 今年は何匹釣れるかな
松本 下沢統馬
男前の顔だけど笑うとかわいいと言われ今日もニコニコしている
東京 堀江美菜子
温暖化に三年連続御紙渡は期待はずれ「明の湖」とは如何
岡谷 今井正文
情熱を持ってのり切る事が出来るか最後の決断に胸がいたむ
岡谷 三枝弓子
ドンと冷気の塊が落ちてきた 日和見主義者のくしゃみが凍る
松山 三好春冥