会員の作品

「未来山脈」の会員の作品です。

交差路(未来山脈 第296号より抜粋) 

孫は鼻水たらしながら元気に遊ぶ 置き土産は風邪
長野 春日 歩

一夜にして枯れ木に雪の花 晩秋の雪景色に見とれ車中は和やか
下諏訪 藤森 静代

野良仕事を早々に切り上げて諏訪湖の足湯 きらめく波に時間を忘れる
伊那 市川 光男

朝霧に野山も里もすっぽり包まれて自動車のライトの光も灰色に
茅野 平澤 元子

隙を見て襲いかかる藪蚊なり やせっぽちよりでぶが旨いぞ
岡山 川上 博 (さらに…)

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あ・ら・か・る・と(未来山脈 第295号より) 

家じゅうに朝靄のような新米の香り一年の辛苦を味わう

松澤 久子

東京がオリンピック決定の朝 その頃俺はもう居ないかな

山田 治子

走り去る十一歳の息子の背中 遠くなるほど大人に見えて

藤森 あゆ美

ひとり暮らし交歓会も十二回目 見えなくなった顔新しい顔

大内 美智子

妻は八十六歳で私を残してあの世に行った耐えるよりない空しい一人

伊藤 文市

朝の陽ざしに糸トンボが障子に騒ぐあら一夜をともにしたのね

関 アツ子

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あ・ら・か・る・と(未来山脈 タイ294号より)

錆びた線路が草むらに消える駅の片隅青い郵便車が待っている

三好春冥

 

徴兵の板門店警備二年間 夜間の緊張

語る韓国の友

山崎輝男

 

手の平を合わす形にひっそりとおがみ蟷螂上がりかまちに

押谷盛利

 

劇薬は赤い血の色涙色 効くか効かぬか吾だけは効いておくれ

川上博

 

真っすぐに入れた菜切り包丁 心のうごきが大根のゆがみとなって

近山鉱

 

薄暗い木の下にひざ突いて蚊を追いながら銀杏を拾う

廣常秀雄

 

宇宙は薄皮をはがすようにあかされる

おのれのことは未知のまま

木下忠彦

 

JR福知山線の大惨事トップは無罪許せない庶民感情は

與島利彦

 

風の吹くまま枯れ葉がころがる細い道

こんな人生もあるか

木村安夜子

 

命がけで作った米が売れない福島の農民の痛みをとつとつと話す夫

東山えい子

 

諦めの境地で長湯に浸かるとほぐれてゆく積み上げた来歴の嵩

毛利さち子

 

風を切り紫陽花咲く道 学生らの銀輪が行く一列になり

大内美智子

 

コスモス咲き乱れる古里はデコボコ道を歩いてきた兄の心の安らぎ

吉田桂子

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あ・ら・か・る・と(未来山脈 第293号より) 

萩に露を宿して水面を飛翔するサギ草濁世の夜明け

金井 宏素

 

すいと来てつうと飛びゆくあなた 背中の赤が「秋」の字を書く

坂口 廉

 

二時四八分を指して止まったままの時計 校舎はがらんどうに

宮原 志津子

 

神様からの休養時間よと人はいうけれど何だか落ち込んでゆく

佐藤 静枝

 

草刈機で畑の中の草を刈る 今まではなんとか自分でとっていたのに

中田 多勢子

 

猫背修正して気持よくカッコよく歩くこと数分 すぐ元に戻る

笹鹿 啓子

 

案山子は名指揮者 穂をつけた稲田に立って初秋の風をあやつる

土橋 妙子

 

切り開いた先祖の思いを断って山の畑荒れてたたずむ

唯々野 とみよ

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