会員の作品
「未来山脈」の会員の作品です。
急行列車(未来山脈第337号より抜粋)
- 2017年6月29日
- 会員の作品
宮崎師から貰った仙人掌真っ赤に一つ 一に口語で自由律でな と咲く
大阪 井口文子
玄関にすらりと立ったお嬢さん ワクワクしながら招き入れる
下諏訪 笠原真由美
いつもぎりぎりの綱渡り人生 幸運だけは寄り添ってくれた
諏訪 関アツ子
あと何年この空気を吸えるか 目覚めた一人の自分にきく午前三時
さいたま 山岸花江
九十で老師は逝った 意気地のない… 宮崎信義は九十六歳十ヶ月まで生きたというのに
長野 岩下元啓
残雪の八ヶ岳は遠く川辺を染める黄の花 春の水面は凪ぎ
岡谷 土橋妙子
一緒に鹿島槍に登ろうよあなたなら大丈夫 登りたい でも
奈良 木下忠彦
こんなにも痩せっぽちだったのか十代半ばフランス衿のセーラー服
諏訪 河西巳恵子
長い廊下を杖をついて娘について行くのがやっと 妻の病室へ
岡山 廣常ひでを
田圃七枚にソーラーパネル 家の前のながめは一変するだろうな
茅野 伊東里美子
爆笑しながら沢山話す この輪を大切にしたい
東京 堀江美菜子
作業もんぺ地下足袋を履きお茶菓子を持てば畑への支度が整った
飯田 中田多勢子
来賓の祝辞に間に合うようにして桜は満開に 新入生諸君おめでとう
茨城 赤木恵
自転車で慣れない知らない道をゆく 新しいスタート切った高一の息子
諏訪 大野良恵
四月五月は私にとって血沸き肉躍る季節の到来 ワラビ採りの始まり
米子 稲田寿子
夕日を着飾り春のさざなみがおしよせてくる鎌倉の浜辺
横浜 上平正一
待っても待っても天候不順 春行きの列車は遅れています
諏訪 百瀬町子
店のない集落残した閉山後 集落さえない原発事故後
札幌 石井としえ
楽しい電話かけ合った染の旧友ことわりもなく 二週間後に永遠の別れ
水戸 及川かずえ
ピンピンコロリを目指した月一回の男性の集いが始まる
米子 角田次代
トランポリン楽しそう天理駅前広場にはじける子供らの声
天理 坂井康子
底冷えの京の寒気を切り裂いて禅寺の木々 空を突き刺す
京都 岸本和子
白い小花と緑濃いつややかな葉 安曇野の清流にわさび田ゆれる
岡谷 三澤隆子
時間の使い方は自分の命の使い方 つまらなく使わないと尼僧説く
岡谷 武田幸子
色とりどりのビオラを掘り起こし持ち帰る我家に春を呼び込む花
岡谷 横内静子
五時に流れる「家路」のメロディ 仕事の区切りをつけて夕餉の支度へ
岡谷 片倉嘉子
ジャンケンゲームで脳の活性化 勝っても負けても笑い声が立つ
岡谷 金森綾子
桜の樹の下で準備体操 身を反らす度に初花一輪と見つめ合う
岡谷 柴宮みさ子
大山を望み潮の香りも五月晴れ 戸板の上で境港サーモンが跳ねる
境港 永井悦子
一年中回覧をくばり集め 神社の奉仕は朝から朝まで短歌と云えば笑われて
木曽 古田鏡三
藻の餌を撒けば食いつくあと鴨の一羽が次の餌を待つ
青森 工藤ちよ
滞在を一日のばしてアメ横のカプセルホテルのバイキングに並ぶ
青森 木村美映
大層なことほど心が震えてパーティ果てた後の膝の震えが止まらない
京都 毛利さち子
小さな緑の二葉が春を待ちかねて土を押し上げ顔を見せている少し
藤井寺 近山紘
流域(未来山脈第336号より抜粋)
- 2017年5月29日
- 会員の作品
ゆうべの雨が拵えた桜色の花道のらの黒猫が踏む
大阪 井口文子
おーい遊ぼうぜ なんだい いい声がしたからさ若い町の春
諏訪 河西巳恵子
見逃せばよかったのか歳時記の誤植 窓辺で穏やかに燃焼する
松山 三好春冥
いつまでも女児はピンクが好きじゃないランドセルには個性が光る
一関 貝沼正子
闘病を支えているようで支えられてる家族や友人 愛しさ沸き上がる
岡谷 佐藤静枝
ほほえみ始めた山並みになごり雪 車窓から向こうの山じっと眺める
下諏訪 藤森静代
いつ咲くの待たせる桜 気がもめる咲けばはかない命を知るも
諏訪 伊藤泰夫
合格合格と明るい声で孫からの電話 努力の日々を重ねて
原 桜井貴美代
林の中から木の会話が聞こえる 今日はおだやか春の陽ざし射して
原 森樹ひかる
三日月と金星が並び輝く 寒さ忘れてしばし見とれる
原 柏原とし
かるたとり 小さい頃好きでそのまま大人になってくれたらと思う読むのは簡単ではない
諏訪 浅野紀子
女同士のおしゃべりは笑いがいっぱい朗らかさ家に持ち帰る
原 泉ののか
私の周りはみんなマリモ 美しい湖に住み全てを許してくれる
東京 堀江美菜子
山脈に背をまるめたような残雪が夕日に染まってゆく
横浜 上平正一
東京からもなつかしい顔が 六十年の時の流れ感じない程つきない話
坂城 宮原志津子
陽炎のたつ土を押し上げ蕗のとう 私を呼びとめているよう
諏訪 百瀬町子
毎朝四時半起床朝食と昼の弁当を作るこれが毎日の日課
東京 鷹倉健
高齢者のみで暮らす我家 世の中が便利になればなる程不便になる
米子 安田和子
雪崩事故自然現象甘く見た訓練優先事故を招いた
下諏訪 小島啓一
雪どけの水 小鳥は何を探すのか雪の光の中 時をすごす二羽は大寒を実感して
茅野 名取千代子
宮園様 山形県のおおかねもちゆうふくなおうちにごたんじょうを
鹿沼 田村右品
友から電話 お互い前向きなのか違うのか 会話は健康とぐちばかり
東京 上村茗
遠く離れて歳月日が語り継がれるかけがえのなき日々
仙台 狩野和紀
寒いなかでも愚痴など言わず水仙のつぼみどんどん伸びて二つ三つ
岡谷 林朝子
独逸の民は逸速くベルリンの壁を廃棄し南北一体欧州の融和に
藤沢 篠原哲郎
礼状の礼状の礼状が短すぎると駄々をこねる 寂しいひと
下諏訪 中西まさこ
世間の束縛を離れ自由に飛翔したい ついてこないアタマとからだ
奈良 木下忠彦
真鶴と鍋鶴の観察終えて駅猫のぽっちゃりさんと遊ぶ日暮れ
愛知 川瀬すみ子
厳島神社 水面に映る朱の御社殿 娘と世界遺産の上に立つ
大阪 鈴木養子
桜ニュース始まると冬に逆転したり 体がどうも前のめる
奈良 庄司雅昭
二月に剪定した梅は窓辺でぬくぬくと咲き香りふりまく
諏訪 松澤久子
そこここでその面影に似た人に会う街の中明日は初七日
札幌 石井としえ
三岸節子の花の絵は笑っているのか怒っているのか 日本の歴史を
各務原 加藤昇
極楽寺のシダレ桜 幸せのシャワーで笑顔満開ごくらく極楽
米子 笹鹿啓子
急行列車(未来山脈第335号より抜粋)
- 2017年5月3日
- 会員の作品
夭折した生粋の神戸っ子と自称の夫と天井川を行く 春の夜の夢
大阪 井口文子
節分は母の誕生日 恵方巻き一本ずつ分けて鬼は追わない
松山 三好春冥
今は自分とたたかい日々を生きる 前しか行けない人間 少し頑張ろうか
東京 上村茗
姉の死の報に急ぎ故郷へ 懐かしい山々も靄の向こうに隠れて
さいたま 山岸花江
寒風に逆らって天を刺す 梅の小枝のあかい意志
岡谷 唯々野とみよ
「明日教会へ行こうよ」と従兄への電話は毎土曜日の私の日課になる
大阪 加藤邦昭
米粒ほどのチャレンジが背中を押している あしたも生きねば
富田林 木村安夜子
留学の女孫が三月三日に帰国すると電話 お雛様を飾る
諏訪 松澤久子
鏡の中の顔は誰口角を上げて不たしかな笑みを浮かべて
藤井寺 近山紘
朝六時 甘酒お茶すりりんごの食事夕方四時の腹部のCT検査に備えて
坂城 宮原志津子
両親祖父母の青壮年期は屈辱と貧困を生き延びるだけの精進だったと
藤沢 篠原哲郎
好奇心で一日を満たす私にそれが元気の源だと夫は真顔で評す
米子 大塚典子
その価値を知られることもなくただ刻まれて薪にされる古材
滋賀 岩下元啓
カーテンを開けると朝日は見えるのだから重い蒲団を身から剥ぐだけ
諏訪 藤森あゆ美
福祉と母親を卒業し足りなかった時間が今余る
北九州 大内美智子
十四名で台北山登りツアー 苦労惨憺ついに敢行
奈良 庄司雅昭
あ いるいる起き抜けの畑にまるまって草を引く十五からの友
福知山 東山えい子
たわむれに有名店を食べ歩き勝ってると思う隣の弁慶 新そば
愛知 川瀬すみ子
時の過ぎる早さカレンダー一枚捲る明日は亡夫の命日 墓参に行こう
岡谷 堀内昭子
あけない夜はない 叱咤激励自分に言い聞かせポジティブに生きよう
岡谷 林朝子
すがりつかれて振り落とす「未熟ね」とこどもに言っても無駄だから
下諏訪 中西まさこ
ガン発病から十二年目を迎える親友 神の恵みとあわれみの賜物
岡谷 佐藤静枝
いぬふぐり咲く道をウォーキング自分の体は自分でしか作れない
茅野 伊東里美子
何かしら誰かと話してみたくなる会議あった日ひぐれの窓辺
札幌 石井としえ
名も知らぬ小鳥がテラスでチチと鳴くコーヒータイムに彩りそえて
大阪 鈴木養子
早朝散歩の帰り突然女子中学生にあいさつされて気分が真っ直ぐになる
岡谷 竹村雅志
一日を大切にしようと思いつつ過ぎた時間の驚き 今年も早や3月
塩尻 小池和夫
友の訃報お父さんお母さん長生きしてと娘言う
諏訪 宮坂夏枝
春風と共に届いた園児たちの声誘われて外に出る
岡谷 百瀬豊子
敗残八年の冬 大和室生寺の山門くぐるも一人の観光客もなかった
各務原 加藤昇
空気がいい山がいい自然がいい静かに味わえることがいい
木曽 古田鏡三
桜のつぼみも喜こぶ暖かさと思えば雪が草花をすっぽりおおい縮む
岡谷 伊藤久恵
もう何も失うものとてない白いボールがはずんだ思い出
札幌 西沢賢造
あっけなく逝った人の心の在処おもえば残生の焦りしきり
諏訪 関アツ子
二月の火(未来山脈第334号より抜粋)
- 2017年3月30日
- 会員の作品
小六の息子が挑んだのは中学受験そしてもう一つ 母の病気
諏訪 藤森あゆ美
裾野が長いこの大地に吹き荒れる風は悪さばかりじゃなかった
群馬 剣持政幸
「外回りを直しませんか」と業者が何度も来る逆撫でしないように断る
岡谷 佐藤静枝
北北西を向いてほうばる巻き寿司だ 今年もいいことあると思えり
小浜 川嶋和雄
大雪で日本脱出を心配したが何とかニュージーランドへ出発できた
米子 安田和子
幾筋もある長い廊下を杖を曳いて戸惑いながら妻の病室へ
岡山 廣常ひでを
三寒四温まさにこの言葉の通りの気候がつづいている
諏訪 上條富子
節分に母と語り合う幸せのこの一刻よこのままであれ
仙台 綱尾守
腰痛に耐えて餅つき おせち料理無理するなよ 夫の声
原 桜井喜美代
八ヶ岳峰の陽が暮れなごりの青空に白い月ぽっかり今日は十五夜
原 柏原とし
真っ白な空に真っ白い冠がみえる 雪の女王はアルプスに滞在
原 泉ののか
パチパチ燃える薪の音やかんの音やさいを刻む音 冬の朝の目覚め
原 森樹ひかる
会えぬ友らの顔浮かべ今年ももうじき終わりとなる
仙台 田草川利晃
昨日スタジオで写真撮影をしてもらいたくさんいいお顔が撮れたね
東京 佐倉玲奈
朝霧高原より望む富士山は残雪に染まり神神しく身がひきしまる
岡谷 伊藤久恵
大河ドラマの主役のセリフ語尾が聞きとれず音量を上げても無理
岡谷 堀内昭子
今年は倖せの種をまこう 三日坊主にならぬよう一日一善に心がける
岡谷 林朝子
こたつにて北風ヒューヒューみる休耕地 芒ゆらゆらブルーベリーも休む
茅野 名取千代子
どの空の下でも自分が大好きな自分で生きよう
仙台 狩野和紀
声だけの長いおつき合いの老友我家まで念願かなって来てくれる
さいたま 山岸花江
九十歳身辺整理を始めたが減らすのでは無く身辺完成である
大田原 鈴木和雄
雲間より光まぶしく日射しあり背にあたたかく心潤える
岡谷 武居幸子
自由律言いたい事が先にあり内なる思い光に出そう
岡谷 宮坂夏枝
母の節高かな手 包丁持つ手 背中流す わたしもて近づいてきた
岡谷 百瀬豊子
孫自慢 髙倉健がとまらない棟梁たちの昼休み
上田 宮下久恵
夕方は風呂に入って気分一新 明日の栄気を養える
塩尻 小池和夫
階を知らすエレベーターの数字よりまだ間に合うと靴紐結ぶ
大阪 鈴木養子
コンパネやベニヤとともに積まれた古材を薪にしろと命じられる
滋賀 岩下元啓
ピピピ(オノマトペ)とことばに出すと忘れない脳も研究が進む
下諏訪 青木利子
師のいない「風の会」漸く歩いて来た道 閉ざされて
東京 及川かずえ
毎日の放課後バレーの練習は楽しみだ 引退するまであと三ケ月
松本 下沢統馬
亜細亜アフリカ未開の民の支配こそとスペイン英国などの世界戦略
藤沢 篠原哲郎
春の節目に気になる雛人形 雨水に飾ってもいいらしい
諏訪 浅野紀子
校正は砦にも似て落日の朱の色の、見よ、フリクションペン
東京 金澤和剛
柔和に仔む万治の石仏 祭りのときも地震のときも
下諏訪 光本恵子
急行列車(未来山脈第333号より抜粋)
- 2017年3月2日
- 会員の作品
とわの悔い おそかった 電話をかけたときには還らぬ人に
大阪 井口文子
頭の中で蝉が鳴く先生大丈夫でしょうかと聞いている女がいる
藤井寺 近山紘
しみじみとこの国の一人 雪ふりに東儀秀樹を聴いている
岡谷 唯々野とみよ
どんど焼が三連休に暦を失う しめ飾りが風に半回転
千曲 中村征子
初詣での空がどこまでも青い 二〇一七年の鈴をふる
富田林 木村安夜子
子供たちの運動会は親たちが強くなるフレーフレー
青森 工藤ちよ
悲喜こもごもで織った一年仕上がりは次男の婚約成立
北九州 大内美智子
おい帰るぞ〇〇さん(亡き人)が迎えに来とってやヨロヨロ夜半に
福知山 東山えい子
自動車で行ける距離を自分だと勘違いして急な坂道で喘いでいる
京都 毛利さち子
今宵も湯たんぽのアシストを受けるうれしい事に寒冷地に住む
諏訪 伊藤泰夫
振り向くと雪を被った丘の家は夕闇に静かに沈んで蒼い絵に
下諏訪 中西まさこ
「お帰り」と二人の孫をつぎつぎとハグできた二〇一六年も終る
米子 角田次代
酉年で賑わう石上神宮 神の使いの鶏たちは自由に歩き回る
天理 坂井康子
宝島社「田舎暮らしの本」に和歌入賞賞金を手にした漁師の笑顔
米子 笹鹿啓子
十一月末 何とか動いていたパソコンが全く立ちあがらなくなった
米子 安田和子
恵美子様よ 直美様のそれはとてもやさしいおかあさまなのです
鹿沼 田村右品
さえ渡る冬至の夜空オリオンを追う半分の月やがて西に
諏訪 宮坂きみゑ
年賀状を出した後に喪中ハガキが来たこの間の悪さモヤモヤ感 ああ
大阪 高木邑子
池袋西武デパートの屋上にモネの睡蓮の庭あると云う誘われてバス
水戸 及川かずえ
青森の音楽シーンは「ガラパゴス」 寺山修司の影響ですかね
青森 木村美映
遺されて三年有りし日の夫との会話恋しく脳のパニック始まる
諏訪 百瀬町子
弟 叔母 従弟 叔父 切れ目なく順不同に訃報がつづく
大阪 加藤邦昭
新聞でみた「八ヶ岳ブルー」の空 黒みがかった青は海のようだ
茅野 伊東里美子
ロータリーのベンチに坐る 私は人生に取り残された男
つくば 辻倶歓
新年おだやかな平成二十九年明けた早々に教会の礼拝
諏訪 上條富子
気を引きしめて正月気分抜け出そう 日頃の自分に戻らなくては
京都 輪笠幸来
「このうどん今迄たべた中で一番だ」と饂飩を啜る 心底共感の二人
下諏訪 須賀まさ子
おみくじが日中韓英語で書かれるこの時代これも神社の国際戦略か
大阪 山﨑輝男
心おだやかなお正月雪も雨も降らずに初日の出に手を合わす
鳥取 小田みく
晴天の正月三日 恒例の宝塚・中山観音さまを妻と初参りする
大阪 與島利彦
右手が上がらない隠居はまだ肩腱板断裂の再建を望んだ八十路前
下諏訪 藤森静代
伝承の神渡る氷上の道 凍る朝に古代のロマンを想う
岡谷 百瀬豊子
見渡すかぎり広がる空 連峰を抱き込む透明な八ヶ岳ブルー
岡谷 三枝弓子
流域(未来山脈第332号より抜粋)
- 2017年2月2日
- 会員の作品
楽したあとはそらえらいわいな 国はショート減らせと言っている
福知山 東山えい子
写真を撮るたびに輪郭が薄くなる 散髪はデートの後にしよう
松山 三好春冥
的外れの目薬さして指先は起きろと言うか寝ぼけ眼に
一関 貝沼正子
ナナカマドの赤の気迫に立ちどまる 旅行者の去った湖畔の道
下諏訪 笠原真由美
美味しい蕎麦屋をみつけた林の中の古民家風の店だ
箕輪 市川光男
うたを詠めないことを時代のせいにしてわたしを巡る月あかあかとしずか
小平 真篠未成
掛け声はファイトがよいかガンバレにしようか友は颯爽と走り抜ける
天理 坂井康子
空家の庭を彩る鈴なりの柿の木に野鳥が群れて味覚している
諏訪 松澤久子
憎らしい程度上手い人がいる 短日のゲートボール納会 名誉ある最下位
松本 金井広素
十一月の初雪早めに替えたスタッドレスタイヤでちょっと余裕な朝
諏訪 浅野紀子
リズムに乗り踊る楽しさ年を忘れリードに身を任せたい
米子 三好瞳
幼子たちが父母と遊ぶのどかな週末の諏訪湖の公園
原 森樹ひかる
高速バスで東京へ 朝日に照らされた紅葉の八ヶ岳が飛びこんでくる
原 泉ののか
今山に隠れようとする夕日をもどすかのよう 車は上り坂をゆく
原 柏原とし
人はみな生きている限り苦悩する我儘がまんと励ましてくれた母
原 桜井貴美代
泡盛の瓶に挿した白いカーネーション とおく近くあの海思い出す
富田林 木村安夜子
遠足で二百人の中学生が飛鳥の石舞台古墳上に踊る敗戦直後の風景
各務原 加藤昇
もうあかんとわと言えず「はい」孫からの「おめでとう長生きして」
愛知 川瀬すみ子
思いもよらぬ十一月の雪五四年ぶりとの事ですがやはり寒いです
鹿沼 田村ゆかり
今日がいっぱい 明日へ走らなくても昨日へ首を傾げなくたって
千曲 中村征子
ブドウパンを食べていると子供の頃のあの時を思い出した
大阪 笠原マヒト
スマイル号 友と逢えて嬉しい買物するのも助けてもらう 明日の元気は今日から始まり
茅野 名取千代子
庭の黄のバラ 最後の花がぽとりと落ちた 来年も咲いてね
岡山 廣常ひでを
「子どもは抱きしめられるために生まれてきた」とタイガーマスク
大阪 山﨑輝男
この冬は壁の緑の絵のなかで暮らしてゆこう猫になったり虫になったり
諏訪 松沢葉子
毎日つづく時間外労働 当然のようなサービス残業になっている
大阪 加藤邦昭
むすめ五歳の誕生日に念願の自転車を買うその名も『変身バイク』
東京 佐倉玲奈
読んだ後ふふふと笑顔にさせられるそんな歌集である
下諏訪 青木利子
広場のベンチでニギリメシを食う秋の雨が通り過ぎて
札幌 西沢賢造
もみじとどうだんつつじ くれないを競ってこの街を行進
岡谷 唯々野とみよ
山里の秋は淋しかろうと神は木の葉を錦に染めてくださいました
大阪 井口文子
急行列車(未来山脈第331号より抜粋)
- 2017年1月4日
- 会員の作品
あんな老体と思えど気づくわたしと一緒の同級生トランプ氏
愛知 川瀬すみ子
血管が浮いた手にハンドクリームいくら塗っても心もカサつく
諏訪 関アツ子
長丁場のドラマが終わり新しい年が明ける駆け足の一年
群馬 剣持政幸
羽根があったら飛んで行きたい十八歳で別れたままの友よ
福知山 東山えい子
電通マンの過労自殺 百時間残業に苦悩した自分を想い出す
大阪 山﨑輝男
御柱一心に曳き忘れたいこともある「好き」と一笑される
諏訪 河西巳恵子
銀杏拾い 去年は腰を屈めて 今年はひざをついて拾う
岡山 廣常ひでを
人に合わないと分からない とうとう歌会へ行くことにした
東京 堀江美菜子
亡き友を追うように妹が逝く 頑張るからねの声がこびりつく
下諏訪 藤森静代
初めてバスに乗る ご近所の方と出会いバスに乗り換えて介護体操へ
水戸 及川かずえ
さて僕も君も貴女様も今日からの歩み奈辺に向かうのでしょうか
藤沢 篠原哲郎
有名人はさわがれ 母はひっそりと百二歳の天寿を全うする
天理 坂井康子
金木犀の香り我家を満たしどこへともなく 例年の半月おくれで
岡谷 三澤隆子
ボッチャで銀メダルの彼女「脳性マヒでよかった」と堂々と言う
岡谷 武田幸子
薄化粧してデイに通いショートにも行き自宅で眠るように逝った母
岡谷 佐藤静枝
ここにはリスも熊も居ない だあれも拾わないどんぐり一杯の公園
岡谷 横内静子
紅玉の皮から真紅の色が出て刻んだ実をピンクに染めるジャム作り
岡谷 片倉嘉子
どうにもならない秋の稲刈り 泥田に機械は立往生
岡谷 金森綾子
町内を下がったり上がったり初めての里曳きつられて「ヨイサッ」
岡谷 柴宮みさ子
医者にも母のように逝きたいといわれて幸せな死にかた老衰
岡谷 武井美紀子
牛乳びんぶつかりあって自転車止まる こわい夢おわる
下諏訪 中西まさこ
うすっらい人生やったと言っていた人の事ぼんやり湯船の中で
藤井寺 近山紘
四方を運河が囲む我町を外とつなぐのは六本の橋と五つの渡船場
大阪 高木邑子
季節外れの朝顔のこぼれ種 窓辺に置いて心かよわす
諏訪 伊藤泰夫
夏から秋 毎日変わる気温にいらいらしたり 気がめいる
東京 上村 茗
初春の耳成山畝傍山天香久山大和三山なに祈るか吾の故郷橋消えて
各務原 加藤昇
山積みの問題多い女性会 部長のこの身いつまでもつか
鳥取 小田みく
生まれは渋谷育ちは大森でも江戸っ子の血は一滴もない私
東京 保坂妙子
世の中に馴染めないまま生き恥を重ねた 眠りたい消え去りたい
青森 木村美映
住職さまの穏やかに響く声がおはなし会の親子の心を温かくつつむ
米子 笹鹿啓子
新米入りの袋が廊下に並んだ我が家の一年の胃袋はひと安心
諏訪 松澤久子
女のくせにアッハッハッと豪快に笑う その笑いの清々しさ
奈良 庄司雅昭
人の役に立つ喜びを教えられた民生委員十六年半の貴重な時間
北九州 大内美智子
腕相撲することもないやわな腕水遣る花にジョウロ持ち上げる
一関 貝沼正子
貸地の契約更新と隣屋敷の買収が同時に成った 人生最後の布石
大田原 鈴木和雄
右手左手(未来山脈第330号より抜粋)
- 2016年12月4日
- 会員の作品
元旦の狼煙から始まり容赦なく過ぎた山麓に静かなひととき
群馬 剣持政幸
落ちた箱から飛び出す綿棒 何百本もの方向へ散らばる
諏訪 藤森あゆ美
蠟燭は吹き消さずおくはつあきの葡萄棚には海があふれて
青森 木村美映
太平洋戦争なる異国の史観で自国の戦史を曖昧にはしないで
藤沢 篠原哲郎
季節の移ろい 朝夕冷え込み裏山のもみじも赤く色づいて
諏訪 上條富子
東京のあれやこれやにうんざり 首都の傲りが国中を騒がせる
岡谷 唯々野とみよ
朽ち果て倒れたもみじの先に彼岸花咲く 色を添える寺の庭
岡谷 花岡カヲル
我が身より孫や亭主の秋衣料妻の目線は常に家族を
諏訪 伊藤泰夫
テレビがあったならと早死にを嘆く 土俵の向こうに亡父の顔が見える
大阪 鈴木養子
衿元にひっそりと冷気忍び来て水戸の歌友より豊水の梨
水戸 及川かずえ
雄二様 友啓様と博子様のとてもかわいいこどもですしんじつに
鹿沼 田沼右品
「ええェ七十代そんな年齢にみえないよ」の言葉に五十歳の気分の私
米子 安田和子
台風の寄り道で屋根の大修理との便り実家から
東京 狩野和紀
数台の車を止めて頭を低く罪人のように急ぐゼブラゾーン
岡谷 土橋妙子
現実に戻ればいつも沖縄、福島きれいな青空見とれていつも
札幌 石井としえ
慕う先輩を所さんの代わりに守らねばと己が試練あり
仙台 田草川利晃
長雨で伸び放題の元気な芝生 芝見失う玉 苦難のゴルフ
原 桜井貴美代
御巣鷹に今年も登る人 あの日わたしは三歳の娘と浜名湖にいた
原 江崎恵子
激しい雨で目を覚ます 私も祖母が亡くなった歳を迎えた
原 泉ののか
屋根をたたく雨 雨樋からの水音 台風の通り過ぎるを身を縮めてまつ
原 柏原都志
今日もまだ雨が続いている 庭に突如大きなキノコが出現する
原 森樹ひかる
かばんを提げて里へ帰るという妻 痴呆になっても里は忘れず
岡山 廣常ひでを
午前六時に起きると坂本さんが着替えの手伝いをしてくださる
琴浦 大谷陽子
目ぱちぱち思いがけないシチュエーション 自分の型が判る瞬間
東京 中村千
一気にたくさん歯が生えてきた男児0歳九ヶ月 上に四本下に二本
東京 佐倉玲奈
曇り空やはり降るのか雨ぽつり 雲は重たく基地暗くする
諏訪 こまつ極宙
目覚ましの朝を知らせる音が今日も夢からわたしを引き戻す
松本 下沢実乃里
四肢を欠く選手がタオルをかみしめてスタートを待つ競泳種目
神戸 粟島遥
小会社に思惑あまた蠢きてたちまちわたしは透明になる
京都 岸本和子
運動会の席とりに朝四時から並ぶ親バカ 何か変
大阪 山﨑輝男
一番目の箱を開くと次の箱も気になる 好奇心と欲望が渦を巻く
伊那 金丸恵美子
連勤の明け方 まだ白い街に銀の卵を孵すように眠る
小平 真篠未成
色ちがいの同じバッグに立ちすくむ彼女と私の自意識過剰
下諏訪 中西まさこ
遠く離れた星を探すように夫婦松をめざしのぼってゆく
下諏訪 光本恵子
太陽はいま(未来山脈第329号より抜粋)
- 2016年11月4日
- 会員の作品
子のために祈ることしか出来ぬ母は遍路となってススキ路を行く
北九州 大内美智子
忍びがいようが誰かが暗躍しようがこの道はまっすぐに伸びている
群馬 剣持政幸
みなさんで仲良く楽しくやりましょう? いやいや仮にも文学である
下諏訪 中西まさこ
夏のつかれが見える百日紅 季節が動いてトンボが行き交う
茅野 伊東里美子
年毎に払っても払っても脳天に突き刺さってくる八月の直射よ
横浜 上平正一
四百メートルリレーで銀メダル リオオリンピックから朝五時の感動
下諏訪 青木利子
あじさいの藍がきわだち雨をたっぷり含んだ花毬の生命力
諏訪 百瀬町子
台風が四つ 太平洋の島国は良い面も 悪い面も受け止めている
東京 上村茗
無理して買った五〇冊 この本はあの世でゆっくり読もうか
木曾 古田鏡三
大鷲が六斗川土手のねずみをためて小和田上空を旋回する
諏訪 宮坂きみゑ
人の明け暮れは他人様あってのお陰一人ぽっちでは生きてゆけない
藤沢 篠原哲郎
夏が行く最後の叔父が行く 記録が塗り替えられる新しい夏
千曲 中村征子
水撒きをすれば慌てる青蛙 隠れた姿また見せ逃げる
小浜 川嶋和雄
まだまだ赤ちゃんと思っていた孫が来春ピカピカの一年生なのです
鹿沼 田村ゆかり
くつ底の熱気を払って大観衆の整列のない歓声が轟くここはどこ
藤井寺 近山紘
のびあがりのびあがりして大根は山を見ている湖を見ている
岡谷 唯々野とみよ
藤村の「名も知らぬ遠き島……椰子の実」は 不朽の名歌!
大阪 與島利彦
満開の朝顔は大雨に打たれトランペットになりブルー奏でる
諏訪 松澤久子
縁側から眺める前山の木々のみどりが天を支えて沸きたつ
岡山 廣常ひでを
花オクラは畑の女王さま 黄色い花でお日様に当ると開く
飯田 中田多勢子
ずっとむかし 星祭りの日に出会い片思いして別れた人
鳥取 小田みく
七夕に願いをありったけ 最後は宝くじ当りますように
岡谷 武田幸子
「とと姉」の暮らしの手帳版が私にも ぶりてきのページの染みよ
岡谷 金森綾子
三か月ぶりに会った友は子を亡くした哀しみに一回り小さくなった
岡谷 片倉嘉子
風になびく黄金のおんべ 娘たちの木遣りに祭りが盛り上がる
諏訪 浅野紀子
保津峡を黙々歩いて二万五千歩 保津川下りの船を横目に
大阪 山﨑輝男
定期的に行っていた脳ドックで思いがけない腫瘍を発見
米子 稲田寿子
大逆転で内村航平選手の金 採点は「公平」と銀と銅の選手はきっぱり
岡谷 柴宮みさ子
両手にあふれる水で顔を洗うザブザブと 素手の感触六週間ぶり
岡谷 三澤隆子
朝から疲れを引きずって沈黙の二人 家事分担する音が聞こえる
岡谷 横内静子
風にのって遠く近く祭りの音 熱いコーヒーすすりながら聞いている
諏訪 松沢葉子
一枚のブランケットになりきれず時折混じる言葉のナイフ
青森 木村美映
山や野や川(未来山脈第328号より抜粋)
- 2016年10月4日
- 会員の作品
ちぐはぐになってしまった心と体とうとう所有者ではなくなった
諏訪 藤森あゆ美
あったかくなったなえの声が聞ける三月畑の雪も解けだした
箕輪 市川光男
一本の電話で変わらぬ政治でも思いのままにさせたくなくて
札幌 石井としえ
皆で作り上げ精一杯の演奏をする コンドルは大空へ羽ばたいた
岡谷 片倉嘉子
青紫のチェストベリーのっぽの鉄砲百合 日がな一日咲具合を見る
岡谷 柴宮みさ子
お互いに髪染のあと図らずも出会う妹と甘いコーヒー
岡谷 金森綾子
漸く手にしたチケット初めての歌舞伎に浮く心 たとえ三階席でも
岡谷 三澤隆子
頭を押し上げて眼見開き夏の大三角形を探す七夕の日
岡谷 横内静子
女声の透明なハーモニーがホールの隅々まで 背中まで震える
岡谷 武田幸子
各国の正史には何がしかの隠蔽棄却改窮が見られると
藤沢 篠原哲郎
うれしいことは朝採りの夏野菜を使ってつくる朝食づくり
坂城 宮原志津子
単身赴任の父帰り今夜はずっと傍を離れない十歳の孫娘
東京 保坂妙子
漠と海外で一旗を 夢は夢として家業を継ぐ
奈良 木下忠彦
お気に入りの花のワンピースは手でもみ洗い 十年は新品のまま
下諏訪 青木利子
俊行様よ 友啓様と博子様のめにいれてもいたくないほどのこども
鹿沼 田村右品
無意識のまま地震の後タクシーにのせた文箱には一枚の写真
水戸 及川かずえ
本棚に並んだ本のタイトルにその人柄の本質を知る
仙台 田草川利晃
炎天下必至で歩く遍路みち願うは子供の幸せひとつ
北九州 大内美智子
去年十一月二十二日朝春雄から電話「癌になった」あとは聴き取れない
東京 鷹倉健
八月のカレンダーはタイの青い海 手招きされ心はビーチへひとっとび
諏訪 大野良恵
黄鉄鉱 僕らの生きている意味の工業価値の低い輝き
東京 金澤和剛
鳩がポッポ歩いているのは赤い脚 右に左に左に右に
大阪 笠原マヒト
花の色や香りで人をひきつけるカサブランカ 自己主張が強い
米子 稲田寿子
夫婦で世界クルーズ一〇四日 船旅の感動語る友の瞳輝く
大阪 山﨑輝男
待っていた六月からの月一歌舞伎 はてさて今年は何回観れるやら
鳥取 小田みく
雑草というひと括り露草の澄みとおる青ひきぬいてゆく
諏訪 松沢葉子
近づくなスパイにされて逃げられぬ そこは任せよ人工衛星に
下諏訪 小島啓一
家を離れて十年 小さな声でただいまという静かな空間
茅野 こまつ極宙
灼熱の土の中に蝉の声が染み込んで行く 夏の或る一日古川寺にて
伊那 金丸恵美子
恋愛の免許を持たず生きてきてスピード違反の切符を切られる
青森 木村美映
ひと里離れた庵の珈琲は深く くれないの蓮の花に命のばす
諏訪 関アツ子