エッセイ
光本惠子のエッセイ
いのちと償い ~ある死刑囚と短歌~ (信濃毎日新聞より)
2018年7月から2019年3月まで、信濃毎日新聞の文化面にて連載されていた企画「いのちと償い―ある死刑囚と短歌」(計22回)に、新聞読者から多くの感想や意見が寄せられ、その内容が紙面にて紹介されました。獄中で命と罪に向き合った岡下香・元死刑囚の生き方や、彼と関わった人たちの思い、短歌や芸術の役割についての感想を中心にまとめられたものを転載いたします。
なお、連載されていた企画「いのちと償い―ある死刑囚と短歌」についても、一部当Webサイトで紹介しております。
歌評 光本恵子『口語自由律短歌の人々』評 さいかち真
- 2019年4月22日
- エッセイ
私が本格的に短歌に取り組みはじめた三十代の頃に、前川佐美雄の『植物祭』を読んで感動した覚えがある。愛唱歌が多くあって、またそれについての文章も書いた。昭和初期の短歌というと、まずあがる名前は前川佐美雄、それから石川信夫なのだろうと思う。どちらも「芸術派」と言われた系譜の歌人だ。これと並行して「プロレタリア短歌」と呼ばれた系譜の作者たちがいた。 (さらに…)
口語自由律歌の歴史と運動 - 口語自由律と現代の口語短歌 ‐
- 2019年4月1日
- エッセイ
明治になると短歌の世界にも、大きな変化が現れる。文学全般に今使っている言葉(口語)で表現しようとした言文一致運動が始まった。まず江戸時代生まれの歌人・林甕臣(みかおみ)は、明治二十一年に「東洋学芸雑誌」に「言文一致歌」を発表。
・ギラギラト。ヤブレ障子ニ。月サエテ。風ハヒウヒウ。狐キャンキャン
林甕臣「東洋学芸雑誌」 (さらに…)
ミロのヴィーナスのまえで パリのルーヴル美術館
- 2018年12月2日
- エッセイ
ルーヴル美術館は、セーヌ河の川岸にある。まずセーヌ河クルー。岸辺の石造りの建造物に圧倒される。船の中は人種の渦のように様々な肌色の人が、共にどよめきながら、対岸の城や美術館を見入っていた。行き交う船が通過するとお互いに手を振りあう。上空ではグワーンとつぎつぎ軍機がとんでくる。まあ上空も両岸も賑やかなこと。クルーを終えると、さっそく、ルーヴル美術館にとびこむ。わあっ、ここも大勢の人の列だ。美術館というよりお城のよう。解説を聞いて納得。やはりここは元は城だったという。その昔、一六八二年にフランス王ルイ十四世が、自身の王宮にベルサイユ宮殿を選び、ルーブル宮殿は美術品を置く場所とした。その後、幾たびも改修を経て、ここはルーブル館となったという。世界一、入場者の多い美術館となった。 (さらに…)