会員の作品
「未来山脈」の会員の作品です。
太陽はいま(未来山脈第322号より抜粋)
- 2016年4月22日
- 会員の作品
人よりも上着一枚少なくて手をつなぎながら歩く二人
諏訪 藤森あゆ美
一日の区切れとしてノートの紙きれを花びらのように注ぐ
札幌 西沢賢造
この頃は町の灯りを見てほっとする田舎暮らしの反面教師
愛知 川瀬すみ子
雑草のような恋でした 堀の隙間で詠み人知らず
小平 真篠未成
雪のないお正月 過ごし良いが秀峰泰山の雪景色の無いのはさびしい
米子 笹鹿啓子
石叩きが氷をたたいていつものリズムをこわしてしまった
横浜 上平正一
何かしら涙があふれて天井見ていたら 頑張っているね笑顔で母が
福知山 東山えい子
晩酌の量過ぎたればうたた寝の歌よみ浪人老の自画像
豊丘 毛涯潤
過去とは何だろう苦しみなのか自棄なのか心に聞いてみる
木曾 古田鏡三
夜八時 宴会場から五分のわが家に夫が帰らない 道に迷ったのだ
飯田 中田多勢子
あの笑顔は二度と戻ってはこない
東京 狩野和紀
介護予防体操の会場 若大アカデミー四十分かかる
水戸 及川かずえ
このまま歩けなくなったらどうしよう 大丈夫私が居るからと妻
箕輪 市川光男
誘われて友人の家へ 百号の油絵の大作に取り組む友の頑張りに声を失う
さいたま 山岸花江
愛だってどかっと来たら困るよね 重い雪に四苦八苦
岡谷 唯々野とみよ
妹の愛洗結婚式その娘二人の幼児洗礼そして私の夫の葬儀もあった
東京 保坂妙子
雪を被った山におぼろ月が浮かぶ 春は遠くて近くに息吹き惑わす
伊那 金丸恵美子
スマホ片手に自転車に乗る若者とニアミス転んで強かに背中を打つ
岡谷 佐藤静枝
パッチワークのように作るお手玉 縫いながら頭の中は母でいっぱい
茅野 伊東里美子
塩嶺おろしかビル風か 病院の正面に冷たい風が吹きすさぶ
岡谷 片倉嘉子
桃紅色の小鳥が藪にちらちら 遠目でもわくわくするオオマシコ
岡谷 柴宮みさ子
ずっとずっと待っていた金の成る木の天辺に淡いピンクの花ひとつ
岡谷 金森綾子
四年ぶり日本で正月の息子らに伝統おせちを手作りしてやりたい
岡谷 三澤隆子
張りつめた糸がプツンと切れた それを手繰り寄せてそっと結ぶ
岡谷 横内静子
元旦に盆栽の梅二輪咲く暖冬にすなおに誘われて
岡谷 武田幸子
長引く断水ふり続く雪 心身衰え独居の淋しさ知る
米子 永井悦子
初雪に児らの声はなく振り積もる雪 眺めるは寡黙な老ふたり
下諏訪 藤森静代
朝日浴び煌めく霧氷の中をゆくきれい以外の言葉を忘れて
北九州 大内美智子
意地悪なあなたの手口共犯になれずに振れるわがポリグラフ
青森 木村美映
天竜の川べりに集う鴨の群れ 中央に白サギ一羽凛と立つ
岡谷 花岡カヲル
縁側のゼラニュウム咲き次ぐ真っ赤な花寒さに耐えて
岡山 廣常ひでを
インコのピーちゃん 初産は失敗 卵は一個も孵化せずかわいそう
米子 稲田寿子
みんみん蝉のふたつなく屋敷林のある旧家 十年前そして今日
川越 梅澤鳳舞
解禁だ 渓流釣りがまた出来る 今年は何匹釣れるかな
松本 下沢統馬
男前の顔だけど笑うとかわいいと言われ今日もニコニコしている
東京 堀江美菜子
温暖化に三年連続御紙渡は期待はずれ「明の湖」とは如何
岡谷 今井正文
情熱を持ってのり切る事が出来るか最後の決断に胸がいたむ
岡谷 三枝弓子
ドンと冷気の塊が落ちてきた 日和見主義者のくしゃみが凍る
松山 三好春冥
右手左手(未来山脈第321号より抜粋)
- 2016年3月20日
- 会員の作品
誰かが押してくれている引っ張ってくれている 予想外の良いこと続き
下諏訪 須賀まさ子
近所の手作りパン屋さん 通る度芳ばしい香りが鼻をくすぐる
岡谷 花岡カヲル
現世ではもだえ苦しんで あの世でもそうだろうか この救えない魂は
東京 上村茗
あかつきのひるまぬ五年余り日本初 金星探査機惑星となる
諏訪 伊藤泰夫
一年間苦楽を共にマイ手帳分身のごと秘書のごとくに
北九州 大内美智子
全国的な暖冬師走の東北で赤トンボ飛び交う
東京 鷹倉健
立冬を過ぎ東京夏日 予報士殿上着をつけたいですよネ
千曲 中村征子
護国寺と毘沙門天に初参り新年の空は青く高く澄んでいる
水戸 及川かずえ
ぎこちない会話のあとのエレクトは素直になれた証しだろうか
青森 木村美映
日本の秋に良く似合う柿 富有柿 御所柿
琴浦 大谷陽子
碧々と波うつ諏訪の湖 白鳥の姿なく鴨の群れは岸辺で餌を啄む
岡谷 山田治子
鍬胼胝や鎌胼胝の節くれた手は愛しいこの手と生きた年月
諏訪 百瀬町子
苔待たず枯落ち葉に落ち椿 エルニーニョ現象
天理 坂井康子
ざくざく刻んでざくざく混ぜて野沢菜漬けを目立ち過ぎる鷹の爪
岡谷 金森綾子
さつま汁会 園児の手に吾が手を重ね大根のいちょう切り慎重に
岡谷 三澤隆子
山間の急坂半ばで息を継ぐ 日々暮らす人はそぞどんなにか
岡谷 柴宮みさ子
スルリと腕より失せた時計 まわり廻って届いた新宿バスターミナル
岡谷 横内静子
飛行機で三時間 地図上ではわからぬ小さな久米島に降り立つ
岡谷 武田幸子
命はめぐり母の亡き後三十日 曾孫の拓君が誕生する
岡谷 片倉嘉子
部屋の壁冷えまさり来て目覚めれば夜半の窓辺は雪あかりする
仙台 田草川利晃
真っ黒なカラスが飛び立つ姿 不吉なようなそうでないような
大阪 笠原マヒト
小さすぎるのも心配だけど大きすぎるのもね 子育てに奮闘
神戸 佐倉玲子
久々の陽ざしの中で窓辺に映る雀の姿
鳥取 小田みく
鹿沼さつきマラソンにも挑戦 そんな元気だった身体に何がおきた
鹿沼 田沼ゆかり
飛騨川の吊橋の白川橋は土木遺産ゆえそろりそろりと揺れる床しさ
各務原 加藤昇
宇宙がいくつもありお互い押し引き合い変動する
東京 中村千
暖冬に慣れた山陰地方 予想外の低温に独居では辛くのしかかる
米子 永井悦子
「失踪セヨ」と不意にささやく声がしてこの谷には僕しかいないのに
東京 金澤和剛
見渡せる諏訪の湖水の遠い空に霞んで富士の雪姿見る
岡谷 今井正文
昔の教会を覚えている人に記事を書くように依頼された九十三歳の私に
東京 保坂妙子
窓ガラス越しの光が部屋の奥まで差し込む ここまでおいで春
下諏訪 青木利子
消えてしまいそうな生きることの祈りのようなほのかな充実
札幌 西沢賢造
一つから身ふたつになって 舞い降りた天使の子
下諏訪 光本恵子
太陽はいま(未来山脈第320号より抜粋)
- 2016年2月26日
- 会員の作品
体重計に乗ってみる小春日和 怠惰な夏と徒食の秋が長かった
松山 三好春冥
あべのハルカスからの夜景キラメク中四天王寺の境内は闇
大阪 井口文子
行進の最後ゆく女子九年間還暦過ぎてのっぽも縮む
一関 貝沼正子
うたの心にふれたくて学びたくて四年遅れて夜間高校へ
福知山 東山えい子
忘れた頃に友の声届き長電話に鍋こがす
天理 坂井康子
あかあおきいろ脱ぎ捨てた裸木に守り柿ひとつ 木枯らしを待つ
岡谷 伊藤久恵
散り残る楓と落葉松の黄葉を湖面に影のように映す 箕輪もみじ湖
岡谷 堀内昭子
晩秋の山肌を染める唐松や楓も色づき夕日に映えていっそう輝く
岡谷 林朝子
花梨の砂糖煮を作る 今年も虫糞だらけで芯まで食っている
飯田 中田多勢子
雨が降って嬉しい雨が降らなくて悲しい 百姓は弄ばれて
木曾 古田鏡三
裏門を出れば公孫樹の並木道 ようやく色づき黄金の街
水戸 及川かずえ
起きぬけに庭に立つと山茶花が雨に打たれて白く散り敷いている
岡山 廣常ひでを
こんなもの簡単だよと高括る自惚れこそが転落招く
仙台 田草川利晃
友との会話が楽しくなった補聴器 小さな器具が世を広くする
大阪 鈴木養子
やっと足の爪に鋏がはいる 痛痒のない枯枝切断
千曲 中村征子
南に向かう蝶の薄黄斑がわが家の藤袴に気付いてくれたこの奇跡
岡谷 柴宮みさ子
姪の結婚式は東京のビル二十七階 雨天でも会場の中は華やぐ
岡谷 横内静子
はるか眼下に広がる街のきらめき 高台に佇む宿は静かに暮れて
岡谷 三澤隆子
風邪の見舞いにガーベラ一本私に五歳のやさしさはほんのりピンク色
岡谷 武田幸子
病院から家に帰った母は存在しないかのような体の薄さに
岡谷 片倉嘉子
通りすがりに目にしたハロウィンの南瓜 渋柿ひとつを似せてみる
岡谷 金森綾子
急に冬が来ましたね 男体山も 白く模様替えをしてきました北に
鹿沼 田村ゆかり
どこを見てもわたし 大勢のわたしの叫び とうめいな空
小平 真條未成
飲めぬ否定はおいてポージョレヌーボーのロゼ冷蔵庫に眠らす
岡谷 土橋妙子
六十五万七千時間を生きてきた 宝石のようなときはあったか
岡谷 唯々野とみよ
想いを閉じ込めて年を重ねていってしまうのか六十一歳の私
鳥取 小田みく
踊りは藤桜会あやめの会文化祭おさらい会と一年に四回は参加する
岡谷 武井美紀子
今朝の霜はすごかったあとどれ位の命とバラも身震いしたろう
茅野 伊東里美子
ボケたくないと言い続けた故母 最期までわがままを貫く
下諏訪 青木利子
電車に乗るバスに乗るスマホの行列ばかり 個人個人自由だからね 静かでいい
茅野 名取千代子
焼きたてアップルパイから薫るシナモン異国で見た夕焼け懐かしい
京都 毛利さち子
ネクタイ締めて背広姿の男の人を美しいとおもう
琴浦 大谷陽子
昨年と同じ反省 去年も今年もお見渡り無し
諏訪 宮坂千佳代
諏訪に帰って 散歩に行ったり足湯に行ったり自然を満喫
神戸 佐倉玲子
体から異臭を吐き出す 今日からうまくいくような気がする
東京 中村千
渦巻くように年が過ぎる 一つの輪で括れない一年が終わりまた始まる
伊那 金丸恵美子
宗教には立派な仏像も伽藍も権威もいらない仏性だけが有れば良い
大田原 鈴木和雄
山や野や川(未来山脈第319号より抜粋)
- 2016年1月16日
- 会員の作品
嬉しいのか辛いのかわからない今でも逝ったあなたと夢で連れ立つ
京都 毛利さち子
ズラリと並んだ道具にぞっこん 木工職人にもちょいと惚れ
岡谷 唯々野とみよ
私の目の前で餌をついばむ小鳥ふり上げた鍬がおろせない
箕輪 市川光男
辻々に立ち会場の案内をしてくれる医学生の肩に秋の陽が走る
大阪 鈴木養子
山の稜線に大きな秋月が輝く ガラス戸に映る私の姿は月うさぎ
伊那 金丸恵美子
隣家は壁いっぱいに二段の柿すだれ 私は五連をそっと吊るす
岡谷 花岡カヲル
柿一つ残せば木守り願うだけ それでも狙うカラスは一羽
小浜 川嶋和雄
花嫁修業の稽古花から六十年 体力の衰えにいけ花の潮時を考える
下諏訪 藤森静代
日本百名山蓼科山に登る 今日からは山ガール
下諏訪 青木利子
夕風に吹き飛ばされた枯葉たち お宮の隅で噂話をしているらし
横浜 上平正一
低空の編隊飛行ゴーっと響く 頭上を過ぎる身体が反る
茅野 こまつ極宙
流れ星を見ようと午前三時 北から南と南から北へ飛行機の点滅
諏訪 松澤久子
青草の牧場のかなたへ仔羊が迷い出て行き少年は走る
下諏訪 中西まさ子
ニホン晴 あべのハルカス展望台から俯瞰 デコボコ建物の大都会
大阪 與島利彦
今日もまた しっかり朝食を家族で食し 子を見送り 出勤準備を
鹿沼 田村ゆかり
髪を切ったらほめられた のぼせ上がったのが今は恥ずかしい
東京 堀江美菜子
ゆめとKIBOUは捨てちゃだめ天皇賞はカスリもしなかったけど
東京 鷹倉 健
四季をそれぞれに喜び八十四歳悲しみをたえ今言葉なく幸せ
諏訪 宮坂きみゑ
息子からユニークな化粧と衣装を着た孫の写メールに思わず吹き出す
米子 角田次代
うお魚分ける隔てがまな板と 知恵を授けて文学者がいる
諏訪 伊藤泰夫
諏訪湖畔の桜の紅葉は見事 雨後の舞い散る木の葉に立ち止まる
岡谷 宮澤己代子
雪のようにハラハラパラパラと松葉ひととき降りやまない
茅野 伊東里美子
庭に立てば山茶花が白く花をこぼし柊の花が匂う
岡山 廣常ひでを
右手小指を骨折した息子の横顔 帰り道は二人のため息だけ
諏訪 大野良恵
ぽちゃぽちゃでにっこり笑う顔を思い出す度いとしくて抱きたい孫
岡谷 武井美紀子
佐保川の草刈りも機械化 仕上がり綺麗でススキは消えた
奈良 庄司雅昭
掃き寄せる落葉の中に鎌をかまえて脅す蟷螂 秋色に体を染めて
岡谷 土橋妙子
秋の日の短いひととき 春秋と二度咲く四季桜 楚々と季節を楽しむ
岡谷 林朝子
太陽はいま(未来山脈第318号より抜粋)
- 2015年12月16日
- 会員の作品
マナーモード解除するの忘れた携帯に耳を案じるメールが届く
諏訪 関アツ子
日曜の夜は冷蔵庫の肉に葱、糸こん、豆腐、舞茸でスキヤキを作る
大田原 鈴木和雄
威風堂々とまっすぐに伸びる木にも何があったのか こぶこぶ
米子 笹鹿啓子
ていねいに右折していく教習車に失ったものが見えた気がして
下諏訪 笠原真由美
九月も半ば蜩の声が悲しげに秋の気配を連れて耳元を掠めてゆく
藤井寺 近山紘
母親という国家資格があるならばそのテキストを学びたい
諏訪 藤森あゆ美
道ばたに群れて咲くコスモス 大風が吹いてもしなやかにゆれている
米子 稲田寿子
にぎやかな子どもの声消えて高齢者増えて町内老いていく四十年の歳月
天理 坂井康子
提出日近くになれば短歌詠む 山を見ている庭にたたずむ
小浜 川嶋和雄
喪中のはがきクリスチャンでも出すのかと聞く妹の娘
東京 保坂妙子
東の山の端に赤く大きな中秋の名月 一瞬不思議な世界へ引き込む
岡谷 花岡カヲル
地元の人に喜んでもらえたらが貴方の口ぐせ いつももうけ無しで
鳥取 小田みく
何がどうあろうと明日も土と草との戦い安保法ではなくて
木曾 古田鏡三
いつもお着物姿 茶道の先生と思い二度も夢見た
水戸 及川かずえ
看取り師という職 納棺師の職 かかわり歩む現代社会
諏訪 伊藤泰夫
赤あかと燃えた彼岸花はさみしそうに見えても心がなごむ
諏訪 松澤久子
木の間がくれた見える小さな空のくもの巣を風がそっとゆする朝
さいたま 山岸花江
風に吹かれた枯葉が肩を寄せあいひそひそと話をしている
横浜 上平正一
ゆうびんきょくいんさん ふるさとはとってもすみよいところ
鹿沼 田村右品
さして広くはないけれど我が家の下に広がる田畑に若者が来た
福知山 東山えい子
布団を干す手もうきうきとして東京の友があした泊りにくる
岡谷 佐藤静枝
草原に集まった高原の花たちやさしい音色で秋を奏でる
原 渋谷時子
月あかり枯葉ひらり湯の中へ ほっこりあたたか露天風呂
原 桜井貴美代
幼子の写真を胸ポケットに入れていたと聞く父の思い出はあたたかい
原 泉ののか
山ゆりききょうおみなえし夏草の中を泳ぐ花に向かって盆花とりの子
原 中村としゑ
凡夫の身内政治ではなくヤンキーでさえキューバと語らう世界への道へ
藤沢 篠原哲郎
高台から仰ぎ見るスーパームーン 湖や街の灯りも明るい光の中
岡谷 山田治子
三択のクイズの答え理由なく気分で選ぶ今日のテンション
一関 貝沼正子
草色のカマキリと目が遭うベランダとろとろと暖かい秋だ
富田林 木村安夜子
一年の月日の流れが早すぎてとめたい思い 十月紅葉の季節
諏訪 上條富子
長女が帰省炊事はお任せ南瓜煮ても一味違う
岡山 廣常ひでを
年取るとは不自由になる老人を見慣れている看護師は簡単に言う
諏訪 河西巳恵子
大山の紅葉も終わっただろうか 南壁の新雪の美しさは忘れがたい
琴浦 大谷陽子
静寂の体育館に合唱と合奏が響く小学生の音色
諏訪 浅野紀子
木の梢雨のしずくの形して花梨が残る虫住まわせて
札幌 石井としえ
吹く風に身を押されつつあでやかに光る楓の木の下をゆく
青森 工藤ちよ
巡る季節にわが身を重ねる 暑さ寒さに苦楽をのりこえて
米子 永井悦子
なりたい自分になるためにとるにたりない悲しみを払う
札幌 西沢賢造
人は老いて有終の美を飾れるか カラスも知らない姥捨て山がある
松山 三好春冥
太陽はいま(未来山脈第317号より抜粋)
- 2015年11月16日
- 会員の作品
レジ袋の底に鮭の切り身ふたつ 怪しげな影法師がついてくる
松山 三好春冥
お手上げの格好に眠る熱帯夜夢の林でみんみん蝉鳴く
一関 貝沼正子
悲しみから目をそらさないように生きていきたい八月の午後
東京 堀江美菜子
六年生から受験の女学校おかっぱ時代の友故郷に今は二人だけ
水戸 及川かずえ
昨日採らなかったオクラ大きく生り過ぎ筋ばかり早い成長
岡山 廣常ひでを
子ども神輿を囲んで玉箱がタンタン太鼓がドンドン懐かしい音
飯田 中田多勢子
春夏秋冬さくら花火もみじ銀と雪はかなく跡形もなく消えゆく美しさ
米子 笹鹿啓子
ハクチョウソウのかすかな揺れに風を感じる盆の朝ぼらけ
岡谷 柴宮みさ子
庭先の暗やみに広がる花火の歓声 三年ぶりに戻った盆の賑い
岡谷 三澤隆子
西空から発光を放って進むすすむ宇宙ステーション月光に照らされて
岡谷 横内静子
「ずく無しの節句働き」と姑は言った 盆のかたづけ大掃除
岡谷 武田幸子
稲田に咲き出す白い花は草の花 好きよとは言えなくて
岡谷 金森綾子
やっと解けたと思ったらまた降り積もる雪空には重たそうな黒い雲
箕輪 市川光男
小柄な選手のプロフィールには一八一センチ 小さく見えただけ
茅野 こまつ極宙
そろってお盆の墓参り 夏雲を追いのけるように頭上にうろこ雲
茅野 伊東里美子
ためらいの卵をそっとあたためる夢を見ていた歌会の帰り
青森 木村美映
今夜はペルセウス座 流れ星と共に迷わずにと迎え火焚く八月十三日
岡谷 堀内昭子
短かった盆に送り火を焚く 残り火に秋風が通りすぎ一抹の思い
岡谷 伊藤久恵
神社の大欅は蝉ひきつれて空を割り涼をおろす
岡谷 唯々野とみよ