会員の作品
「未来山脈」の会員の作品です。
素足(未来山脈第363号より抜粋)
- 2019年9月2日
- 会員の作品
灯籠の苔を食べて生きて行けるか 雨が来る
下諏訪 中西まさこ
眞白だ垣根を越えて百合の花 ゆーらりゆらゆら我家を覗く
小浜 川嶋和雄
漱石をあばき出してる集合サロン つきる事はない文豪研究
諏訪 伊藤泰夫
隣に住む娘一家のリフォーム 仮住まいになる我が家を叉片付け
諏訪 宮坂夏枝
令和元年 愚直な人間の初句『国旗より高く泳ぎし鯉のぼり』
大阪 加藤邦昭
料理を持ち寄り語る七時間 口も手も脳も留まることなし
米子 角田次代
断崖の薄は風に吹かれ酩酊して認知症の患者のごとし
埼玉 清水哲
雨に打たれた花々 新緑の緑に囲まれ鮮やかに咲く
諏訪 上條富子
父の日の風に飛ばされ転がる小鳥の巣 玄関先に捨てがたく
岡谷 金森綾子
麦秋田と早苗田織りなす安曇野の風景にしばし癒され朝の病院へ
岡谷 三澤隆子
降り過ぎなければ救いの五月雨見渡す限りのさ緑に心をゆだねる
岡谷 柴宮みさ子
草をかき分け真っ先に取るカタバミ 実家も嫁ぎ先も同じ片喰の家紋
岡谷 横内静子
「パパがいっしょに行くの」児の笑顔がかがやく父兄参観の朝
岡谷 片倉嘉子
熱い熱い貝が殻を開く それをいただく生きぬくために昨夕今朝と
東京 髙橋輝美
力也君 いながわけにおうまれになられにばんめにうまれうなんに
鹿沼 田村右品
優雅に舞うちょうのしたではキャベツの葉がいたいたしいレース模様
米子 稲田寿子
本当に大切なのは相手の腹の内よりも自分の胸の内
仙台 狩野和紀
夕日が雪の八ヶ岳、蓼科と雲を染めてまっ赤に私を包む
茅野 平澤元子
梅雨含む川ばたに さわやかな風 光で話すホタルたち
岡谷 伊藤久恵
新田川の浅瀬の石の上どっちが先に恋したのかカラスと白鷺
東京 鷹倉健
摘みたての水芹を頂く お浸しに玉子とじにと 遠い日のせせらぎ思いつつ
岡谷 堀内昭子
知っています 大人が「今の子」を見る目を「元号予想はタピオカ元年」
北海道 吉田匡希
部活で流した爽やかな汗反発したって何も変わらない現実
伊那 藤本光男
炎天に水やるひとのありがたさみちばたに咲く白百合の花
神戸 粟島遥
体ふわふわ 散りつもった白藤をサクサク踏む
岡谷 唯々野とみよ
僕の高校のシンボルは蜻蛉 トンボは前にしか進まない自分もそうありたい
松本 下沢統馬
相手の見えぬ敵にむかい苛立ち白うさぎもほろほろ
下諏訪 光本恵子
太陽はいま(未来山脈第362号より抜粋)
- 2019年8月1日
- 会員の作品
どんな苦境にも生き切れる人に育てると夫の方針
福知山 東山えい子
雫に言葉を秘めるようにして連なっている枝が光る
札幌 西沢賢造
デイサービス茹で卵の殻剥く媼 昨日からとぼやいている
諏訪 河西巳恵子
醸造酒のワインと日本酒に添えられた料理 イベントに夫と参加
米子 角田次代
未来が見えない人 過去を引きずる人 恐るべき格差
神戸 粟島遥
住宅前のきれいな花壇「お花は盗らないでね」の看板が泣いている
大阪 山﨑輝男
この世は夢よ幻よ そう割りきれぬから辛くもなる
京都 岸本和子
何の兆しかゆたぁりと虹の帯をたなびかせて環水平アーク
岡谷 柴宮みさ子
天竜舟下りの急流 反り返って舵を切る若き船頭のパフォーマンス
岡谷 横内静子
梅花うつぎ元号代われど垂れるほどに白い花 庭の通路はとおせんぼ
岡谷 三澤隆子
令和をどう生きるかと考えるな 内なる物との戦いが続く
岡谷 武田幸子
晴れ渡る空が早苗田に映りいいことがありそうな明日を思う
岡谷 片倉嘉子
選挙戦たけなわ 舞う桜の花びらが蜘蛛の網一面を飾る
岡谷 金森綾子
新元号「令和」新しい時代の始まりである 輝きにも似て
鳥取 小田みく
世界を考える時は地図ではなく地球儀 クルクルクルと回す
大阪 加藤邦昭
牡丹あでやかアヤメと芍薬楚々としてつつじとさつき庭いっぱい
諏訪 宮坂きみゑ
花びらや蝶や少女が舞い上がる渓谷曲線を吹き抜ける風
愛知 早良龍平
五月の里山歩きはわらび採りをしてから大山をトレッキングする
米子 安田和子
組体操する次女の真剣な表情を見失わないよう必死に目で追う
諏訪 浅野紀子
温い布団にくるまって木々の葉っぱを叩く雨音を聞くのが好きです
坂城 宮原志津子
風景とは自然が創り出した見事な「造形」である
青谷 木村草弥
令和に入り益々遠くなった昭和のあれやこれや夢の中
諏訪 百瀬町子
朝刊にカラーで写る金魚たち 暑い小浜も涼しい気もする
小浜 川嶋和雄
お姫さま嫌嫌のんでる薬のように大腸カメラの下剤のむ
札幌 石井としえ
眩しい新緑の弓道場を取り巻く高校生 若さと情熱キラキラして
諏訪 大野良恵
梅雨の晴間はとうとい 心が光に寄りそう
諏訪 宮坂夏枝
スーパーの代わりとなった道の駅 近隣町会には配達便も
青森 木村美映
人を寄せ付けない岸壁の海岸起伏の多い深い森父島の自然遺産納得
岡谷 武井美紀子
大勢の学生が乗っている何時もは一両に数人 乗って残そう飯田線
飯田 中田多勢子
何とかならない事に悩んでも仕方ない前向き前向き感謝感謝
箕輪 市川光男
アリガトウと伝えたい人がいる 真水を吸いあげ謳歌する若葉
冨田林 木村安夜子
いのち(未来山脈第361号より抜粋)
- 2019年7月3日
- 会員の作品
しっかり抱いて寝た湯たんぽだんだん冷えて目覚める
諏訪 百瀬町子
取り敢えずすももの花と詠んでおくほんとはプラム思い出せなくて
札幌 石井としえ
背中に重い父親の古いオーバー盃を口にする仕草が似ているらしい
藤井寺 近山紘
油の海から上がったばかりのかりんとうが蝶に変身 わたしの手に羽を広げる
千曲 中村征子
山桜の花盛りを見ている二人とも 老老盛り 今惚け盛り
豊丘 毛涯潤
鶯の山はけずられ削られビル風の物干し竿で鳴いている
横浜 上平正一
大伴旅人と憶良も暮らした筑紫から時を越えて令和が鳴り響き
岡谷 佐藤静枝
方々の知恵をしぼった元号の誕生秘話は令和に決まる
諏訪 伊藤泰夫
書にした歌詞のイメージを和傘や段ボールや枯葉で膨らませて
米子 角田次代
GWの東京は人の波に乗り一泊二日のスケジュール乗りこなす
諏訪 浅野紀子
腰痛と練習量 母への負担を心の内に 初めて泣いた孫の駿
原 桜井貴美代
空っぽになった娘の部屋 三年間の経験を軽トラに積む
原 泉ののか
芽吹きの季節 プチプチと出た小さな緑が光り輝いてたちまち宝石の森に
原 森樹ひかる
まだかなあ毎日見る桜の蕾 色付き膨らみ期待増す
原 太田則子
春を信じる事が出来ない 冬に枯葉を出す草木のように
つくば 辻俱歓
ボロボロになるまで読んでいるこの詩集 活字の貌も色も匂いも
下諏訪 中西まさこ
通称男の上着を背広と言うが語源はイギリスのサビルローとか
諏訪 宮坂きみゑ
物忘れ進みし我は自信無くして愚痴が出てしまうよ
下諏訪 小島啓一
繁る葉にかくれて赤き椿きのうきょう春はどっと寄せてくる
岡谷 武井美紀子
人は皆重い荷物を背負っている さだまさし流の話術でいやされる
米子 稲田寿子
青山浩吉様 ごきうだいみなごりっぱごけつこんこうふくくらされ
鹿沼 田村右品
公園の傍を駆ければ虫たちと顔面で逢う季節になった
愛知 早良龍平
捨てなければ踏みだせなかった幾つか 君の歩調で花びらのなか
諏訪 松沢葉子
藤棚の下に机椅子を運び込み利用者の手をとって一人ずつ移動する
飯田 中田多勢子
有明の開門を迫るアサリ鉄のゲートは政治力で閉ざす貝は泡を吹く
埼玉 清水哲
こまぎれにしか眠れなく蛙の目借時も度々でボーッと生きる一人身
米子 大塚典子
輪唱を思わせるように散るさくらの花びら風のおもむくままに
岡谷 土橋妙子
そよ風に揺られて飛んだ紋白蝶 枯葉のように一気に消えた
小浜 川嶋和雄
テレビ越しに発表された令和というまだ他人のような元号
諏訪 藤森あゆ美
素足(未来山脈第360号より抜粋)
- 2019年5月31日
- 会員の作品
紫木蓮青空バックに膨らんであした咲きそな幸せの予感
北九州 大内美智子
はいその話は二度目と娘 おかげで老化少しコントロール
諏訪 関アツ子
芝居はもう無理 人が深く描かれた作品の読み語りに 心震わす
下諏訪町 須賀まさ子
深と静まりかえった高遠湖雪をまとった仙丈ケ岳が私を見る
箕輪 市川光男
悔やむならもうやってはいけないと子供だって知っていること
諏訪 藤森あゆ美
メールがただのメッセージだけとは 心を送りたいのに
鳥取 小田みく
催花雨のこの現象を待つサクラコートもとれた春の足音
諏訪 伊藤泰夫
元号は令和 世界中が穏やかでなければ一人ひとりの花は咲かない
坂城 宮原志津子
木がたおれあれたままの山 人のけはいに鹿たかく鳴く
奈良 木下忠彦
一人花見 花びら一枚に来し方を想う 花道を去るのはまもなくか
東京 上村茗
原始 地上は森に覆われ 海には生命の胎動があった
青谷 木村草弥
近道では見つけられなかった宝物はこの身にこそ宿る
仙台 狩野和紀
一夜にして開花のラッパ水仙 道ゆく人にやさしく頭下げている
下諏訪町 藤森静代
小さい草花が咲き出す春を告げる梅もふくらみ柳も芽ぶき桜を待つ
諏訪 宮坂きみゑ
優柔不断が招いたストレス 春の嵐が内に外に吹き荒れる
米子 角田次代
観梅コースあちこちの花木「与謝野晶子」の名歌栞に老若にぎわう
大阪 與島利彦
平成三十一年四月一日新元号で沸き立つ日本列島「令和」で決まる
東京 鷹倉健
仮住まいでは気にならなかった汚れ 新築の自宅は掃除が気になる
流山 佐倉玲奈
休暇から目覚め ぞくぞくと葉をもたげたチューリップ今朝はなごり雪
岡谷 堀内昭子
枯葉の下から蕗の薹が顔を出す ふきみそでいただく春の恵み
岡谷 林朝子
入試日の母の手作り弁当 甘く苦く心にじわり特別の味
岡谷 伊藤久恵
紅葉が鮮やかに山の里を彩り囲む ひかりに映えてひらり舞う
茅野 平澤元子
人の事ばかり干渉している者は己がなにもみえていない
東京 田草川利晃
木は春が来る事を知って枝を伸ばす 春が来るのか人は知らない
つくば 辻俱歓
よく晴れた空を見ながら 昼食の大学芋がおいしい
鳥取 大谷陽子
少しずつでも成長したい精神と肉体と スパイクの力も
松本 下沢統馬
金を稼ぐ苦労が身に染みて でも楽しい初アルバイト
横浜 大野みのり
海土町からバスケットボール遠征試合の孫たち 俊敏な動きにただ涙
米子 笹鹿啓子
朋の愛 師の深き愛 両親の愛はレンズの焦点に光を集めてわが人生に感謝
埼玉 横田哲治
新短歌一筋が私の人生百迄に一首で良いから良い歌を詠みたい
太田原 鈴木和雄
富士の山がじゃぶじゃぶ歩いて湖まで来た 大きく見える朝
下諏訪町 光本恵子
太陽は今(未来山脈第359号より抜粋)
- 2019年4月27日
- 会員の作品
いやこれまで、いやまだまだ 口語自由律短歌が叫ぶ
大阪 井口文子
一生の中の今どのあたり 六十八歳で初々しく歌集準備中
富田林 木村安夜子
明治大正昭和に生きた松園 信念を貫き通し輝きを放った生き方
伊那 金丸恵美子
いつ乾いたやら奴凧のもの干し フガフガ力のはいらない力でしぼる
千曲 中村征子
退職後の人生をどう生きると自問した事も今はどうぼけないかに
藤井寺 近山紘
一センチカットした髪外耳道夜にくすぐる二本が潜む
一関 貝沼正子
懐かしさに包まれたように雪もやみ晴れ間に部分日食
札幌 西沢賢造
冬はつらいが夜明けは素晴らしい そして今に梅が咲き 桃が咲き桜が咲く
東京 上村茗
東日本大震災から八年復興続くも第一原発の復興の終わりはない
東京 鷹倉健
吐くわ下すわの大さわぎ これって風か鬼の霍乱
岡谷 唯々野とみよ
楽しみです 安夜子さんの歌集すごくすごく読みたいです
下諏訪 中西まさこ
パスポートを更新した帰路 喫茶店でコーヒーの香りを楽しむ
大阪 加藤邦昭
母と一緒にふきの薹を摘んだ日が懐かしい 思い出話は脳を活性化
岡谷 佐藤静枝
平成三十一年一月三日三時三十三分最後まで三にこだわり夫逝く
米子 大塚典子
暦では雨水昼からの雨やみスーパームーン湖を照らす
諏訪 宮坂きみゑ
焚火をすると炎の中にうかぶ 弥生人縄文人も焚いた姿が
豊丘 毛涯潤
この薬は効くと信じて三十年続けているプラス思考の健康法
岡谷 土橋妙子
冬の夜の星の記憶は透明な球体のなか 春の雨ふる
諏訪 松沢葉子
初めてのスノボに浮かれる息子に 「簡単に骨折するよ」口酸っぱく言う
諏訪 大野良惠
心臓の検査で移った私の背骨S字カーブが憂よんで来て
札幌 石井としえ
「なにくそ」と強さをくれる人 さくらの香りふりまいて
鳥取 小田みく
来年も飾れるように願って南天福寿の掛け軸を片付ける 一月の末
岡谷 武田幸子
声に出して読むがいい 五円で唯一売れた賢治の「雪渡り」
岡谷 金森綾子
もくれんはビロードのマントで寒さに耐え花開く時はハラリと落とす
岡谷 片倉嘉子
中央アルプス麓老舗ホテル眼下の水無き川に大中の石ぎっしりと
岡谷 三澤隆子
山折り谷折り薔薇と蝶の折紙を水入りコップに 電気不要の加湿器
岡谷 柴宮みさ子
“鬼は外”と夫“ごもっともごもっとも”と後ろから私 二人だけの豆まき
岡谷 横内静子
師の言葉学徒たるもの風邪ひくな 熱と頭痛では書物が読めない
東京 木下海龍
まもなく途中でへたり込むかもしれない犬を散歩に誘うこの犬は私
京都 毛利さち子
マヤ文明の故郷であるメキシコ・グァテマラの熱帯樹林
青谷 木村草弥
入学前の下宿探し 知らない土地でうろうろきょろきょろ
横浜 大野みのり
収入おいといて百姓楽し 空も小鳥も野菜たちもみんな友達
福知山 東山えい子
いのち(未来山脈第358号より抜粋)
- 2019年4月1日
- 会員の作品
七つの病がせまる奥の死 まだ生きていましたと明けの烏に告げる
大阪 井口文子
冬は静かだ雪も静かに降る休もうよ木も枝も佇んでいるから
木曽 古田鏡三
ふわっと澄んだあの声で病と戦っていたのか いとしや市原悦子
岡谷 唯々野とみよ
抵抗しないと流され抵抗すれば取り残される決断の前の躊躇
京都 毛利さち子
心に秘めた想念を抱えて揺らぐいくつもの夜を越えて
札幌 西沢賢造
三十分早く家を出たのにもう 凍った道に渋滞の列が伸びる
諏訪 大野良惠
蓬莱橋を渡り左手 ルネス街も駅側通路の解体を終え
青森 木村美映
「三月九日」という歌の存在を知る この日は孫(しー)くんの誕生日
諏訪 宮坂夏枝
ボランティアを立ち上げて六年目プログラムの出し物考える
岡谷 武井美紀子
昭和平成と平和が続き生かされて来た次はどんな年か
諏訪 上條富子
ときめき無いまますぎゆく日々 新短歌ができないと全く出きぬ
鳥取 小田みく
国想い吾が取った行動が家族の絆に亀裂を生む
東京 鷹倉健
しゃがんだ途端 アッイタタ 立ち上がりたくても立てない
米子 安田和子
鳥群れて木末に騒ぐ公園を掃く竹箒 一瞬のしじま
東京 高橋輝美
異次元に踏み入り戻りくるごとく師の室を出て向陽に立つ
東京 木下海龍
会社組織を運営するに部/課/係などの編成は一般的だが
藤沢 篠原哲郎
ワルツに染まったニューイャーコンサートの一夜 年の始まり
岡谷 土橋妙子
平成の次は何だろう ロボットが介護してくれる時代よ独居に来い
愛知 川瀬すみ子
そろそろ心の旅立ちの季節と思い眠れぬ夜を数えている
仙台 狩野和紀
雪解けて背くらべ始めた水仙 老いの身を励まし葉が延びる
下諏訪 藤森静代
隣家では正月で帰省したお孫さんの置土産 雪だるまにほっこり
岡谷 林朝子
平成の我が家を振り返る長男夫婦と二世帯住宅に、次男も結婚し孫五人に恵まれ
岡谷 堀内昭子
温かな粥五臓に流れる七草がゆのパワーで風邪知らず 全力投球
岡谷 伊藤久恵
エメラルドグリーンの沖縄の海 白い砂浜この自然を壊すのはなぜ?
坂城 宮原志津子
人と接する事の多いポジション任されるだけに時にカっとする事もある
仙台 田草川利晃
三歳になったおしゃべりなボク 冬らしい澄んだ空気の大晦日に生まれ
流山 佐倉玲奈
そろそろ着くころと友達を待ちわびる夫の心は中学生
岡谷 佐藤静枝
去年の秋なじみの紀伊国屋書店へ 新刊の私の生い立ち立読み購入
與島利彦
山あり谷ありで歩いた弥次喜多道中も五十年を迎える
米子 角田次代
亡父の二十七回忌 子供と孫が集まり法事をする
飯田 中田多勢子
今日の試験だけで自分の未来が決まるのか そんな不安が頭をよぎる
松本 大野みのり
ベルリンの壁が壊されているレーニンも只の人だったのか
太田原 鈴木和雄
ちらちら寒桜を見ながら坂道走ると赤信号事故りますよ
諏訪 関アツ子
太陽は今(未来山脈第357号より抜粋)
- 2019年3月1日
- 会員の作品
読んでいただけますか 歌集を作ろうと思う 名刺をそっと手渡すように
富田林 木村安夜子
葉牡丹に癒し求めるこの冬場来訪者来る玄関に置く
諏訪 伊藤泰夫
四方の山が黒々として吹雪いている とうとう里も雪舞いだした
諏訪 河西巳恵子
金剛山登頂一四八八回目という 膵臓癌の友の生きる証の年賀状
大阪 山崎輝男
締切日過ぎても歌がない 本棚の「地球の歩き方」渡航順に整理
大阪 加藤邦昭
ルノアールの絵のごとくぽっちゃりの猫の額をなでてやる日々
神戸 粟島遥
自分史で我が人生を二度生きる幸も不幸も4K画像で
北九州 大内美智子
平成三十一年正月温かな晴れた青空に恵まれた元旦
諏訪 上條富子
義母から習ったのっぺい汁はゆく年 くる年をつなぐ一品
岡谷 佐藤静枝
子供たちとの会話は素敵な時間 未来に希望や夢が見えてくる
伊那 金丸恵美子
いつも闇を抱えて生きている 漆黒の闇は描けはしないか
下諏訪 須賀まさ子
何かしないと 今出来る事 年の始めのあせりと希望を思う
鳥取 小田みく
明日は短歌〆切日 何を書こうか ペンをとりノート開ける
原 森樹ひかる
川が流れるように風が木の葉を散らすように残りの人生自然に生きよう
岡谷 林朝子
頭の半分が痛む掛かり付け医に CTを撮るが異常なく耳鼻科に紹介され
岡谷 堀内昭子
田舎の秘境ムード漂う小さな駅におりたつ ほわっと温暖な風が迎える
岡谷 伊藤久恵
夫が要介護1私が要支援1夫婦そろって木曜日にはデイサービスへ行く
飯田 中田多勢子
あれもあるこれもあると暮し家を建てた母子家庭の母の友
岡谷 武井美紀子
十二月中ばから娘から孫がはやり目になり学校を休んでいると電話がある
米子 安田和子
いつしかに新しい年に漂う 橋も渡らず扉も開けないこの身
千曲 中村征子
謹賀新年 子孫の腹帯授与寺 宝塚中山観音様へ妻同伴の参拝
大阪 與島利彦
西の山寺で鐘が鳴る大晦日一年照らした太陽に手を合わせる
諏訪 宮坂きみゑ
祖父の写真を尻においちゃった母ごめん懐かしいねご免なさい
成田 青山フライパン
夕焼け空に微笑む三日月 亡母のやさしい面影が重なってくる
下諏訪 藤森静代
蓄髪の許可が出て髪をのばすが密度がなくなったなと
仙台 田草川利晃
刻の移ろい ゆっくり流れる雲を一人ながめ熱いコーヒーをすする
辰野 里中沙衣
ヨッコラショの掛け声で立ち上がある体を動かすのが生き甲斐
諏訪 百瀬町子
友も亡く師もなく天草の農学校は閉校 島にはこどもがおらん先生お力貸して
さいたま 横田哲治
八ヶ岳蓼科雲が覆いて今にも降ってきそうな梅雨の空
茅野 平澤元子
父の入院 その足でひとり銭湯に寄る 溜まった疲れを溶かそう
諏訪 宮坂夏枝
入院手術の言葉が身近になるとは思わなかった明日は北側病棟四階
箕輪 市川光男
節分には福は内にと願うけどまずは健康と家族の協力
下諏訪 児島啓一
誰にでも愛情注ぐ父はなぜ 誰にでも優しくなれたの
原 江崎恵子
穏やかな陽射しの冬の日 新美南吉の「てぶくろを買いに」を読む
米子 笹鹿啓子
あんなに愛を語った言葉 同じ言葉で諍い そして離婚
東京 高橋輝美
へその上ぺったり貼った絆創膏 今日もまあまあに終わる機能
諏訪 藤森あゆ美
いのち(未来山脈第356号より抜粋)
- 2019年2月1日
- 会員の作品
足元にふきのとうがむくむくと暖かな冬の陽射しに誘発される
岡谷 三枝弓子
さあ窓ふきだ十九格子の戸にカメ虫はびこる殺虫剤手に目を凝らす
木曽 古田鏡三
今までは縁なき[つくば]はるばると子の出場をひと目見に来る
諏訪 藤森あゆ美
毎月の曾孫の写真カレンダー届き一途な瞳と気力が寄り添う
諏訪 関アツ子 (さらに…)
太陽はいま(未来山脈第355号より抜粋)
- 2019年1月6日
- 会員の作品
透き間だらけのこころ少し満たして今夜の空 月と土星が近づく
岡谷 三枝弓子
こころ鎮めて詩を書きつづけた何かが言うから仕方がないから
木曽 古田鏡三
出身の違いは一目でわかる 明るいシンプルな挨拶が一日のはじまり
奈良 木下忠彦
文化の日 大阪名所の御堂筋を散策 異常気象で銀杏黄葉大みだれ
大阪 與島利彦
突然義姉から 兄が死んで葬儀も終えたお詣り無用と
福知山 東山えい子
空は青く櫨の葉も赤いのになにか淋しい心これが秋なのか
太田原 鈴木和雄
ポルシェ ベンツが並ぶ一角 ながめながら通る私はママチャリです
東京 上村茗
沈む陽は部屋の奥まで照らしてる もみじ葉映る影は大きい
小浜 川嶋和雄
喜んでもらえる伝わる朗読がいちばん 単独朗読会を勧められる今
下諏訪 須賀まさ子
扇風機が欲しい フェーン現象でむし暑い台風の去ったあと(十月七日)
諏訪 宮坂夏枝
妹に似たのか甥の娘は手紙が好き 大中小の文字 点と丸しっかりつけて
岡谷 佐藤静枝
ウインド越し シルバー過ぎの暮らしをちらりと見て査定する
千住 中村千
「流れる星」を行く 満州の地に沈む真赤な太陽を記憶の底に
千曲 中村征子
父がいて母がいてまりついて遊んだ遠い日の心の暖かさ正月に思う
埼玉 山岸花江
クォークから原子へ 原子から分子へ 分子からDNAへ
青谷 木村草弥
誰もいない教室の机に向かい思いもつかない独白
札幌 西沢賢造
NYの知人から新年のメール 時差を考慮し半日待って返信する
大阪 加藤邦昭
ステージ4と宣告されて二ヵ月クリアした夫と庭のツワブキ並んで愛でる
米子 大塚典子
大草原の中の一本の白装束の人の列が続く私は今順番を待っている
箕輪 市川光男
去年落ちた山茶花の実小さな芽を出したコイツ生きている
藤井寺 近山紘
食用菊が花盛り花弁だけを酢水で茹で甘酢に漬ける赤色に染まる
飯田 中田多勢子
ぞうりがぬげて社の境内を上手に歩けない 髪結って七五三の幼子
茅野 伊東里美子
農高生の手作り蜂蜜と皮付き林檎入りアイス一押し ぴぴっと愛知
愛知 川瀬すみ子
紅葉散る照る陽の中に紅葉散る友の逝きし日二月を刻む
神戸 粟島遥
山陰から山陽を結ぶ伯備線中国山地を越えた途端に太陽がいっぱい
米子 安田和子
夜ふかしがくせになりました サッカー テニス 貴方へのメール
鳥取 小田みく
ひとことで言えば何もない町榛名山北麓の小さな山村
群馬 剣持政幸
急行列車(未来山脈第354号より抜粋)
- 2018年12月2日
- 会員の作品
七十路を越えても未だに女恋うかなしき性より妻を抱きながら
横浜 上平正一
青色の空をさらさら抜ける風 あぜ道に赤いあかい曼珠沙華
富田林 木村安夜子
八月十五日 戦争は終わったけれどペットの赤が夫の病つげ家族の戦はじまる
米子 大塚典子
十二歳過ぎた頃より息子らは面倒くさそうに私と話す
諏訪 藤森あゆ美
構内のいちばん立派な銀杏の樹 空に近い枝の先から黄色
下諏訪 中西まさこ
昭和十九年三月生まれまでの人私に初めて敬老会の招待状が来る
岡谷 武井美紀子
眼鏡を外してじいっと赤い星を見つめる 少しだけ微笑んでくれた
岡谷 横内静子
アクセルを力一杯踏み込んであの雲をつきぬけ空の彼方へ行ってみようか
岡谷 片倉嘉子
閉口した異常な暑さはどこへやら 露霜降りて初秋のとき
岡谷 武田幸子
巨人大鵬 歌姫ひばりなどなど世代を賑わした昭和は遠い日
諏訪 百瀬町子
強風に大木は響動めき荒れ狂う これでもかと天は私を苦しめる
原 桜井貴美代
黄金色の波がうまれ娘は収穫の時を迎える 輝きの季節
原 泉ののか
厚真安平むかわ美留和 みんな聞いたことがなかった地名だ
茨城 赤城恵
教会の席から送るフォト・データ“リハーサル・なう”まもなく結婚式
下諏訪 笠原真由美
私を管理監督している妻は帰省中 ゆっくりコーヒが飲める
大阪 加藤邦昭
母を送りへろへろでこの町に 家順の役それなりにやり熟す
諏訪 河西巳恵子
夜更けに一人街を行くあの事がきっとショックだったんだ
藤井寺 近山紘
君と出会い四十八年和菓子をずっと食して来た 初めて伝えるありがとう
伊那 金丸恵美子
元(株)クボタ専務のK氏が来宅されて恐縮の至り
青谷 木村草弥
もういいもういい体が焼ける いくらお日さまだとて嫌がられる
千曲 中村征子
雑木は笑う小鳥が枝に巣を掛けたとき くすくすくすと笑う
豊丘 毛涯潤
突抜ける空の青色鮮やかに 映す私も夏が消えてゆく
諏訪 大野良惠
私はなつえ娘ははるえ孫があきか 季節の名前が三世代つづく
諏訪 宮坂夏枝
竜田川からくれないのもみじ葉は 千年の昔しのぶよすがぞ
京都 岸本和子
建て替えに至る要因指折りてぼうっとしてはいられない日々
諏訪 伊藤泰夫
なにげなく使っていた電気が停電 台風の凄い風に眠れない
茅野 伊東里美子
今日はデーサービスの日 皆さんと会話に花が咲く楽しい日
岡山 廣常ひでを
花の終わるまで待とう食物も人も生きるすべは同じだから
さいたま 山岸花江
娘がくれた真っ赤なハイビスカス 回想のワイキキも夕日も燃えていた
大阪 井口文子