会員の作品
「未来山脈」の会員の作品です。
太陽はいま(未来山脈2023年4月号より抜粋)
- 2023年4月1日
- 会員の作品
縦 確認、横 確認、斜めよし さあオセロの駒返す瞬間
諏訪 河西巳恵子
寂しいネ話の出来ない日もあると一人暮らしの要介護4の世界
藤井寺 近山紘
深夜の静寂を駆け上がる足音 夫は動揺隠さず母親の死を告げる
諏訪 大野良恵
おもくゆるく白鳥の影過ぎりゆく夕暮の橋渡る頭上を
一関 貝沼正子
せっかく浮かんだ短歌が思い出せない頭のどこかに有るはずだが
市川光男
「わっ爺さんだ」「わっ婆さんだ」視野の中には夫だけ
鳥取 角田次代
ライオンハートの王と呼ばれたリチャードを幽した城 今は廃墟に
下諏訪 中西まさこ
おいでなすったか猿 ハウスへ入ると椎茸を食べ散らした跡
福知山 東山えい子
〈まっとうに生きているだけ〉で生きている意味が有る それを信じて
つくば 辻倶歓
久し振りに娘一家が来宅夫の背を越した孫は顔にはニキビが出て
米子 安田和子
電飾を外した並木を撫でてゆく瀬戸の潮風師走の光
福山 杉原真理子
「今年は南天の実の付きいいね」と夫 私は枝を透かせる
岡谷 横内静子
茜色の雲を背に富士山ずっしりと 仰ぎ見る夕映え
岡谷 三澤隆子
山の端の雲が銀白色に輝きまわりを熱くして初日昇る
岡谷 片倉嘉子
四年に一度の洗礼を満開の桜は何を思ったか狂い咲く
群馬 剣持政幸
大雪がもたらした珍風景 コーヒーすすり眺めるだけの老ふたり
下諏訪 藤森静代
よろよろと歩道をわたる幼へび冬眠わすれたか師走の雨に
横浜 上平正一
きれいな生き方ってどんなだろう 寒風に視られて想う
富田林 木村安夜子
ひとり増え孫中心の正月は久し振りの我が家の“おめでとう”
北九州 大内美智子
下火になりつつあるコロナ 日常生活への期待がふくらむ
諏訪 増田ときえ
あの朝何を思って目覚めたか 何のための目覚めか 夜になり道を歩いてみた
岡谷 渡辺昌太
今年が最後という賀状が増えた 時代の流れ化疎遠になるな
大阪 山崎輝男
八十路になって一人きりの新年 孤独に負けるなと宙の声
奈良 木下忠彦
日陰に残るクリスマス寒波の根雪 しっとり降る小寒の雨にとける
岡谷 三枝弓子
「皆既月食」「天王星食」神秘的な赤銅色の月がぽっかりと秋の夜半
伊那 金丸恵美子
今朝は零下十度諏訪湖は全面結氷 郷人は御神渡りを期待する(一月二十日)
岡谷 花岡カヲル
もう二月か の後にまだ何もやってないと続き さあどうする私
愛知 川瀬すみ子
小屋暮らしをする人のユーチューブ 自分にも出来そうだな
山梨 岩下善敬
世界中を歩いた夫と私 紺碧のジブラルタル海岸でカンツョーネを唄う
諏訪 宮坂きみゑ
木立の中を汽車が少し見えてくる 旅立つ姉が窓から手を
木曽 吉田鏡三
いのち(未来山脈2023年3月号より抜粋)
- 2023年3月1日
- 会員の作品
夢がいっぱい詰まった顔の女子マネが高校時代の娘とだぶる
米子 大塚典子
急な坂道乗り越えて新しい道を駆け上がるランナーそこに私もいる
群馬 剣持政幸
太陽にそっと伝えた新年の夢 いのちある内に自分史練る
福知山 東山えい子
ピアノ教室に通ってまだ一年 無謀にもピアノコンサートに参加する
大阪 加藤邦昭
赤銅色の月が暗闇に希望という光を放つ 徐々に徐々に
岡谷 三枝弓子
まぼろしのごとく無音で雪は降り悔恨として地につもりゆく
下諏訪 笠原真由美
正月も三日になって窓見れば こぼした砂糖か屋根には雪が
小浜 川嶋和雄
年賀状卒業宣言あの人はお元気でしょうか風がささやく
大阪 花菜菜菜
言葉を吐いて紡ぐ短歌 今日も生きてるって自分に言う
富田林 木村安夜子
殉教のヤコブは七日後ガリシアに流れ着いたと星のお告げは
青森 木村美映
小さくなった父の背に 親不孝ばかりと娘のひとりごと
鳥取 小田みく
常緑樹と紅葉のコラボで山頂から見る下界はまるで絵の様
米子 安田和子
トースター音たててパン焼く匂いする今朝も我が家の生活リズムを刻む
静岡 鈴木那智
年末年始に一週間こもるこの機にぜひとも断捨離やってみたい
牛久 南村かおり
赤いトタン屋根のましろな霜が朝陽に輝き出す瞬間がすき
岡谷 片倉嘉子
中央道から見る富士の形状 きっと神様が造ったんだ
岡谷 横内静子
蜂蜜に似た匂いふっと思わず立ち止まる カーポートには柊の花
岡谷 三澤隆子
たそがれの諏訪湖畔に立つ女高生 瞳は湖の光を返す
さいたま 清水哲
暮れ近く詩吟の大先輩K氏から「畑で取れた」と大きな長芋届く
岡谷 花岡カヲル
遠方の施設を結ぶズーム音楽会 これが今風コンサート
大阪 山崎輝男
しおまち商店街を歩けば昭和の匂い 時の流れが心地よい
福山 杉原真理子
寒さもいよいよ容赦なく染み込んでくる裏起毛の肌着が恋しく
藤井寺 近山紘
いよいよ推しに会える日 まるで遠足前日の子供のような私
流山 佐倉玲奈
銀色の三角が連なって風になびくよ荒れ地で枯れた泡立草の群れ
京都 毛利さち子
素足(未来山脈2023年2月号より抜粋)
- 2023年2月1日
- 会員の作品
高層ビルの谷間に迷う 港への道を見つけて風が抜けた
松山 三好春冥
思い出の一コマとして一人食む新幹線に鮭のおにぎり
一関 貝沼正子
秋冷にひとりと思うとき秋明菊の白に心あたたまる
米子 大塚典子
諏訪の景勝地に建つ光本師の歌碑 さざ波きらきら夕陽が照らす
下諏訪 藤森静代
抱き上げてくれた記憶をひきずって手のひらと星 手のひらと星
北海道 吉田匡希
介護真最中の従姉妹は自分のためにごほうび旅行したいと沖縄へ
岡谷 佐藤静枝
霜降りぬ間に秋仕舞い 青いトマトはピクルスにしよう
岡谷 三澤隆子
何かを置いてきたようで馴染めない 色付き始めた街路樹の道
岡谷 片倉嘉子
絵地図で諏訪社寺宮寺の位置を確かめ当時に思いを馳せる
岡谷 横内静子
ほのかに柑橘の香る宿 今宵わたしをいやしてくれる
諏訪 宮坂夏枝
ありそうでなかった「上毛かるた」のあれこれ絵札で読み解く七十五年
群馬 剣持政幸
食べたいものがある舌を飼っているのよ私はね欲張りさんのお姉さん
岡谷 今井菜々美
貧しさと夢だけの夫との昔蘇る重く流れる神田川歌う南こうせつ
四條畷 高木邑子
蜂蜜療法はハート型のピカマチスとの相乗効果で効き目百倍
さいたま 清水哲
夢にまで顕ちくる母よ慈母観音あなたがいますあの天の川
明石 池たけし
干し大根の季節がやってきた手作りの大根を持ってくれる友がいる
米子 稲田寿子
コスモス畑に迷い出て 母の手をひき 幼子にもどる
鳥取 小田みく
大人になり全てを見返してやろうと思ったなれの果ての今日
仙台 狩野和紀
家の中はTVついてるままだし部屋のなかは散らかっているしもう耐え切れない
岡谷 小口昌太
夜が明けて鶏が啼くまでにわたくしをお前は三たび否むであろう
青森 木村美映
湯の中に千個の柚子を投げ入れて今年の凶を洗い流さん
神戸 粟島遥
雨の日は冬のキリン恋し雨粒舌先葉っぱ喰むキリンは喰む
大阪 花菜菜菜
気がつけば闇一点を見据えおり身のゆく末思う真夜中
京都 後藤多加子
富士から富士川沿いを富士宮へ こころ整う身延線の旅
神奈川 別府直之
薄紅の雪煙に包まれて常念の夜明け 春はまだ遠く
松本 金井宏素
子どもと訪れるアメ横へ 幼いころ祖父母に連れられてきたこと思い出す
流山 佐倉玲奈
ぺこぺこしたように見えてもいい 笑われたっていい
さいたま 赤坂友
その目はなにを写しているのでしょう 六等星を住まわせている
所沢 須藤ゆかり
玄関の靴が暴れている赤い靴碧い靴いっぱい花が咲いた
下諏訪 光本恵子
素足(未来山脈2022年11月号より抜粋)
- 2022年10月31日
- 会員の作品
まっしぐらにわが家を目指せ赤いバイク君の手紙はドア開けて待つ
一関 貝沼正子
ゴルバチョフ エリザベスと訃報が続く 二十世紀が一段と遠くなる
大阪 加藤邦昭
月光に誘惑されて夜半のベランダ大きく息を吐く 私は狼
岡谷 三枝弓子
乾し柿吊るす中之条駅の風物詩特急草津が御辞儀していく
群馬 剣持政幸
幸せの青い鳥が突然に「孫が抱けますよ」と吉報を携えて
北九州 大内美智子
歴史ある二チームによる対抗戦 年に一度の晴れ舞台に立つ
神奈川 別府直之
紅い口紅がほほえみ華やぐ歌会 カフェテラスの秘め事を聴く
富田林 木村安夜子
ノリウツギの白い花ぶさ八方に意思疎通はかれぬまま秋に向かう
岡谷 柴宮みさ子
畑にふき渡る風とででっぽうの声 夫とじゃがいもを掘る
岡谷 片倉嘉子
指の節から抜けなくなった指輪 草取りして節々腫れる
岡谷 横内静子
つるつるり伸びに伸びた百日紅 主のいちいをはるかに超えて
岡谷 三澤隆子
事故の後苦しくて生きることに疑問さえ感じたが
さいたま 赤坂友
学生時代はほぼ百パーセント自炊 今日は何作ろうかな 考えるのが楽しみ
山梨 岩下善啓
父は雨母は太陽天と地に生かされて生きているのか
兵庫 明石の人
なるようにしかならないなんてとても悲しい「な」のりフレイン
仙台 狩野和紀
開閉の渋いアパートの玄関 九年ぶりの豪雪災害
青森 木村美映
今の自分は何かの者で泳いでいる 昔の俺は空を泳いでいた
岡谷 小口昌太
降りそうで降らない出ようか出まいか 深く悩む
原 太田則子
孫の検査結果は陽性と何時果てるのか しぶといコロナ
原 桜井貴美代
ふと窓の外を眺める 暗い森の向こうにまぶしいほどの緑の光
原 森樹ひかる
「あっ」ぬれた木道で向こう脛を強打する 声も出ない一分間
原 泉ののか
すやすやと雪は積もって段々に動かなくなる地球おやすみ
北海道 吉田匡希
ブダペストの「漁夫の砦」のレストラン テラス席からドナウを見下ろす
下諏訪 中西まさこ
功無き我も尊しと語る聖書のみことばに生き行く勇気促され
四條畷 高木邑子
秋霖の中に利休鼠の常念岳 今朝もどっしりとかまえている
松本 金井宏素
試験終え迎える夏の自由期間 今年の夏は何をしようか
東京 下沢統馬
からまわるあやまる言葉まねるときまひるの月にからまるリボン
東京 金澤和剛
湖につづく橋の上から川のぞく魚みえずさらさら水ひかるさらさら
下諏訪 光本恵子
太陽はいま(未来山脈2022年10月号より抜粋)
- 2022年10月1日
- 会員の作品
あなたのかかげる左手に羽が生えたように駆け寄る曲調はワルツ
京都 毛利さち子
「鳥屋」と言えば「鶏か」雑ぜ返す雅子さん 私も抜け毛一本摘まみつつ
諏訪 河西巳恵子
訳がわからなくなったと妻 これはまたしてもと血の引く思い
奈良 木下忠彦
湖面に跳ねる魚の波紋湖底に眠る古代の暮らし 朝の光が広がる
岡谷 三枝弓子
死の花に埋もれて逝った人の白骨摘む惜別
東京 木下海龍
「背番号3」を忘れぬものたちがアルウィンの空を見上げる八月
下諏訪 笠原真由美
宿場町歴史ウォーク猛暑でガイドさんの話より皆が日陰を探す
米子 安田和子
俺は書く投稿文の職業欄 農林業と名乗る八十路だ
小浜 川嶋和雄
ウクライナへの支援コンサート 弾き語りはカテリーナさん
岡谷 征矢雅子
子どもたちの緊張する顔一人一人バスに乗って場所確認
牛久 南村かおり
両の手をパチンと叩きさようならを目で合図する爽やかなひと
横浜 上平正一
天竜の流れ超えてカッコーの声 さるすべりの紅色ちらほらと
岡谷 三澤隆子
今日は七月十六日(なないろ) 虹の日と聞く曇り空なれども夢見る一日
岡谷 柴宮みさ子
凪いだ諏訪湖とふたつの雲がぽっかりトライアスロン大会が始まる
岡谷 片倉嘉子
フォッサマグナミュージアムには大きな翡翠がどっかりゴロゴロ
岡谷 横内静子
大きな絵を描いてみたい 水のなかで微笑む大カバと小カバ
神奈川 別府直之
それぞれソッポを向くあんなこと 骨皮スジコの思考回路はペチャンコ
千曲 中村征子
時の流れは早いもの雨を待って秋野菜の大根と白菜を撒く
岡谷 花岡カヲル
楽しみにしていた弓道の大会「出られなくなった」息子からのLINE
諏訪 大野良恵
死に絶えた砂礫の庭は灼け甲州の強い風で砂塵が舞いあがる
甲府 岩下善啓
暑い 今年も厳しい日々を送る 青空も白い雲もうらめしい
東京 上村茗
あの友この友 同級生の訃報が まぶたとじれば思い出あふれる
坂城 宮原志津子
痛いようー 夜中ふっと聞こえる黒豆畑から 鹿にかじられ
福知山 東山えい子
四つの弁当に朝ドラも詰めこんで出勤し今 再放送たのしむ
米子 大塚典子
令和四年八月十五日第七十七回終戦記念日 奇しくも小生の出生月日
大阪 與島利彦
いのち(未来山脈2022年9月号より抜粋)
- 2022年8月31日
- 会員の作品
エアコンの「おまかせ」機能の不快 私の体感温度を知らないで
松山 三好春冥
丘の庭にバラは咲満ち鳥がくる 憂うことなき家にも見えて
下諏訪 笠原真由美
駄々こねて咲く向日葵が プランターの中でワイワイ楽しい
富田林 木村安夜子
定年の挨拶状とともに元気になれと黒にんにくをくれる後輩
奈良 木下忠彦
娘に誘われ日曜日の早朝 梅を求めてJAの夢マートへ行く
岡谷 花岡カヲル
三輪揃って首をそり上げ花開いたクジャクサボテン猛暑日の夜
鳥取 角田次代
仕事のストレスと倦怠感 そうだ今日家を出よう
諏訪 宮坂夏枝
峠のトンネルを抜けると白樺林広がる平原ここは私の癒しの場
箕輪 市川光男
“ああ野麦峠”政井みねの墓まいりに飛騨市河合町角川専勝寺へ赴く
岡谷 横内静子
アカシアの花房しだれる道端に仲良し道祖神ぬくもりの風
岡谷 三澤隆子
「最後まで耐えるもの救われるべし」嗚呼しかしマリウポリ陥落
岡谷 柴宮みさ子
ずいぶん前義母のベットの傍らで習ったユーキャンの俳画戻る
岡谷 金森綾子
名を知る術ない 高木に咲くピンクの花に目をひかれる
岡谷 片倉嘉子
吾が庭に鬼ユリ突然咲きおり種はどこから飛んで来たのだろう
静岡 鈴木那智
ひとりの昼 カップラーメンすすりながら計画をねる 日曜日続く
鳥取 小田みく
心通じる友と一緒に笑い花を愛でいる我頬をそっと撫でゆく桜風
大阪 高木邑子
入道雲よそこから見ると俺は点か雨が答か
埼玉 木村浩
突然の四十度の熱が出て震える 嫁さんに来てもらう
飯田 中田多勢子
最近知ったうちの近くのカフェ 個人経営の店がやっぱり一番
東京 下沢統馬
雨に濡れて映える紫陽花も猛暑続きで色あせしょんぼりと
東京 赤穂正広
服を着せて貰い家に帰る東京から来た娘の介護兼病人教育が始まる
大田原 鈴木和雄
夏本番 最寄りの公園散策 緑陰の蝉時雨 自然界の生命うたげ
大阪 與島利彦
思わぬ油撥ねでてのひらに出来た水膨れのコロンと丸い痛み
京都 毛利さち子
若い頃博打で散財我が祖父は よく働いて世を去った人
小浜 川嶋和雄
木食にバナナを添えて一日を歩み始める命は明るい
東京 木下海龍
乾ききった空き寺の死に絶えた庭 住宅街の中の砂礫の谷間
山梨 岩下善啓
畔に朴葉を立て桑の棚にお供え 菖蒲酒を呑み田の神と語る
木曽 古田鏡三
素足(未来山脈2022年8月号より抜粋)
- 2022年8月1日
- 会員の作品
連休できた息子が電話パソコン 電気関係の修理完了 当分安全
大田原 鈴木和雄
前庭にライラック淡い紫の花 いとおしく雨に濡れて咲く
岡谷 花岡カヲル
裏側の美しさにも目を見張る 磨き抜かれた母の刺繍
諏訪 大野良恵
虚空蔵山のぼりて観れば濃紺の伊豆半島は初夏の陽に霞む
静岡 鈴木那智
補助金を頼りに飲食店 汗だくの週末はうれしいひめい
鳥取 小田みく
日差しなんか恐くないでも流行なんで俺も日傘
埼玉 木村浩
あっちの水もこっちの水も甘くも辛くもなし減塩対策
仙台 狩野和紀
トンネルが出来て近くなったフラワーパーク 一時間弱で到着だ
牛久 南村かおり
島国日本 最高峰「富士山」標高約三千八百米 発登山は三十歳代
大阪 與島利彦
幸せは食べて寝ること女抱く男女相悦の今夢の中
兵庫 明石の人
しばらくは豆餅 おはぎ 苺ジャム作りに夢中で時が過ぎてゆく
岡谷 金森綾子
入学記念のラベンダーを持ち帰る児は息をはずませ頬を染める
岡谷 片倉嘉子
諏訪の海がこんなにも凪いでいる 桜花見上げる赤砂崎
岡谷 横内静子
枯庭に春を呼び込む春黄金花(サンシュユ) 始まる花リレーに心ゆるむ
岡谷 三澤隆子
彼岸より十九日ラナンキュラスの紅い花びらすべてを手の平に
岡谷 柴宮みさ子
少しずつ戻り始めた日常 夏休みはどこへ行こうか
流山 佐倉玲奈
「百超えたらテレビが来るよ」と言うと母笑う
神戸 粟島遥
施設に戻る直前に「ありがとよ…忘れない」という父の奥底
諏訪 藤森あゆ美
今日は子供の誕生日 やせ衰えた姿見せたくない
京都 岸本和子
仙覚の深みの中にユーモラス君はどう読むマル(〇)・サンカク(△)・シカク(□)
諏訪 伊藤泰夫
交通事故以来身体が自由に動かない 這いずりながら仕事をする
さいたま 赤坂友
玉ネギの出荷が始まり実家の手伝いに大中かわいらしい玉太り
米子 稲田寿子
生きたいと死にたくないは近そうで遠いと思う 気力がたりない
北海道 吉田匡希
たかだか知れている生き方を生きて透き通る青い空を見る
札幌 西沢賢造
虹の一番内側の色の花菖蒲緑風の中に咲く 明方のマジックアワー
松本 金井宏素
さわやかな塩嶺の丘飛び交う鳥のその名は知らず 木陰に寝転ぶ
下諏訪 光本恵子
太陽はいま(未来山脈2022年7月号より抜粋)
- 2022年7月1日
- 会員の作品
春の嵐に門灯が点滅する 買い物メモの野暮用ひとつ増えて
松山 三好春冥
雨粒てとてとてとてと降って出たばかりの山菜の芽を潤している
京都 毛利さち子
わが生家 店先から蔵へトロッコ走る 和林檎の大木の下きっと脱輪
諏訪 河西巳恵子
痛みなく済みしワクチン疑えば夜にきっちり熱上げてくる
一関 貝沼正子
小学校では日華事変中学は大東亜戦争大学一年で終戦戦争の青春だ
大田原 鈴木和雄
五月の空に薄目を開ける木々 指さす向こうに“あべのハルカス”
富田林 木村安夜子
お久しぶりね 笑顔の再会二年四ヶ月ぶり息子家族がやってきた
坂城 宮原志津子
日々の暮らしは変わらず同じリズムで始まる妻と二人暮らしの朝
藤井寺 近山紘
八十歳 おめでとうはいらないと皆に言うが やはりめでたいのか
東京 上村茗
この凹みは外堀のなごりあそこの丘には二重櫓跡偲んで歩く楽しさ
箕輪 市川光男
小中高癌教育をとり入れる研修重ね命と向き合う
諏訪 伊藤泰夫
枕元の明かりで今夜も味わう極上ストレッチヨガの世界
諏訪 大野良恵
街路樹花水木赤いドレスの踊り子が天から舞いおりて咲く
飯田 中田多勢子
母校の校庭を見る八十路だよ さくら咲きます俺満開の中へ
小浜 川嶋和雄
地球一回りの食品売場 戦いなんてしてられない
千曲 中村征子
微力ながら復興に携わって七年体力に限界を感じ職を辞することに
東京 赤穂正広
やまと尼寺精進日記に出合ったのは二〇一七年秋 以来大ファンに
福山 杉原真理子
あなたの生まれた日の朝は窓にやわらかい小春日の光り
岡谷 征矢雅子
どんな寒い国から来るんだ水鳥たちここも一人じゃ寒い
埼玉 木村浩
諏訪に移り住んで三年 すっかり諏訪人になりきっている
諏訪 増田ときえ
羽毛布団だからといって軽くはないのだ私には健常の言葉喉奥に溜まる
大阪 高木邑子
長尾川枯川なるが梅雨なれば水の溢れて蘇り来る
静岡 鈴木那智
入院で伸ばしてしまった発行を悔いることなく重ねる推敲
青森 木村美映
ほてりたる互身を永遠に抱きたり乳がんの身を忘れて一夜
さいたま 清水哲
胸が少し軽くなった 肺の斬新な血止めの手術で
奈良 木下忠彦
今年の花は美しい白が愛おしい黙ってゆれて呼んでいる
木曽 古田鏡三
いのち(未来山脈2022年6月号より抜粋)
- 2022年6月1日
- 会員の作品
四月一日今日から十八歳は大人だよ 呼んでみる 孫住む町花曇り
愛知 川瀬すみ子
知らぬ間に蜘蛛の巣なんてできるもの冷蔵庫の裏わが心にも
一関 貝沼正子
ステイホームで久しぶりに会った友 元気な姿に元気をもらう
米子 角田次代
独裁者に一切を委ねきるロシアの民には責任はないのか
奈良 木下忠彦
森の木々春の日差しにあくびして百年の時間何もなかったように
富田林 木村安夜子
突然の眩に座りこむ ふかふか鋤きたての畑に
福知山 東山えい子
結露する窓をなぞりつつ通話するこのシチュエーションで恋人ではない
下諏訪 笠原真由美
傘寿祝 紫ずきんちゃんちゃんこ写真にうつり笑ってるわらってる
坂城 宮原志津子
三月十六日の福島県沖の地震3・11を彷彿させる程の物凄い揺れ
東京 赤穂正広
友がミモザの花が咲いたと大きな枝を沢山持ってきてくれた
米子 安田和子
届かない 何度も跳ねて諦めた女狐は言う「どうせ酸っぱいブドウよ」
下諏訪 中西まさこ
冬に咲く水仙風に煽られて 越前海岸大雪続く
小浜 川嶋和雄
暇な日がつづき長い夜が始まる 毎月日曜日はつらい
鳥取 小田みく
古い花びらが恥じらいながら夜更けの運河にながされてゆく
横浜 上平正一
新築の社房をも手玉に取る震度6強の思惑の果てしなさ三月十六日
仙台 狩野和紀
ゆっくりおうち時間を堪能 外の仕事はへらせへらせ
諏訪 宮坂夏枝
良き夫 良き父だったと言われ 報われた思い 又涙が出る
東京 上村茗
夢の数数え思い出せなくなった晴天あの日の扉に手を伸ばせ
岡谷 今井菜々美
予防接種 痩せた肩 衿ぐりから出せば「ま 可愛い」と看護師さん
諏訪 河西巳恵子
真ん中が深紅色の赤芽柳ぽあぽあ円らな瞳の幼な児弾んでる
岡谷 柴宮みさ子
くすむ花びら除けば鮮やかな代替わり 咲き誇る深紅のシクラメン
岡谷 金森綾子
折り目は破れ角は擦り切れ黄ばんでも大切にする全音の譜面
岡谷 片倉嘉子
凍土からスノードロップの芽 春一番を私に告げる
岡谷 横内静子
冬越し野菜は実家の丹精 筑前煮に今日人参の色ひときわ引き立つ
岡谷 三澤隆子
いよいよ始まる新生活 新一年生の息子と初出勤の私
流山 佐倉玲奈
山を降りた人降りなかった人の差は五分 運命は五分でも変わる
京都 毛利さち子