会員の作品

「未来山脈」の会員の作品です。

山や野や川(未来山脈 第307号より抜粋)

現代口語短歌誌「未来山脈」2015年1月号より会員の作品を紹介します。

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地に長く(未来山脈 第306号より抜粋)

四季の雲が四季の木の葉と疎通するその間を人生の重荷を背負い歩く

大阪 井口文子

 

台風の翌日寒くなったので衣替えの序に着ない服を東北へ送る

大田原 鈴木和雄

 

素っ裸で両手真上に伸ばし片足ポーズ 五分後服着て出勤準備

大阪 加藤邦明

 

79バイトの画像 晩年に思い出して泣くかもしれない

東京 堀江美奈子

 

出来事はじっとみつめて花になるまですわっている

下諏訪 笠原真由美

 

夢でしかないなら埋めようのない距離 危うげな一日の終わり

札幌 西沢賢造

 

年月が当時の出来事変異させそれぞれの記憶に微妙な差

諏訪 藤森あゆ美

 

共に九十四歳の老夫婦が並んで座る 幸福が座る

北九州 大内美智子

 

白の玉砂利におかれた石三つ 一坪の宇宙朝の静寂に

茨城 坂口廉

 

土にたずさわる人は何百年の歴史を踏んで冬場に少し休むだけ

木曽 古田鏡三

 

同期成会に着ていく服が決まらない季節の変わり目が女心をもて遊ぶ

米子 大塚典子

 

今頃気づいたこと 彼岸花は土手でまっすぐ直列に咲く

奈良 庄司雅昭

 

オレンジ色の夕陽が天空に映えて西山に沈んだ壮大な落日

諏訪 百瀬町子

 

巨大なブルーモスクが天を射る雨のイスタンブールの色は鮮やか

大阪 山崎輝男

 

何事も力を入れる私に力を入れない歯磨きは至難の業

米子 安田和子

 

真っ赤な彼岸花が咲き青空にうろこ雲が広がり畑の片隅の田舎道

岡谷 宮澤己代子

 

「アナと雪の女王」の大ヒット曲につられて 椅子に座るファミリー

諏訪 大野良恵

 

一人もよしと裏山の角を曲がれば熟れて待つ無数のあけびの実

岡谷 土橋妙子

 

休耕田の太陽電池パネル 農作業をする人が見えない風景

天理 坂井康子

 

牛も馬も彼草原の中にあり野付半島の風は冷たい

北見 泉忠

 

イエスタデイ 悩み事など遥か遠くにあったのに

下諏訪 中西まさこ

 

今年 僕のところにサンタが来たらこう言うよ ありがとう愛してるよ

長野 岩下宗史

 

久々に履いたショートパンツ 成長したのかお腹引込める長女

諏訪 浅野紀子

 

順番見送りのできる人生 普通であるからこそ幸せ波瀾はおこる

岡谷 武井美紀子

 

朝露に雀むらがりあそびいる一時なごむ施設の庭に

鳥取 大谷陽子

 

明日は明るく平和の陽はのぼりますだから生きられます

大阪 伊藤文市

 

豚汁を並んで貰う 味はいいが肉はない無料だからそれでもいい

茅野 こまつ極宙

 

草むらで熊と思い青年は手を叩きながら来るほっとして笑顔

諏訪 松澤久子

 

長い暗闇を通過しながら新しい駅舎に着く晩秋の冷え込み

群馬 剣持政幸

 

三連休が始まる ズシリ腕が折れつつチラシ集団

千曲 中村征子

 

パチパチと肩をたたかれふりむく 笑顔の友人がいた私もパチと一つ打つ

徳島 古川眞

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和風土(未来山脈 第305号より抜粋)

地味なシャツ着て心地よい自分に気づく蔓姫蕎麦の花群を過ぎ

京都 毛利さち子

 

幸せって 涙をいっぱい流した後に来るのかな 虹のごほうび

福知山 東山えい子

 

登りたい山脈を見上げてインドとは国というより大陸である

東京 金澤和剛

 

誰もいない広場で日時計が午後二時を指している

下諏訪 中西まさこ

 

白樺の小径を抜けると見えてくる高原の湖 一番のビューポイント

茅野 伊東里美子

 

朝から暑い職場にやる気を起こすスイカ一個の大きな魔力

諏訪 大野良恵

 

暑い日に井戸で冷やした水瓜をと出され涙と汗が噴き出す

福島 矢吹泰英

 

百合匂う面会室に来た姉と思い出ぼろぼろ語り合う

鳥取 大谷陽子

 

生わかめ茹でるに忽ち翡翠の色に磯の香たちて夕暮れ

北見 泉忠

 

西日さす机の上のえんぴつがキャップ光らせころがっている

横浜 上平正一

 

 

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交差路(未来山脈 第304号より抜粋)

ビニールハウスには爺さんの子たちトマトとうがらしが鈴なり

福知山 東山えい子

 

昔なつかしい機織の音が聞こえるここは下諏訪御田町通り

箕輪 市川光男

 

茶菓子よりおしゃべりのほうが甘そうな 庭師と夫は幼なじみ

米子 大塚典子

 

近隣の家々は明かりを落としてもてなし 淡いほたるの光の点滅

境港 永井悦子

 

笑顔の花は自分から 大人になって私は変わった

東京 堀江美菜子

 

すぐ満開になるから元気を出せと揺れる庭の百日紅

茅野 伊東里美子

 

嫁が育てた鉢植えブルーベリー 初採り三粒を孫の弁当に添えて

岡谷 三澤隆子

 

朝一番にさわやかに咲いて見せる朝顔は青と白のストライプ模様

岡谷 横内静子

 

玄関に小さな背中が並ぶ 家路を急ぐ孫たち二人

岡谷 武田幸子

 

昭和までは瑞穂の国と言った 休耕田に並び光るソーラーの違和感

諏訪 松澤久子

 

雨あがりの新緑の木曽路を 目の前の無垢の綿雲つかめそう

大阪 山崎輝男

 

白湯を入れた茶碗の縁を蟻が這っている 俺は下戸だが甘党でもない

松山 三好春冥

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和風土(未来山脈 第303号より抜粋)

見上げれば夾竹桃の白き花少女時代の私そこに立っている

及川 かずえ

 

枇杷が黄色になってきた鳥が啄んでいる口に含むと甘い

廣常 ひでを

 

父の娘でいられた幸せ 今も恩と教えを胸に感謝する日々

佐藤 静枝

 

酸素不足で湖辺へ上がってきた川エビのつかみ取りいま懐しい

藤森 静枝

 

フェンスでも金網でも蔓を伸ばして咲く朝顔の処世術

土橋 妙子

 

あっ忘れた! 飛んで行く 母が忘れ物、あっあっ!!

荒巻 あつこ

 

ひかり号に乗らずこだま号にする弱虫一人

狩野 和紀

 

あじさいの色はなぜ変わる 次女のなぜなぜに梅雨に重ねて答える

浅野 紀子

 

街路樹の花山水 そらにむかってしずかにゆれて咲く

山本 きよ子

 

夕映えの風におされて久しぶりに手長神社の階段を歩く

上条 富子

 

あなあな嬉しあな嬉し人の世の誕生を見た田植歌

宮坂 千佳代

 

雨やんだ 傘をたたむと見えたのは大空に広がる大きな虹

下沢 統馬

 

戦い抜いた十六ラウンド再審の扉は世論の前に開かれた

木村 美映

 

 

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あらかると(未来山脈 第302号より抜粋)

眠っている間は浮世の苦労を忘れる それを極楽というのか

奥村 久像

 

あなたと仲良くしていくには私が向上しないと無理

堀江 美菜子

 

ともかくは いきていこう きょうもまたいきていきます

田村ゆかり

 

桧皮葺き吉野の古家の美しさ ああいう生活はもう戻らない

庄司 雅昭

 

ライラックの甘い香りに誘われて赤い蝶々がひらひら浮かれ

宮澤己代子

 

リニアが農村を変える静かな田園を突っ切って道路ができる

片倉 嘉子

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和風土(未来山脈 第301号より抜粋)

古寺の庭に咲く杜若今はひとりで見るその紫は永久の色

大阪 井口文子

 

雪残るゴールデンウィークの乗鞍 雪より白い水芭蕉さく

岡谷 三枝弓子

 

咲くままに咲かせておけば葉牡丹が四月の午後を大あくびする

一関 貝沼正子

 

京都西山古寺巡り 散った椿に木漏れ日が射し真紅に燃えている

大阪 山崎輝男

 

嫁いだ娘が泊った夜はなぜか幸せに思ってしまう親バカ

木曽 古田鏡三

 

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あ・ら・か・る・と -会員のうた- (未来山脈第300号より)

センバツ高校野球いよいよ プレーボールのサイレン高々となる

井口 文子

 

短歌を詠む日常がある これってすごいこと ありがたいこと

大塚 典子

 

ドドーンと屋根の雪 そのたびに心臓はドキドキ春はいつくる

伊藤 久恵

 

姉妹の参観日は階段の昇降に足がつりそう往復すると結構慌しい

浅野 紀子

 

他人のことは言えるものです 自分のことを知らないものだから

高木 史郎

 

花それぞれ人それぞれ命を詩う 無理をしないで明日をまつ

山本 きよ子

 

グラスに酌をしてくれた夫のやさしさグイと飲み乾す愚痴は言うまい

金丸 恵美子

 

虫たちが土の中で騒いでいる前日降った雪のため地上に出られない

宮澤 己代子

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あ・ら・か・る・と -会員のうた- (未来山脈第299号より)

昭和42年に出会った 熱海と東京を行ったり来たりの九十歳の染友

茨城で三百年続いた藍屋さんと出会い細々と型染を県展に出す

及川 かずえ

 

冬の夜 手を伸ばすとなんでもなく届く部屋の私の居場所が温かい

鈴木 養子

 

クラブ活動や研究サークルで気心を知り付き合いつづく長い人生

宮坂 きみゑ

 

年寄りの暮らしやすい街を目指して絆を結ぶ 蝋梅の黄は満開

角田 次代

 

十五人の身の上には立ち入らず でも支え合える仲間だ

東山 えい子

 

無骨な冬の手がアイロンの重さを思い出した 伸ばせない皺もある

三好 春冥

 

つぶやきは歌で つぶやきは祈りで人に語らぬ私のツイッター

上村 茗

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交差路(未来山脈 第298号より抜粋)

裾野が広い前橋の大地に響けこの歌声 届けこの愛

群馬 剣持政幸

 

登山より草花茸の名前を調べたり栗や山菜採りに夢中になる

米子 安田和子

 

変わらぬ暮らしこそ幸せと思いつ時は流れてすでに何年か

木曽 古田鏡三

 

春を呼ぶ師走の水仙花 忙しさ労わりこごえも温かくなる

下諏訪 藤森静代

 

仏壇の掃除と花を替え草餅を供えて線香をあげてお参り

飯田 中田多勢子

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